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高子(たかいこ)の想い
Ⅱ
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立花先生のお話を要略するとこういう事です。
現在、南青山の根津美術館で「特別展 国宝 燕子花図屏風 歌をまとう絵の系譜」と言う企画展が開催されており、この特別展に火曜の休館日を使って、美術館が学生への無料招待を企画し、うちの大学にもその話が来たそうなのです。
「この特別展、伊勢物語にまつわる屏風絵と和歌の展示がされているそうなんですよ。確か、井原さんは伊勢物語を卒論のテーマにしたいって、この前言ってましたよね?」
「あっ、はい。まだ迷ってはいますが……」井原さんにしてはちょっと歯切れが悪い返事でした。
「じゃあ、行って損はないですよね。判断材料は多いほどいいですから」そう言ってから、嬉しそうにわたしの方を見ました。
わたしはスケジュール表を見て来週の火曜前後の予定を確認します。
「先生、午前中講義が入っていますので。午後からなら可能です」
「朝からはダメですか……」スマホで何かを調べていたその手を止めて、先生は物欲しげにわたしを見ました。
「午後現地集合で、行きがけにどこかでお食事を済ませて行きましょうか?」
「そうだね、その手があったね」わたしの多少譲歩した提案に、嬉々として再び何かの検索を始めた先生でした。
有馬さんは特別展のチラシを見て、さっそくゼミの他のメンバーに連絡を入れています。その横で井原さんは一つ大きなため息をついたのでした。その様子に気が付いてはいたのですが、わたしも事務に提出するフィールドワークの申請にあたふたしてしまい。その日はそのまま別れてしまいました。
翌日、有馬さんが一人でいたので。わたしは昨日気になっていた井原さんのことを尋ねてみました。
「麗香は最近彼氏と別れたんですよ。今は何も気にしないであげてくださいね。友達としてわたしが傍にいますから大丈夫です」そう言って、微笑んだ有馬さんがいつもより何割増しにしっかりした娘に見えたのは気のせいだったのでしょうか。
今度のフィールドワークも一緒に行くというのでわたしはとりあえず安心したのでした。
現在、南青山の根津美術館で「特別展 国宝 燕子花図屏風 歌をまとう絵の系譜」と言う企画展が開催されており、この特別展に火曜の休館日を使って、美術館が学生への無料招待を企画し、うちの大学にもその話が来たそうなのです。
「この特別展、伊勢物語にまつわる屏風絵と和歌の展示がされているそうなんですよ。確か、井原さんは伊勢物語を卒論のテーマにしたいって、この前言ってましたよね?」
「あっ、はい。まだ迷ってはいますが……」井原さんにしてはちょっと歯切れが悪い返事でした。
「じゃあ、行って損はないですよね。判断材料は多いほどいいですから」そう言ってから、嬉しそうにわたしの方を見ました。
わたしはスケジュール表を見て来週の火曜前後の予定を確認します。
「先生、午前中講義が入っていますので。午後からなら可能です」
「朝からはダメですか……」スマホで何かを調べていたその手を止めて、先生は物欲しげにわたしを見ました。
「午後現地集合で、行きがけにどこかでお食事を済ませて行きましょうか?」
「そうだね、その手があったね」わたしの多少譲歩した提案に、嬉々として再び何かの検索を始めた先生でした。
有馬さんは特別展のチラシを見て、さっそくゼミの他のメンバーに連絡を入れています。その横で井原さんは一つ大きなため息をついたのでした。その様子に気が付いてはいたのですが、わたしも事務に提出するフィールドワークの申請にあたふたしてしまい。その日はそのまま別れてしまいました。
翌日、有馬さんが一人でいたので。わたしは昨日気になっていた井原さんのことを尋ねてみました。
「麗香は最近彼氏と別れたんですよ。今は何も気にしないであげてくださいね。友達としてわたしが傍にいますから大丈夫です」そう言って、微笑んだ有馬さんがいつもより何割増しにしっかりした娘に見えたのは気のせいだったのでしょうか。
今度のフィールドワークも一緒に行くというのでわたしはとりあえず安心したのでした。
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