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最終章 虹の橋とその番人

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「こんな機会を与えてもらって、本当にお前には感謝してもしつくせないな」
 部屋から出た上田が、小雪に向かって改めて礼を言う。
「加賀課長もどうもありがとうございました。これでもう、思い残すこともありません」
「こっちこそ、感謝する。今回のお前の功績は大きいぞ」
 そう言って、加賀は上田の肩を叩いた。
 上田の事を気にかけていた小雪は「アン・ノウン」のクロウに頼んで彼を宝田の会社に潜入させていたのだ。

「加賀課長、大変です」
 外に出た加賀たちに赤羽が慌てて駆け寄ってくる。
「どうした。何かあったか? 」
 赤羽の張り詰めた表情を見て、加賀も眉間にシワを寄せた。
「サイバー攻撃です。それも『虹の橋ビフロスト』と『ビット・キャッスル』の両方にです!」
「何だって!」
「そ、それで被害は?」
 小雪も驚いて話に加わる。
「サーバーはダウン、クラウドのデータも根こそぎ消去されている」
「……そんな……」
 赤羽の説明に全員が言葉を失った。

 宝田からの資金の流れは「ビット・キャッスル」まで、その後の献金先までのルートが完全に断ち切られてしまったのだ。
「宝田もってことだな」
 憮然とした面持ちで加賀が呟く。
「小雪、もっと悪い奴らはまだまだいるってことだ……」

「お前ならどうする?」
 以前にも言ったようなセリフを加賀は再び小雪に投げかけた。

「……悪いことをしても罪にならないなんて、おかしいと思います。わたしはそんな世の中であって欲しくはありません」
「そうだな、そのために警察があり、わたしたちが居るんだ! 小雪、組対二課(うち)に来い」
「……それと、これとは話が違います。断固、拒否します!」
「ちっ、だな。赤羽! お前よくこいつをな」
 加賀が明るく冗談を混ぜる。
「加賀さん、がずれてますから」
「そうですよ。それに、わたしまだはっきりお返事をしてませんし……」
「え? OKじゃあなかったの? 俺は当然承諾もらえたと思っていたのに……」
「いや、その……」
 赤羽は慌て、小雪もモジモジと言いよどむ。

「お前ら、二人で歩いて帰れ」
 そう言って加賀は迎えの車に乗り込んで、さっさと行ってしまった。

 残された二人には、ビルの谷間から明るい日差しが差し込んでいた。

  第一部 虹の橋とその番人 完結
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