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最終章 虹の橋とその番人

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 加賀課長が組対二課の会議スペースに見知らぬ人物を連れて入ってきた。
「どうだお前たち、名案でも浮かんだか?」
 軽口を叩きながら席に座る。お手上げのポーズで首を横に振った赤羽を見ながら、隣りに座った男を紹介する。
「国税局査察部の風間だ。わたしの大学時代の同期だ!」
 そう言って紹介されたのは、四十過ぎの色白で髪を七三にきっちり分けたスーツの男だ。
「風間だ。加賀とは腐れ縁でね。お互い相談に乗っている。今回の件も、うちが出来ることはやるつもりだから、よろしく頼む」
 いわゆる「」と呼ばれる人であった。

 話し合いは、加賀と風間が中心となり、虹の橋「ビフロスト」にとりあえず任意調査を入れることで落ち着いた。

「初めから強制調査は出来ないんですか?」
 小雪は疑問に思ったので風間に聞いてみる。
「そうだね出来ないことはないが、確実に証拠が出る時じゃあないと、こっちの赤っ恥になってしまうからな。強制調査は最後の最後だ」
「最終手段ですか……」
「まあ、そんなところだ」

 警察でも令状とっても何も出ないと面目丸潰れなんてことになるが、どこも似たようなものらしい。
「とりあえずマルサに動いてもらい。任意調査から刑事告発を目指す」
 加賀がそう話をまとめた。小雪も赤羽も口を挟まず頷く。まずは、一手、向こうはどう動くのか。
 その前にこちらも準備出来ることはしないと……。小雪は赤羽を誘って外に出る。まだ強い九月の日差しから逃げるように、二人は日陰のベンチに座った。
「どうしたの? あの部屋では言えないこと」
「……うん。ちょっと、相談」
 小雪の言葉の歯切れが悪い。心配して赤羽は小雪の顔を覗き込む。
「あんまり、良い話じゃあなさそうだね」
「……そうね、わたし的にはやりたくないんだけど……」
「任せろ!」
 赤羽はにこやかに言った。
「まだ、何も言ってないけど?」
「それでもだ。俺に任せろ!」
「まったく……」
 赤羽の対応に小雪は笑った。全面的な信頼、そんな彼にわたしも頼らせてもらう。

 小雪はある依頼をする。とりあえず一手。この手がどう作用するか、この時の小雪にも読めてはいなかった。
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