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第八章 女帝とアイスコーヒー

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 急いで部屋を飛び出した赤羽だったが、交通総務課の前で足が止まってしまった。前回の失敗は完全な自分の勇み足、小雪が自分の隠し事の件で悩んでいると分かり、すぐにでも教えたかった……彼女の不安を少しでも早くぬぐいいとりたかった。
 彼女の心の準備を待てず、焦って急いでしまった結果の拒絶……。
「……何て、言えば良いのか……」
 交通総務課の扉がやけに遠く感じられた。とそんな時、

「赤羽さん、何やってるんです。こんな所で」
 後ろから長身の男が声をかけてくる。陣内だった。
「俺もここに用事なんです。行きましょうか」
 そう言って、否応なしに陣内は赤羽を連れて入っていった。
「中山。ほら、赤羽さんが来たぞ!」
 何にも知らない陣内は自然体で小雪に赤羽の訪問を告げる。固まる小雪と赤羽、良くやったと言うようにポーズをとった瞳であった。

 ☆ ☆ ☆
 マスターの留守になった、喫茶店のカウンターに二人は並んで座っていた。どうやら気を利かせたマスターが席を外してくれたようだ。
「中山、この前は本当に済まなかった。俺は急ぎ過ぎて、お前の事を気にしてやれなかった」
 腹を決めて赤羽は話しだす。
「いいえ、わたしこそ赤羽さんの気持ちをすぐに受け入れられなくて……すいませんでした」
 お互いに謝る。そして、少し楽になった気持ちでぎこちないが笑顔になれた。
「確かに、わたしは赤羽さんの隠し事が何なのか、知りたいと思っていました。でも、もし知ってしまったら、今までどおりお付き合いが出来なくなることも考えて……怖かったんです。今の関係が壊れるのが……それだけわたしあなたのことが……」
 とつとつと話す小雪の言葉を赤羽は途中で遮るように強い口調で言った。
「それでも、キミに俺は知って欲しかった」
「……」
「これからでも良いから。来てくれないか?」

「分かりました」

 小雪も強くうなずいた。
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