54 / 71
第七章 後悔と宿題
Ⅴ
しおりを挟む
「中山、山内から聞いているぞ。うじうじ悩んでいるんだって?」
帰り際、一人になったところを野田に呼び止められた。
「瞳から聞きましたか……お恥ずかしいです。自分の事となるとどうしても臆病になってしまって……」
父よりも年上の人なので素直に醜態が晒せる気がする。
「俺の六十年の人生経験から言えることはな、みんな同じじゃあないってことだな。人それぞれ即決する奴もいるし、熟考が必要な奴だっている。自分の納得のいくまで考えて決断するんだな」
微笑ましい悩みだと野田の顔には書いてあるようだった。
「あと、勘違いするなよ。決断の早い奴と慎重な奴、こう言う二人の方が上手くいくんだからな。まあ、これは恋愛じゃあなくて、デカのコンビのことだけどな!」
そう言い残して野田は休憩室を後にしていった。
「みんなお節介が多いんだから……」
しみじみと小雪はひとり呟いた。
☆ ☆ ☆
「野田さんは、これでスッキリと退職出来るって言ってたよ」
翌日、休憩室で会った瞳は小雪と佳子に野田からの感謝のメールの内容を嬉しそうに伝えた。
「良かったね。最後の宿題をやりあげたって感じかな?」
佳子も嬉しそうだった。
「宿題か……佳子は夏休みの宿題はどうしてた?」瞳は急に佳子に話を振る。
「何で、わたしに聞かないの?」
小雪は不満げに瞳に聞いた。
「だって、どうせ初めのうちから計画的にやったんでしょう」
瞳はつまらなそうに答える。
「まあ、確かにそうだけど……」
「わたしは、最終日きつかったなー。貫徹なんてあったもの」
瞳はあの頃を懐かしんだ。
「で、佳子は?」
二人に見つめられた佳子は思い出しながら楽しそうに答えた。
「ん、前の日とかに、友達の家に泊まり込んで宿題を写させてもらったかな? やっぱり持つべきものは友達だね!」
実に迷惑な友達であった。
帰り際、一人になったところを野田に呼び止められた。
「瞳から聞きましたか……お恥ずかしいです。自分の事となるとどうしても臆病になってしまって……」
父よりも年上の人なので素直に醜態が晒せる気がする。
「俺の六十年の人生経験から言えることはな、みんな同じじゃあないってことだな。人それぞれ即決する奴もいるし、熟考が必要な奴だっている。自分の納得のいくまで考えて決断するんだな」
微笑ましい悩みだと野田の顔には書いてあるようだった。
「あと、勘違いするなよ。決断の早い奴と慎重な奴、こう言う二人の方が上手くいくんだからな。まあ、これは恋愛じゃあなくて、デカのコンビのことだけどな!」
そう言い残して野田は休憩室を後にしていった。
「みんなお節介が多いんだから……」
しみじみと小雪はひとり呟いた。
☆ ☆ ☆
「野田さんは、これでスッキリと退職出来るって言ってたよ」
翌日、休憩室で会った瞳は小雪と佳子に野田からの感謝のメールの内容を嬉しそうに伝えた。
「良かったね。最後の宿題をやりあげたって感じかな?」
佳子も嬉しそうだった。
「宿題か……佳子は夏休みの宿題はどうしてた?」瞳は急に佳子に話を振る。
「何で、わたしに聞かないの?」
小雪は不満げに瞳に聞いた。
「だって、どうせ初めのうちから計画的にやったんでしょう」
瞳はつまらなそうに答える。
「まあ、確かにそうだけど……」
「わたしは、最終日きつかったなー。貫徹なんてあったもの」
瞳はあの頃を懐かしんだ。
「で、佳子は?」
二人に見つめられた佳子は思い出しながら楽しそうに答えた。
「ん、前の日とかに、友達の家に泊まり込んで宿題を写させてもらったかな? やっぱり持つべきものは友達だね!」
実に迷惑な友達であった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
友よ、お前は何故死んだのか?
河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」
幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。
だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。
それは洋壱の死の報せであった。
朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。
悲しみの最中、朝倉から提案をされる。
──それは、捜査協力の要請。
ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。
──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
深淵の迷宮
葉羽
ミステリー
東京の豪邸に住む高校2年生の神藤葉羽は、天才的な頭脳を持ちながらも、推理小説の世界に没頭する日々を送っていた。彼の心の中には、幼馴染であり、恋愛漫画の大ファンである望月彩由美への淡い想いが秘められている。しかし、ある日、葉羽は謎のメッセージを受け取る。メッセージには、彼が憧れる推理小説のような事件が待ち受けていることが示唆されていた。
葉羽と彩由美は、廃墟と化した名家を訪れることに決めるが、そこには人間の心理を巧みに操る恐怖が潜んでいた。次々と襲いかかる心理的トラップ、そして、二人の間に生まれる不穏な空気。果たして彼らは真実に辿り着くことができるのか?葉羽は、自らの推理力を駆使しながら、恐怖の迷宮から脱出することを試みる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる