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第五章 浜辺の小瓶と七階建てのビル
Ⅱ
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このあと小雪は複数の場所に連絡を入れ、交通安全講習グループと別行動を取ることになる。
海岸で少し待っているとシルバーの地味な車が小雪達三人を迎えに来た。
窓をおろし顔を出したのは、以前、麻薬撲滅キャンペーンのイベントで顔見知りになった、麻薬取締官である城島であった。
「すいません。お呼び出ししてしまって」
小雪が丁寧にお辞儀をして言う。
「良いって。仕事なんだから。それより、若い女性のご指名とあっちゃあね。俺はどこでも飛んで行くよ!」
軽口を叩きながら城島は三人を乗せ、すぐにブツを確認する。
「確かに……高校生なんだね、それを拾って行ったのは?」
「はい、そうですこの制服だと近くの高校でしょうかね……」
そう言って佳子が写した画像を見せる。
「とりあえず、その高校に行ってみよう」
車は近くの高校へ向かい走りだした。
「これがそうなの?」
と言って佳子は、車内で瞳の抱えた袋の中の小瓶を興味深く覗き込む。
「一般的に大麻と言えば、葉っぱの方を想像するだろうけど。最近はこっち(バッズ)が主流なんだ」
城島はハンドルを握りながら説明する。
「でも、よく分かったね。キミは見たことあったんだっけ?」
城島は助手席の小雪に話しかけた。
「いいえ、現物ははじめてですけど、資料では見ていましたから、多分そうだろうなって思いました……」
小雪はスマホの検索画面を見せる。そこには瓶の中に入っているのと同じつぼみの写真が載っていた。
浜辺で高校生が拾っていたガラス瓶には大麻草のつぼみ(バッズ)が入っていたのだった。このつぼみには葉よりも多量の成分が含まれているもので。浜辺を探すとすぐに五個以上のガラス瓶が見つかった。
早速、小雪たちは画像を麻薬取締官で知り合いの城島に送って確認してもらい、麻薬捜査が始まったのであった。
☆ ☆ ☆
高校はこの日は試験休みで、部活動の生徒が少人数登校しているだけであった。城島と小雪は瞳たちを車で待たせて、二人で高校へと入っていった。
日直の先生を呼び出し、応接室で待つ。
「中山さん、僕は話には参加しない方が良いんだね」
「はい、相づち程度でお願いします。後は、わたしが話しますので」
「OK、キミの事は全面的に信用しているから、よろしく頼む。自己紹介で僕は名前を言うんだね」
「ええ、ちゃんとフルネームで名前を言ってくださいね」 小雪は意味ありげに微笑んだ。城島も頷く。
「まさか、こんな時に俺の名前が役に立つなんてね……」
そう言って城島は白い歯を見せた。
しばらくして、先生が一人の生徒を連れてやって来る。
「お待たせしました。彼がそうだと思います。新聞部の部長です」
先生の連れて来たのは、確かに海岸の写真の生徒だった。
無愛想に挨拶するその生徒は明らかに二人を警戒していた。まあ、婦警ともう一人が自分を指名して来たのだから、警戒するのは当たり前なのだろう。
「わたしは警視庁交通総務課の中山巡査」
「自分は城島ケイジ」
その生徒に対し二人は簡単に名乗った。
小雪は警戒しているであろう生徒に明るく話しかける。
「ごめんなさいね、驚かしちゃって。わたしたち交通安全イベントへ行く途中で、キミが浜辺で探し物をしているのをたまたま見ちゃってね。その後、探したらほら結構あったから持って来たんだけど……」
そう言って小雪は袋に入ったガラス瓶を見せた。
生徒は袋の中身を覗き込んでから小雪たちに聞いた。
「わざわざ届けてくれたんですか?」
「迷惑だったかしら?」
「いえ。わざわざありがとうございました」
生徒は警戒を解いて丁寧にお礼を言った。
海岸で少し待っているとシルバーの地味な車が小雪達三人を迎えに来た。
窓をおろし顔を出したのは、以前、麻薬撲滅キャンペーンのイベントで顔見知りになった、麻薬取締官である城島であった。
「すいません。お呼び出ししてしまって」
小雪が丁寧にお辞儀をして言う。
「良いって。仕事なんだから。それより、若い女性のご指名とあっちゃあね。俺はどこでも飛んで行くよ!」
軽口を叩きながら城島は三人を乗せ、すぐにブツを確認する。
「確かに……高校生なんだね、それを拾って行ったのは?」
「はい、そうですこの制服だと近くの高校でしょうかね……」
そう言って佳子が写した画像を見せる。
「とりあえず、その高校に行ってみよう」
車は近くの高校へ向かい走りだした。
「これがそうなの?」
と言って佳子は、車内で瞳の抱えた袋の中の小瓶を興味深く覗き込む。
「一般的に大麻と言えば、葉っぱの方を想像するだろうけど。最近はこっち(バッズ)が主流なんだ」
城島はハンドルを握りながら説明する。
「でも、よく分かったね。キミは見たことあったんだっけ?」
城島は助手席の小雪に話しかけた。
「いいえ、現物ははじめてですけど、資料では見ていましたから、多分そうだろうなって思いました……」
小雪はスマホの検索画面を見せる。そこには瓶の中に入っているのと同じつぼみの写真が載っていた。
浜辺で高校生が拾っていたガラス瓶には大麻草のつぼみ(バッズ)が入っていたのだった。このつぼみには葉よりも多量の成分が含まれているもので。浜辺を探すとすぐに五個以上のガラス瓶が見つかった。
早速、小雪たちは画像を麻薬取締官で知り合いの城島に送って確認してもらい、麻薬捜査が始まったのであった。
☆ ☆ ☆
高校はこの日は試験休みで、部活動の生徒が少人数登校しているだけであった。城島と小雪は瞳たちを車で待たせて、二人で高校へと入っていった。
日直の先生を呼び出し、応接室で待つ。
「中山さん、僕は話には参加しない方が良いんだね」
「はい、相づち程度でお願いします。後は、わたしが話しますので」
「OK、キミの事は全面的に信用しているから、よろしく頼む。自己紹介で僕は名前を言うんだね」
「ええ、ちゃんとフルネームで名前を言ってくださいね」 小雪は意味ありげに微笑んだ。城島も頷く。
「まさか、こんな時に俺の名前が役に立つなんてね……」
そう言って城島は白い歯を見せた。
しばらくして、先生が一人の生徒を連れてやって来る。
「お待たせしました。彼がそうだと思います。新聞部の部長です」
先生の連れて来たのは、確かに海岸の写真の生徒だった。
無愛想に挨拶するその生徒は明らかに二人を警戒していた。まあ、婦警ともう一人が自分を指名して来たのだから、警戒するのは当たり前なのだろう。
「わたしは警視庁交通総務課の中山巡査」
「自分は城島ケイジ」
その生徒に対し二人は簡単に名乗った。
小雪は警戒しているであろう生徒に明るく話しかける。
「ごめんなさいね、驚かしちゃって。わたしたち交通安全イベントへ行く途中で、キミが浜辺で探し物をしているのをたまたま見ちゃってね。その後、探したらほら結構あったから持って来たんだけど……」
そう言って小雪は袋に入ったガラス瓶を見せた。
生徒は袋の中身を覗き込んでから小雪たちに聞いた。
「わざわざ届けてくれたんですか?」
「迷惑だったかしら?」
「いえ。わざわざありがとうございました」
生徒は警戒を解いて丁寧にお礼を言った。
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