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第四章 雨上がりと水曜日

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 石川の証言の照らし合わせも終わり、三人は合流した。
「俺の方は問題なしだ。福田と佐伯、どちらの証言とも矛盾するモノは出て来なかった」
 どちらも嘘をついてはいないようだ。
「お前らの方は、何か進展はあったか?」
 石川の問い掛けに、代表して陣内が答える。
「まだ、仮説の段階ですが。もう一人の犯人は刺された被害者を見つけたが、被害者に恨みがあり助けなかった。むしろ、死んで欲しかったので、仕方なく、死なない被害者にとどめを刺したと、考えました」
 その推理に石川は思わず息を呑んだ。
「それを、どうやって証明する」
 石川のその言葉に腕組みをして唸った陣内であったが。となりの小雪が名案を思いつく。
「靴ですよ! 足で踏んづけたなら靴底に『あれ』の跡があるかもしれないよね」
 そう言って、陣内の腕を引っ張った。
「あれ? って?」
 小雪の問い掛けに首を傾けた陣内は再度聞き返す。
「ナイフのパーツだよ! 陣内くん見せてくれたよね。凶器のグリップに付いていて壊れちゃった……」
 小雪は名前が分からなくて言いよどむ。

か!」
 陣内はやっと小雪の説明で思い出した。
 凶器のグリップに付いているはずの「キーリング」キーホルダーなどを付けられる部分が破損して失くなっていたのだった。

「それがどうした? 見つければ良いのか」
 石川は分からず聞き返した。
「そうですが、それより犯人は凶器を足で踏みつけた可能性があります。至急、容疑者の靴底を検べて下さい」
 小雪はさらに付け加える。
「運が良ければそのリングも刺さったままかも……」

 ☆ ☆ ☆
 容疑者三人の昨夜の靴を確認するため、小雪たちは学校で警備員の長靴を、ついで、工務店に行き業者の作業靴をそれぞれ確認した。
 次は佐伯先生の番だった。佐伯先生の道案内で石川と陣内が車で続く。小雪はと言うと……。
「すいません、お邪魔します」
 そう言って、小雪は佐伯のパステルカラーの車の助手席に乗り込んだ。
「あの二人は車の中でも遠慮なしでタバコ吸うんですよ。もう、気持ち悪くなっちゃって」
「わたしは構いませんよ。少し狭いですけど……」
 佐伯は別に気にもせず、小雪を助手席に招いた。
「小型なんでしょうけど、背が高いぶん、広く感じますね」
「そうですか? 可愛さだけで選んじゃったんですけど」
「この色も良いですよね!」
「ええ、お気に入りです」

 そんな、何気ない会話をしているうちに佐伯のマンションに到着した。となりの駐車場に停めると佐伯に小雪が遠慮がちに頼んだ。
「運転しやすそうですね、ちょっと運転席座っても良いですか?」
「ええ、どうぞ」
 車好きの小雪の悪い癖が出てしまったようだ……。

「こら、中山。お前の車好きは有名だが。ここで、今しなくても良いだろうが!」
 後続の車から降りてきた石川はしょうがないと言うように苦笑いをした。
「すいません。すぐ止めさせますから」
「本当に好きなんですね……」
 佐伯も釣られて微笑んだ。

「石川さん。もうここまでで良いです!」
 急に真面目な声で小雪が運転席から出てきた。
「あったのか?」
「はい!」
 そう言って、小雪はハンカチに包んだモノを持ち上げて示した。

「『』です!」
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