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第三章 監視カメラとトカゲのしっぽ
Ⅵ
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「中山、今回も助かった。感謝する!」
そう言って、後日、捜査一課の後藤課長は差し入れを持って交通総務課の休憩室に顔を出した。
「実はな、あの日は俺と原田でお前も関わったあの柳田さんの事件の件で、宝田の「虹の橋」にガサ入れとまではいかないが、脅しをかけに行っていたんだ」
小雪の正面に座り、小雪の入れたコーヒーを手でいじりながら、後藤は真面目な顔で話しを続けた。
「どうでしたか? 宝田の反応は?」
小雪も後藤の話の先に興味を持って聞いた。
「ああ、結論から言えば……」
「はい、どうだったんですか?」
「してやられたよ。あいつ、宝田修平にな」
悔しそうに後藤はコーヒーを口にする。喉を潤してから再び話し出した。
「俺達が行くと、わざわざ玄関まで迎えに来てな、社長室に招き入れたんだ。そこでこう言ってきた。『すいませんでした。一部の医者の勝手な行動を私は監督出来ていなかった』っとな。監督責任はあったが、後は部下が勝手にやったことだとな!」
もうそれ以上言いたくないとばかり、後藤は口を真一文字に結んだ。
「トカゲのしっぽ切りですか……」
小雪も難しい顔をして呟いた。
「結局、担当医師を解雇。会社は保険診療の半年間の停止。自分は三ヶ月分の給料の自主返納だそうだ」
「解雇された医師は?」
「ダメだ! どうやら独立の資金が動いてるらしい。だんまりを決め込んでいる」
「取り付く島もないようですね……」
小雪にも後藤にかける言葉が見つからず、ただ、聞くことしか出来なかった。
「この件に関して、また進展があったら教える。お前も何か気付いた点があったら、報告してくれ。頼んだぞ」
「はい、了解しました」
小雪とそんな会話をしてから、後藤課長は差し入れを置いて戻って行った。
その後、お茶の時間に自由ケ丘の美味しいマドレーヌが出たのは小雪の唯一の成果であったのだろうか。
「これ、行列が出来るってお店のでしょ! さすが後藤課長。小雪! 次回も頑張ってね!」
マドレーヌにありついた瞳と佳子のいい加減な応援にガックリと肩を落とした小雪であった。
そう言って、後日、捜査一課の後藤課長は差し入れを持って交通総務課の休憩室に顔を出した。
「実はな、あの日は俺と原田でお前も関わったあの柳田さんの事件の件で、宝田の「虹の橋」にガサ入れとまではいかないが、脅しをかけに行っていたんだ」
小雪の正面に座り、小雪の入れたコーヒーを手でいじりながら、後藤は真面目な顔で話しを続けた。
「どうでしたか? 宝田の反応は?」
小雪も後藤の話の先に興味を持って聞いた。
「ああ、結論から言えば……」
「はい、どうだったんですか?」
「してやられたよ。あいつ、宝田修平にな」
悔しそうに後藤はコーヒーを口にする。喉を潤してから再び話し出した。
「俺達が行くと、わざわざ玄関まで迎えに来てな、社長室に招き入れたんだ。そこでこう言ってきた。『すいませんでした。一部の医者の勝手な行動を私は監督出来ていなかった』っとな。監督責任はあったが、後は部下が勝手にやったことだとな!」
もうそれ以上言いたくないとばかり、後藤は口を真一文字に結んだ。
「トカゲのしっぽ切りですか……」
小雪も難しい顔をして呟いた。
「結局、担当医師を解雇。会社は保険診療の半年間の停止。自分は三ヶ月分の給料の自主返納だそうだ」
「解雇された医師は?」
「ダメだ! どうやら独立の資金が動いてるらしい。だんまりを決め込んでいる」
「取り付く島もないようですね……」
小雪にも後藤にかける言葉が見つからず、ただ、聞くことしか出来なかった。
「この件に関して、また進展があったら教える。お前も何か気付いた点があったら、報告してくれ。頼んだぞ」
「はい、了解しました」
小雪とそんな会話をしてから、後藤課長は差し入れを置いて戻って行った。
その後、お茶の時間に自由ケ丘の美味しいマドレーヌが出たのは小雪の唯一の成果であったのだろうか。
「これ、行列が出来るってお店のでしょ! さすが後藤課長。小雪! 次回も頑張ってね!」
マドレーヌにありついた瞳と佳子のいい加減な応援にガックリと肩を落とした小雪であった。
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