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第三章 監視カメラとトカゲのしっぽ

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 まず最初に、小雪は五階のオフィスに案内される。ここで録画映像を見れるようだ。
 上の六階は応接室と社長室で、副社長以下他の社員は、この五階で仕事をしている。入口には傘立てとその中にゴルフのパターが無造作に差してあった。
 小雪たちに対して、副社長の安藤が対応に出て来る。
 小雪はその体格に圧倒された。(……でかい! 180センチはあるかな? ほっそりした陣内くんとは、背丈は同じぐらいだけど威圧感が半端ないね……)
 驚いた小雪に対して安藤はにこやかに太い声で自己紹介を始める。
「自分が副社長の安藤です。お待ちしていました。どうぞ、こちらに」
 そう言って、パーティションに区切られた場所に案内された。ここで監視カメラの映像のチェックが出来るようだ。
 さっそく、映像を見る体勢を作ってから、小雪は安藤に言った。
「とりあえず、過去5日間の録画映像を下さい」
「え!」5日間ですか……。
 驚いた安藤に小雪は重ねて言う。
「それでもダメなら、七日間に伸ばしますからよろしくお願いします」
 微笑む小雪に対し安藤の顔は引き攣っていた。

 ☆ ☆ ☆ 
「これじゃあ、確かに分かりませんね……」
 モニターを覗き込んだ小雪も納得せざるおえない。
 事件前日から監視カメラがどうしたことか下を向いてしまって、肝心の犯人の映像が映っていなかったのだ。
 容疑者の三名は、動機もあり、アリバイも無いが決定的な証拠が無い。ここで捜査が行き詰まってしまったようだった。

 小雪はさっそく録画時間を確認し、おとといカメラが下を向く前の映像をさかのぼって調べた。どうやらその日、カメラは棒の様な物で強制的に下に向かされたようだった。
「監視カメラの向きを変えたものの正体は分かっているんですか?」
 映像をチェックしながら小雪は石川に聞いた。
「ああ、それは分かっている。五階入口脇にあったゴルフのパターだ。鑑識に調べてもらったがカメラの塗料が付いてはいたが、指紋は拭き取られていたようだ」
 そう言って石川は悔しがった。証拠品はすでに鑑識の調査済みであった。

 その後、下を向く前の映像を小雪は注意深く調べていった。
「中山。それは犯行よりだいぶ前の映像だぜ。どこまで見るんだ?」石川が横から覗き込んで言った。
「容疑者の三人が出てくるまでですね。犯行現場には必ず下見に来ているはずです、怪しい動きがあるかも知れませんから……」
 そう言いながら小雪は一人ずつの顔を拡大して目線の動きなどを丁寧に観察していった。

 1時間ぐらいじっくり過去の録画映像を見てから、小雪は二人に気が付いたことを報告する。
「容疑者三名のうち、奥さんの裕子さんと副社長の安藤は全く監視カメラを見ていませんが、会計の池田はおとといの朝、確かにね」
「ここです!」小雪が指摘した瞬間、確かに目が監視カメラを確認していた。
「ただ、これだけでは証拠にはならないからな……」悔しそうに石川は呟く。
「大丈夫です! 犯行時間と同じ条件を作れれば犯人の絞り込みは可能です! それに証拠品のパターを調べれば……上手くいくかも知れないですよ」
「!」
「どうやって?」
 驚く二人に、小雪は微笑んだ。

教えてくれます」
  
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