上 下
72 / 79
舞台裏

72.絡まった糸〈第三者side〉

しおりを挟む
〈第三者side〉



 今まで学園内の誰もが静観していた問題が、水面下で動き始めた。

 グイドから仕入れた情報でメイシーとシンシアが手を打つ速さは尋常ではない。

 特にシンシアは侯爵家のコネを最大限に利用して、瞬く間にブリトニーの悪行を集めてきた。

 そこにメイシーがグイドからせしめてきたデニスの資料と付き合わせ、二人を黒だと断定。



「前から知り合いだったとか、気が合ったとか仰っても、やはりあの二人の距離感は頂けませんわ」

「それに、これ見ると……どう考えてもあの子がヤツをそそのかしてる」



 メイシーが鼻息荒く、デニスとブリトニーの出逢いとされる調査書をテーブルに叩きつけた。

 シンシアはメイシーを刺激しないようにそっと手に取り目を通す。

 これによれば、以前デニスがお忍びで街に出た時に初めて二人は顔を合わせたとされていて、ご丁寧にその時同行していた者の証言まで取ってあった。



「一緒にいたのはスミス伯爵の長男と、ジョンソン子爵の長男……ですか」

「学園ではヤツより先にそのどっちかと再会してるのよね? えーと、茶髪に栗色の目? どっちかしら?」

「どっちって……髪色はともかく、二人とも瞳はブルー系……ですわよ?」

「え?」



 二人はキョトンと顔を見合わせた。

 髪色は変える方法は沢山あるだろうが、瞳の色を変えられるなどとは聞いた事がない。



「と言う事は? デニスはワザと『運命の再会』を仕組まれた?」

「でも、なぜそんな事を……?」

「可能性? ……でしょうか? あの方が居なければ『自分が辺境伯に選ばれるかも?』という……」

「まさか……でも、あり得なくもないか……」



 しばし二人は考え込み、手がかりとなる人物が気になった。



「それなら……その人は誰かしら? 仕掛け人みずからっていうのは考え難いけど、繋がりを辿れば……」

「茶髪と栗色の瞳……ですか? 多過ぎて誰だか分かりませんんわね」

「やっぱりそうよねぇ。だってそんなありふれた色じゃ……だって当てはまっちゃうわ」



 二人は肩をすくめてため息をく。



「ですわね。それにしても……あんなに分かり易いハニートラップ。普通は引っかかりませんでしょう?」

「……そうね。あれじゃあ、例え今回はステファニーが許したとしても、絶対次もあるわよ」

「否定できませんわね……」

「そのたびに毎回大変な思いをするなんて許せない。ステファニーがかわいそう過ぎる!」

「他家のことに口を挟むのは、はしたない事と思いますが……あの方に辺境伯は重荷ではありませんの?」



 シンシアの沈痛な面持ちを前にメイシーが深く頷く。

 そして心配そうにしながらも、疑問を投げかけた。



「ステファニーはアイツの事、好きって感じでは無かったわよね? 本当のところはどうなのかしら?」

「以前、あの方の事は夫と言うより、弟というか……家族だと思っていると聞いたことがあります」
 
「それなら、これがハニートラップでも、真実の愛でも関係ないわね。私ステファニーにはもっと素敵な旦那様が良いって思っていたの。いつまでも長引かせるより、もうハッキリ教えても良いんじゃないかしら?」

「……そうですわねぇ。何か陰謀めいたものが感じられるのが心配ですけど、噂好きのカレン辺りから伝わるより良いかもしれませんわね」

「それなら私、グイドにその『陰謀?』それに何か思い当たる事がないか聞いておくわ。

「でしたら、それが分かってから……それからステファニーに伝えましょう」



 二人はまったく知らない。

 その陰謀は様々な人々が関わっているが、そのうちの半分以上が自分の知り合いだとは……。

 そしてその一端を担う者に、今から直接問い正そうとしているとは……。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です

渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。 愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。 そんな生活に耐えかねたマーガレットは… 結末は見方によって色々系だと思います。 なろうにも同じものを掲載しています。

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

言い訳は結構ですよ? 全て見ていましたから。

紗綺
恋愛
私の婚約者は別の女性を好いている。 学園内のこととはいえ、複数の男性を侍らす女性の取り巻きになるなんて名が泣いているわよ? 婚約は破棄します。これは両家でもう決まったことですから。 邪魔な婚約者をサクッと婚約破棄して、かねてから用意していた相手と婚約を結びます。 新しい婚約者は私にとって理想の相手。 私の邪魔をしないという点が素晴らしい。 でもべた惚れしてたとか聞いてないわ。 都合の良い相手でいいなんて……、おかしな人ね。 ◆本編 5話  ◆番外編 2話  番外編1話はちょっと暗めのお話です。 入学初日の婚約破棄~の原型はこんな感じでした。 もったいないのでこちらも投稿してしまいます。 また少し違う男装(?)令嬢を楽しんでもらえたら嬉しいです。

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。 彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。 皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。 だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。 何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。 どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。 絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。 聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──…… ※在り来りなご都合主義設定です ※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です ※つまりは行き当たりばったり ※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください 4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

クリスティーヌの華麗なる復讐[完]

風龍佳乃
恋愛
伯爵家に生まれたクリスティーヌは 代々ボーン家に現れる魔力が弱く その事が原因で次第に家族から相手に されなくなってしまった。 使用人達からも理不尽な扱いを受けるが 婚約者のビルウィルの笑顔に救われて 過ごしている。 ところが魔力のせいでビルウィルとの 婚約が白紙となってしまい、更には ビルウィルの新しい婚約者が 妹のティファニーだと知り 全てに失望するクリスティーヌだが 突然、強力な魔力を覚醒させた事で 虐げてきたボーン家の人々に復讐を誓う クリスティーヌの華麗なざまぁによって 見事な逆転人生を歩む事になるのだった

処理中です...