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舞台裏

61.進み行く道③〈ブラッドリーside〉

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〈ブラッドリーside〉



「え? なに? なんで? 騎士伯のほかに、何がるんだよ?」

「……お前が、メイシーの友だち紹介しろって言ったからだろ?」

「メイシー嬢の友だちって、ほとんど貴族の令嬢だぞ?」



 グイドと俺がこれだけ言っても、サミュエルは首をひねっている。

 こいつは俺たちが幼なじみで、いつも気安くつるんでいるからあんまり身分差を気にしていないのかもしれない。

 だがしかし、俺はともかくグイドは、レイス伯爵の長男──次期当主だ。

 本当ならこんなに親しくできるはずのない人物だが、たまたま剣術の師が俺の爺様じいさまだっただけだ。

 だからグイドの周囲の交友関係と、俺たちの交友関係は普通ダブらない。

 でも俺たちが一緒に居るから感覚がおかしくなってるんだろう。

 そんな訳で、感覚の狂ったサミュエルに理解してもらうべく、俺たちはもう少しだけ説明を付け足した。


「だから……。家政科に来てる貴族令嬢は、屋敷や使用人の管理なんかも学んで、花嫁修行みたいな事をやってるんだ。それが爵位も持家も金も無い──いや、金くらいはホップ子爵家お前の家で出してくれるかもだけど……」

「段々話がズレてる」



 俺の指摘にグイドがハッとする。



「要するに……簡単に言うとだな。貴族籍から一生抜ける気が無いご令嬢って生き物に、バカにされるって分かってて、俺がお前を紹介するとか、そんなのできない相談だって話だ」

「あと、性格の良いまともな令嬢は大抵売約済みだ。婚約者が居るのに、そういう意味でグイドが紹介したら問題になる」

「……なるほど」



 グイドのなかばヤケクソな解説に、サミュエルもやっと納得した。

 サミュエルは相変わらずヘラッと笑ってるし、グイドは頬を赤くして少し居心地悪そうだけど、俺はちょっと嬉しい。



 ようやく話が終わったと気を抜くと、グイドが今度は俺を見る。

 え?

 俺ですか?

 何それ、聞いてない……。



「それで、ブラッドリーはどうするつもりなんだ?」



 ヤバい。

 これは見逃してはもらえなさそうだ。



「ブラッドリーだって、最初の二年は手を抜けないだろ」



 確かに。

 父上は騎士伯だから、俺は自分で爵位をもらわないとこの学園を出て二年後に平民となる。

 この国の貴族の子弟──特に騎士を目指す者の中には一定数、この二年の間に平民として順応する者がいる。

 しかしほとんどの者は、何らかの形で頭角を現して騎士団内の役職に就くことを目標にする。

 役職って言っても『十人長』が一番下だから、そこはそれほど難しくないが……目指すならもう少し上が良いに決まってる。

 とにかく二年で役職に就けたものは、地道に手を抜かず仕える限り、騎士伯になる道を歩む資格を得たと思って良い。

 そしてここから、俺とサミュエルの違いがハッキリとしてくる。
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