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本編

52.窮鼠猫を噛めるのか!?〈ブリトニーside〉

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〈ブリトニーside〉



 ジリジリと近寄ってくる護衛に怯える私。



「ななな、何よ! それ以上近寄らないで!」



 護衛は困ったようにお父様を振り仰いだ。

 しかしお父様は動じずに威厳たっぷりで言い放つ。



「ブリトニーがゴールディー準男爵に嫁げば、君たちの給与も上げられるから。ほら、さっさと捕まえて早く馬車に乗せなさい」

「「ハイ!」」



 護衛は一転して覚悟を決めたらしい。

 さっきまでとは気合の入り方が違ってる。



「何それ!? お父様、ひひひ、卑怯よ!」

「何が卑怯なんだ? 有効な手立てはすべて使うべきだろう?」



 正気を疑う言動に、私は怒り心頭でわめき出す。



「だ、だって約束はどうしたのよ?」

「ん? 約束? 何だったかな?」

「と、とぼけないで! 学園に居るうちに自分で相手を探せば、その人と結婚しても良いって言ってたでしょう!?」

「あぁ、あれかぁー」



 普段の私から想像付かないほど怒り狂って叫んだからか、お父様も多少何か感じるところがあったようで考え込む。

 そして……。



「あの時はもう少し肉付きが良くないと、ゴールディー準男爵には勧められないと思ったんだが、最近のブリトニーを見るに、もう大丈夫そうだと思ってね」



 そう言って舐めるように私の上半身を眺めてくる。

 私もそれには心当たりがあり、思わず体の前で腕を交差して該当部分を隠してみた。

 お父様と護衛が残念そうにそろって眉尻を下げたが、精神衛生上良くないので見なかったことにしよう。



「準男爵は十代後半から二十代後半までの子にしか興味が湧かないようでね。親族はみな手を焼いているらしい。でも今のブリトニーなら、この男爵家の財政を元に戻せるだけの支援をしてもらえるんだよ」

「なに都合の良い事ばっかり言ってるのよ!」

「えぇ? これはウィン・ウィンの関係だよ? あぁ、それにブリトニーも今より贅沢させてもらえるし、キミにも利点はあるじゃないか」

「だからって……私にだって好みってものがあるんです! 誰でも良い訳じゃないわ」



 半分涙目で訴えてみるも、お父様はハァ~っとため息をいた。



「これだから庶民出身は困るね。良いかい? 貴族の令嬢はね、父親が持ってきた縁談は断ってはいけないんだ。 そこのところを忘れたらいけないよ?」

「そ、そんな……」
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