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本編

48.編入生〈ブリトニーside〉

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〈ブリトニーside〉



 それからは毎日、淑女教育を詰め込まれたわ。

 でもやっぱりちょっとカジっただけじゃ何ともならなくて、本当は二年で終わらせて十五歳で王立学園に入るはずだったんだけど、それは無理だった。

 だから仕方なく、一年遅れの編入生へんにゅうせいとして入れてもらったの。



 学園は楽しかったわ。



 それまでと違って、学園の寮に入ってるから淑女教育はしなくて良くなったし、男の子は凄くカッコよくて優しいし。

 まぁ、女の子はプライド高い人が多くて、庶民上がりの私じゃあ相手にしてもらえなかったけど。

 彼女たちいわく。


「足音をあんなに立てるなんてみっともないですわ」

「パンに噛り付くだなんて! 犬や猫ではありませんのよ?」

「あらあら、それはフィンガーボール。指を洗うものよ。いくら美しい容器に入っていても、そのお水は飲み物じゃなくてよ?」

「まぁ、大きなお口。そんなふうに笑われては、いつか虫が飛び込んできますわよ?」

「そこの貴女あなた、淑女がそのように上下に弾んで歩いては品位が疑われますよ? もっと気を使いませんと……」

「あら、庶民は殿方との距離感も分かりませんのね。まるで客引きのようですわ」

「あらあら、今日のアクセサリーは送り主が全員違うのとてもにぎやかですわね」



 数えたらキリが無いほど。

 生徒、先生に関わらず注意されたわ。

 でも何か言ってくるのはみんな女。

 これは男子に優しくされている私をねたんでいるとしか思えないじゃない?

 それでも彼女たちの言動は、男の子と仲良くするキッカケを沢山くれるから、それなりに役に立つの。



 私はお父様に言われた通りにお金持ちの後継ぎや、将来有望で実家がお金持ちの男子と仲良くなることにした。

 この時の私は、下町時代のつらい生活はこの日のための試練だったのかと思うほど、それはそれは楽しくて夢のような暮らしをしていたわ。

 だって本物の王子様かって思うくらい素敵な男子が、私の事を取り合ってまでそばに置きたいと言ってくれて、美味しいおやつや綺麗なアクセサリーをプレゼントしてくれるし、非公式の夜会ならドレスも用意して連れて行ってくれるのよ?

 今はまだ学生だから仕方ないけど、卒業までには素敵な人と婚約して王宮の舞踏会にも連れて行ってもらいたいって、思ってたの。

 それなのに……。
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