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本編

47.生い立ち〈ブリトニーside〉

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〈ブリトニーside〉



 私は十四歳まで、王都の下町で暮らしていたわ。

 ママは食堂の給仕とつくろいもので私やお兄ちゃんたちを育ててくれてたんだけど、ある日突然身なりの良い大人がやって来たの。



「おぉ! これはこれは……可愛らしいお子さんですね。どれ、私にお嬢ちゃんのの色をよく見せておくれ」

「ブリトニー、早くしなさい」



 ただならぬ雰囲気に気圧けおされる私に、ママはアゴをシャクって行けと命じた。

 私は困惑し、警戒しながらも身なりの良い大人に近寄ると……。



「ほほう。正しくこれは旦那様のお色ですね。ふむ、髪の色も同じだ」



 彼はポケットから取り出したリボンで縛った短い毛束けたばと、そしてもう一つ、手のひらに乗るほどの小さな絵画を見て、熱心に私と比べながらそう言った。



「それじゃあ……」

「確かにこの方はフォールン男爵家のお嬢様に間違いありません」



 この瞬間、私はただのブリトニーからブリトニー・フォールン男爵令嬢に変わったのだった。



 * * * * *



 あとで聞いたんだけど、あの家の子は私だけパパの子じゃ無かったんだって。

 ママは昔、お父様がオーナーだったお店で売り子として働いていて、その時にお手付きになったそうだ。

 だから私だけはお父様の子なのだって、お屋敷のメイドたちが話してるのを聞いたわ。

 その時はショックだったけど、同時に納得がいったの。

 だってママやおじいちゃんは、お兄ちゃんたちばかり可愛がって私には優しくなかったから……。

 小さい頃の私はお兄ちゃんたちが死んだパパに似てるから可愛がられているんだって、そう思ってたけど違ったんだね。

 よその人は私のこと『すごく可愛い』とか『将来はエラいべっぴんさんになる』とか言ってくれてたのに、自分の家族だけは絶対に褒めないなんて……。



 おかしいと思ってたのよ。



 だからフォールン男爵のお屋敷で、初めてお父様に引き会わされた時『あぁ、私の世界はあそこじゃなかったんだ』って、すごく納得できたの。

 だって、私の髪の色もの色も、ぜーんぶお父様と同じだったから。

 それにギャラリーに飾られた、大奥様──つまり私のお祖母様の若い時の肖像画。

 その色白で整った目鼻立ちの美少女は、どこかで見た事ある人だなって思ってたら、鏡の中にそっくりな人が居るじゃない。



 ビックリしてよく見たら、私だったの。



 下町の鏡はゆがんでるのが多いから、こんなにハッキリ自分の顔を見た事なくて、本当にびっくりしたのよ?
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