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投獄

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 手紙には、サディアスの「やらかし」が事細かに綴られていた。
 シレネの寝室に忍び込み、暴行を働こうとしていたらしい。すぐに駆け付けた護衛兵に取り押さえられ、大事には至らなかったようだが、この件は翌日の帝都新聞で大々的に報じられた。他国の王子の愚行を、全帝国民の知るところとなった。

 当然、ミジューム王国にも怒りの書状が届けられた。王宮は蜂の巣をつついたような騒ぎとなっているだろう。

 捕縛されたサディアスは、現在貴族用の牢屋で取り調べを受けているという。
 しかしその内容は、聞けば誰もが頭が痛くなってくるような内容だった。

『何故私が罪人として囚われなければならない! 私を誰だと思っている!』
『シレネ殿下への暴行? 何を言っているんだ? 私はただ彼女と愛を確かめ合おうとしただけだ』
『殿下に聞いてみるといい。私とあの方は相思相愛なのだ。男女の仲になったら、やることは一つだろう?」

 この取り調べの様子も新聞に掲載され、帝国民は怒りに震えたそうだ。当然だろう。シレネ皇女には、れっきとした婚約者がいる。サディアスはそのことを知ってか知らずか、自分に都合のいい妄想を垂れ流しているに過ぎない。
 ただ思い込んでいるだけならよかった。しかし、超えてはならない一線を超えてしまったのだ。

 ソフィー王女の一件は、ミリアの暴走によって引き起こされたものであり、サディアスが直接関与したわけではない。だがしかし、今回は完全に加害者の立場にある。

 王太子が他国の皇女、しかも皇位継承権のある女性を辱めようとした。
 しかも、自分たちは愛し合っていると豪語している。前代未聞だ。世界中のどこを探しても、同じような事件はないだろう。あの男だからこそ、引き起こせた・・・・・・と言っても過言ではない。

(極刑……は免れたとしても、終身刑かしら)

 どちらにせよ、ミジューム王国の未来は暗い。サディアスを処刑して済む話ではないのだ。レディーナ王国だけでなく、アグニール帝国までをも激怒させたのである。

(知らん振りといきたいところだけど、そういうわけにもいきませんわね)

 アニュエラは小さく溜め息をつき、手紙の封筒に目を向ける。使用されているのは、ミジューム王家であることを示す封蝋だ。
 ミジューム国王直筆の手紙。その最後は、アニュエラに助けを求める文章で締め括られていた。

 当然、無視することも出来る。だが虫の知らせを感じて、アニュエラは母国へ帰ることにした。

 そしてそれは正しかったと、すぐに悟るのだった。
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