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交流会1

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 交流会は、隣国レディーナ王国の王宮で開かれていた。
 各国の王族だけでなく、それに匹敵する重鎮たちが招待されていて、そうそうたる顔ぶれとなっている。

「どうしましたの、サディアス様?」

 キョロキョロと会場を見回すサディアスに、ミリアが声をかける。

「いや、知り合いを探していたんだ……」
「ご友人ですの? 見付かるといいですわね」

 スカートの部分が大きく膨らんだドレスを纏ったミリアは、微笑みながらそう言った。
 しかしサディアスが探しているのは、クレイラー会長だった。今日の交流会にも招待されているかもしれない。主催側に参加者の一覧を見せて欲しいと依頼したが、断られてしまった。

「情報が悪用される可能性がございますので。申し訳ありませんが、名簿をお見せすることは出来ません」

 私が悪用する人間だと思っているのか。
 受付の人間にすげない物言いに、サディアスは苛立ちを覚えた。
 だが、これ以上問題を起こすわけにはいかないと、諦めて引き下がったのだ。


(よし……いない)

 この場に居合わせられても、どのように声をかければいいか思い付かない。
 かといって無視するわけにもいかない。
 クレイラー会長が招待されていないと分かり、サディアスは安堵した。
 そうすると、他のことに意識を向ける余裕が出てくる。
 先ほどからワインを飲んでいる妻へ声をかけた。

「飲み過ぎだぞ、少し控えてくれ」
「でもパーティーですわよ。パーティーは好きなだけお料理やお酒をいただくものでしょう?」
「これはただのパーティーではない。各国が集まる重要な夜会だ。私たちはミジューム王国の代表として呼ばれたことを忘れるな」

 サディアスが小声で耳打ちをすると、ミリアが眉間に皺を寄せて唇を尖らせた。
 およそ公的な場で見せていいような表情ではない。

「サディアス様……最近冷たいですわっ。前はあんなに優しかったのに!」

 そして愚痴を零し始めた。

「毎日私に会いに来てくださることもなくなりました。夜だっていくら私がお誘いしても、断られてしまいますし……」
「だったら、妃教育を真面目に受けろ! 君のせいで教育係が何人も辞めて、私が父上に叱られているんだぞ!?」
「きゃっ! 怖いですわ、サディアス様ぁ……」

 怯えた表情で体を縮める姿は、小動物を彷彿とさせて愛らしい。
 だが、それだけだ。少し前までは愛らしいと思っていた幼さが、今は苛立ちの原因となっていた。

 今日のためにレディーナ語だけは何とか習得させたが、それ以外は殆ど進歩がない。
 いや、仮病と嘘泣きだけは更に磨きがかかっていた。

 周囲を見回すと、他の招待客が遠巻きに二人を眺めていた。けれど視線が合うと軽く会釈されるだけ。

 酷い疎外感を感じていると、ある一角に人だかりが出来ていることに気付いた。
 その中心にいる人物に、サディアスは息を呑む。

 アニュエラだ。彼女と言葉を交わそうと、皆代わる代わる話しかけている。
 近付いて耳を澄ませてみると、レディーナ語ではなく、相手の国の言語で会話をしているようだった。
 サディアスも、各国の言語は習得済だ。だが、それを臨機応変に使いこなすまでには至っていない。

「ア……アニュエラ!」

 側妃の名前を叫ぶと、その場が静まり返った。アニュエラの周りにいた人々に怪訝そうな視線を向けられ、居たたまれなくなる。

「……っ、来い!」

 サディアスは人混みを掻き分けると、アニュエラの腕を掴んで会場から飛び出した。
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