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11.やってしまった…(エリオット視点)

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 近頃、リリティーヌの様子がおかしいとは思っていたんだ。
 レナに明らかにやきもちを焼いている。彼女とはもう何でもないんだと、口を酸っぱくして言っても聞き入れてくれない。

 僕はそんな状況を……ちょっと楽しんでたりしていた。
 そりゃ最初は、レナと全然仲良くしてくれなくて困ってた。
 それがだんだん変わり始めて……

 だって大好きな人が、僕のことで不安に思ったり怒ったりするんだよ?
 リリティーヌが嫉妬するなんて初めてで、それをもっと見たいと思うようになった。

 だから僕は、意識してレナに構ったり甘やかすようにした。
 もう恋人じゃなくても、可愛いレナと一緒に出掛けるのは楽しいしね。
 それにリリティーヌは笑顔よりも、怒ったり悲しんでいる顔の方が綺麗だ。笑顔なら、レナのを見ていれば充分。

 うんうん、浮気していた頃よりも毎日が楽しい。
 こんな日々がずっと続けばいいのに。
 そう願っていた僕は、気づかなかったんだ。
 自分が調子に乗りすぎていたことを。


「ど、どうしよう……」

 自分の部屋で、僕は一人頭を抱えていた。
 ああ、リリティーヌ……
 突然義母が来たかと思ったら、彼女を連れ帰ってしまったんだ。
 しかもリリティーヌ本人からも、冷たく拒絶されて、僕の心は後悔と悲しみで張り裂けそうになっていた。
 まさかリリティーヌが、離婚を考えていると思わなかった。

 だけど彼女の心は、いつの間にか僕から離れていたんだ。
 レナとお幸せに。僕にそう言ったリリティーヌの顔は、とっても綺麗で輝いていて……

 僕の歪んだ愛が、また最愛の妻を傷つけた。
 やっと気づけた自分の浅はかさ。
 僕は震える手で、机の引き出しを開けた。
 そこに入っているものを見詰めながら自問する。
 ……まだ僕は間に合うだろうか。
 いや、間に合う! リリティーヌを信じるんだ!
 僕は迷いを振り払うように、首をブンブンと横に振る。

 まずは、屋敷に帰って来てもらわないと。
 そのためには、どうすればいいだろう。あの様子じゃ僕が何を言ってもなぁ……。

「奥さんが出て行っちゃったって聞きましたよ、エリオット様! エリオット様の気持ちも知らないで……本当に自分勝手な人ですよねっ」

 僕を慰めようとしているのか、レナが部屋にやって来た。
 ああ、こんな愚かな男を心配してくれるなんて優しい子だ。
 この子なら、困っている僕を助けてくれるかもしれない。

「レナ、お願いがあるんだ」
「はいっ、何ですか?」
「僕と一緒に、リリティーヌに謝ってくれないかい……?」

 リリティーヌに許してもらうには、もうそれしか思いつかない。
 そしてレナには、一刻も早く屋敷から出て行ってもらう。新居が見つかるまでは、宿屋に泊まらせるとして……

「嫌です」

 え?

「奥さんのこと大嫌いだから、謝りたくないです!」

 えぇ……っ!?
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