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7.新しい幸せ(エリオット視点)

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 とは言っても、レナに対する心残りは勿論あった。
 子供のように泣き叫ぶ彼女に、僕の心は張り裂けそうだった。
 これで僕たちの関係は終わりだけど、せめて最後に……と小さな体をぎゅっと抱きしめる。

「さようなら、レナ……」
「エリオット様……エリオット様ぁ……!」

 リリティーヌに見えないように、こっそり唇にキスをすると、レナはぎこちないながらも笑みを浮かべてくれた。
 どうやら彼女も納得してくれたようだ。
 そう安心していると、レナは僕の耳元に口を近づけて、

「……最後に一つだけ相談に乗って欲しいことがあるんです。あとで聞いてくれますか……?」

 その言葉に、僕は小さく頷いた。
 何だろう? 借金の返済を手伝って欲しいとかかな?
 だけどその後、こっそり二人きりになってから聞かされたのは、あまりにも残酷な話だった。

「ど、どういうことだい、レナ!? 住む場所がなくなるって……」
「古いから取り壊すことになっちゃったんですぅ……」
「新しく住むところは!?」

 そう聞くと、レナは今にも泣きそうな顔で首を横に振った。
 大家からは、一、二週間以内に出て行くようにとしか言われていないらしい。

「どうしてそんな大事なことを今まで黙っていたんだ……!」
「ご、ごめんなさい……エリオット様に心配かけたくなかったんです。でも私、やっぱり……うぅ、レナってズルい女ですよね」
「そんなことないよ!」

 自嘲気味に笑うレナの肩を掴み、僕は叫んだ。
 どうしようもなく困っている時に、誰かに助けを求めるのは当たり前のことだ。
 それに、一方的に別れを切り出した僕を頼ってくれるなんて……!

「レナ……僕の屋敷においで」
「え?」
「新しい家が見つかるまで、僕の屋敷で暮らすんだ」

 僕がそう提案すると、レナの目が大きく見開いた。

「だ、ダメですっ! もうエリオット様と別れちゃったんですから!」
「だけど、君のピンチを放っておけないよ」
「エリオット様が許しても、奥さんが……」
「大丈夫。リリティーヌは聡明な女性だからね。君の事情を知ったら、きっと快く受け入れてくれるよっ!」

 僕はウインクをしながら言った。
 もしかしたら、これをきっかけにリリティーヌとレナは、友達になれるんじゃないだろうか。
 ほら。同じ趣味を持つ同士は、気が合うって言うし。
 僕の話題で、会話が弾む二人を想像したら、少し照れ臭くなっちゃったよ。


 ただ、問題が一つ発生した。
 リリティーヌがものすごく怒っているんだ。
 僕とレナはもう何でもなくて、これは純粋な人助けなのに妙な勘繰りをしてるっぽい。
 ……僕の奥さんって、こんなに頭が固くて融通が利かない性格だったっけ?
 最後には渋々納得してくれたみたいだけど、その後すぐに外出するし。
 暫くして帰って来てからも、ずっと不機嫌そうな顔をしているし。

 よし。リリティーヌがレナに何か危害を加えないように、しっかり見張っておかなくちゃ。
 リリティーヌのことは世界で一番愛しているけど、それとこれとでは話が別だ。

 何も怖くないからね、レナ。僕が君の騎士ナイトになってあげるよ……
 


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