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3.初めてのパーティー
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貴族としてパーティーに参加するのは、生まれて初めてだった。
宝石みたいに美しく巨大なシャンデリアが天井から吊るされた大きなホール。
参加している貴族たちが楽しそうにお喋りをしたり、美味しそうな料理を食べている。
豪華なドレスとアクセサリーを身に付けた女の人たちは、同性の私から見ても息を呑むくらい美人だ。それに緊張する様子もなく、堂々している。
この場の空気に怖じ気付いてしまっている私とは違う。
「何だ、その陰気臭い顔は。お前はこのパーティーに招待された側なんだぞ。愛想笑いの一つも出来ないのか?」
「は、はい……!」
ライネック様に小声で注意されて、慌てて笑顔を作る。だけどあまり上手くいかなかったみたいで、ライネック様が呆れたように溜め息をいた。
謝らないと。そう思って口を開こうとすると、ライネック様は周囲をちらりと見てから急に優しい笑みを浮かべた。
ライネック様が見せる笑顔。喜ぶ気持ちよりも、「どうして?」と戸惑いの方が強い。いつもだったら、暫く機嫌が悪いのに。
反応に困る私の頬に、ライネック様の手が触れる。
「別にお前を怖がらせたいわけじゃないんだ。俺はお前のために厳しくしているし、俺も本当は叱りたくない。そこは理解して欲しい」
「……いいえ、ライネック様は悪くありません。私が悪いんです……私がいつまでも成長しないから」
今日はせっかくのパーティー。
そんな楽しい時間に、ライネック様の気分を害するなんて婚約者失格だ。
頑張って笑顔を作って、皆さんに挨拶する。すると一人の男性が私へと近付いてきた。
太陽の光を閉じ込めたような綺麗な金色の髪と、ミントグリーンの瞳。
「君がルビス侯爵のところのお菓子姫?」
「お菓子姫……?」
「うん、みんな君のことをそう呼んでいるんだよ」
そんなの初めて知った。
でもお菓子姫かぁ。可愛いなぁ、私にはちょっと勿体ない呼び方だ。
緊張も少しだけ解れた気がする。
私は男の人に「ありがとうございます」と頭を下げた。
「え? お礼を言われることなんて、言っていないと思うけど」
「あ、す、すみません!」
困ったような顔をされたから謝る。すると男の人は私じゃなくて、私の隣にいるライネック様に視線を向けた。
「お菓子姫、こういう子じゃないって聞いたけど。君がこんな風に教育したの?」
「……君はカスタネアの知り合いか? 随分と馴れ馴れしいが」
ライネック様の声は明らかに苛立ちが込もっていた。男の人が怯える様子もなく、「ううん、初対面だけど」と答えると、ライネック様は私の腕を掴んだ。痛みに顔が歪み、悲鳴を上げそうになる。
「これは俺のカスタネアだ。他の男に話しかけられるのを見ていい気はしない」
「それもそうか。じゃあ、僕はそろそろ退散するよ。もう少ししたら面白いものが見れるって言うしね」
男の人は優雅に微笑みながら、人混みの中に消えて行った。
何だか不思議な人だったなと、その後ろ姿をぼんやり見詰めていると、ライネック様が私の腕を握る力を強めた。
「……っ、ライネック……様?」
「お前もお前だ。あんな男に色目を使うな」
低い声で言い付けられる。私にそのつもりはなかったけれど、そう見えたのならも申し訳ないと思う。
宝石みたいに美しく巨大なシャンデリアが天井から吊るされた大きなホール。
参加している貴族たちが楽しそうにお喋りをしたり、美味しそうな料理を食べている。
豪華なドレスとアクセサリーを身に付けた女の人たちは、同性の私から見ても息を呑むくらい美人だ。それに緊張する様子もなく、堂々している。
この場の空気に怖じ気付いてしまっている私とは違う。
「何だ、その陰気臭い顔は。お前はこのパーティーに招待された側なんだぞ。愛想笑いの一つも出来ないのか?」
「は、はい……!」
ライネック様に小声で注意されて、慌てて笑顔を作る。だけどあまり上手くいかなかったみたいで、ライネック様が呆れたように溜め息をいた。
謝らないと。そう思って口を開こうとすると、ライネック様は周囲をちらりと見てから急に優しい笑みを浮かべた。
ライネック様が見せる笑顔。喜ぶ気持ちよりも、「どうして?」と戸惑いの方が強い。いつもだったら、暫く機嫌が悪いのに。
反応に困る私の頬に、ライネック様の手が触れる。
「別にお前を怖がらせたいわけじゃないんだ。俺はお前のために厳しくしているし、俺も本当は叱りたくない。そこは理解して欲しい」
「……いいえ、ライネック様は悪くありません。私が悪いんです……私がいつまでも成長しないから」
今日はせっかくのパーティー。
そんな楽しい時間に、ライネック様の気分を害するなんて婚約者失格だ。
頑張って笑顔を作って、皆さんに挨拶する。すると一人の男性が私へと近付いてきた。
太陽の光を閉じ込めたような綺麗な金色の髪と、ミントグリーンの瞳。
「君がルビス侯爵のところのお菓子姫?」
「お菓子姫……?」
「うん、みんな君のことをそう呼んでいるんだよ」
そんなの初めて知った。
でもお菓子姫かぁ。可愛いなぁ、私にはちょっと勿体ない呼び方だ。
緊張も少しだけ解れた気がする。
私は男の人に「ありがとうございます」と頭を下げた。
「え? お礼を言われることなんて、言っていないと思うけど」
「あ、す、すみません!」
困ったような顔をされたから謝る。すると男の人は私じゃなくて、私の隣にいるライネック様に視線を向けた。
「お菓子姫、こういう子じゃないって聞いたけど。君がこんな風に教育したの?」
「……君はカスタネアの知り合いか? 随分と馴れ馴れしいが」
ライネック様の声は明らかに苛立ちが込もっていた。男の人が怯える様子もなく、「ううん、初対面だけど」と答えると、ライネック様は私の腕を掴んだ。痛みに顔が歪み、悲鳴を上げそうになる。
「これは俺のカスタネアだ。他の男に話しかけられるのを見ていい気はしない」
「それもそうか。じゃあ、僕はそろそろ退散するよ。もう少ししたら面白いものが見れるって言うしね」
男の人は優雅に微笑みながら、人混みの中に消えて行った。
何だか不思議な人だったなと、その後ろ姿をぼんやり見詰めていると、ライネック様が私の腕を握る力を強めた。
「……っ、ライネック……様?」
「お前もお前だ。あんな男に色目を使うな」
低い声で言い付けられる。私にそのつもりはなかったけれど、そう見えたのならも申し訳ないと思う。
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