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19.失いたくない!(リネオ視点)
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あ~~~~も~~~~何なんだよ、あいつ! せっかく二人がかりでラピスを説得しようと思ったのに、変な執政官が出て来た。
あんな性格悪そうな奴を教育係にするなんて、国王も何考えているんだか!
しかも僕が何言ってもすぐに言い返してくるし。エヴァリアのことも馬鹿にするし!
「ひっく……ぐすっ。こ、怖かったです、リネオ様……それにあんなに酷いこと言われるの初めてで……」
「平民を馬鹿にしないって言っていたけど、あんなの嘘だ。だったらエヴァリアを悪く言うわけない!」
エヴァリアだって頑張っている。ただ、元平民のこの子には大変みたいですぐに泣き出してしまう。その度に授業が中止になって、だから勉強が遅れている。それだけの話。
なのにエヴァリアが何も苦労していないみたいな言い方をしたのが許せない。
というより、もうラピスと仲良くしてるっぽいのが一番腹が立つ! あいつのことだ、絶対にラピスのことを狙ってるに決まってる! いつもラピスのおっぱいをいやらしい目で見ているんだ! ずるい!
「裁判を止めさせてラピスを取り戻すには、まずあいつをどうにかしなくちゃな……」
マジで父上に言っちゃおう。あいつも貴族なんだろうけど、公爵の父上には逆らえないだろ。僕とエヴァリアを侮辱した罪で家族もろとも平民に落としてやる!
本当はヒスライン家にエヴァリアを送り届ける予定だったけど、エヴァリアが「一人にしないで」って可愛いことを言うから屋敷に連れ帰っちゃった。今夜はた~っぷり愛してあげないと……。
ああ、早くラピスとエヴァリアが僕を取り合う幸せな未来がやって来ないかなぁ。なんて考えながら屋敷に入ると、使用人たちがドタバタしている。
おい、僕が帰って来たのに挨拶もなし? 文句の一つでも言ってやろうとすると、
「……ひっ!」
一斉に睨まれた。え? いつものみんなじゃない……。エヴァリアも怖がって僕の後ろに隠れてしまった。
「……リネオ様、主様がお待ちになっております」
感情を抑えたような声で執事に言われる。心臓がバクバクうるさくて、足も震えている。
僕が何したってんだよ! 不安になりながら父上の執務室に辿り着くと、この世の終わりみたいな顔をした父上からとんでもないことを言われた。
「え……爵位、剥奪……?」
「ああ。その場合、直近に開く予定だった裁判も強制的に取り止めとなる。はは……よかったではないか……」
「よくないよ! それって僕たちが平民になるってことだよね!?」
貴族じゃなくなったら贅沢出来なくなる! 平民と同じ安い服を着て安い食べ物を食べなきゃならない。そんなの無理! 僕は嫌だ!
「お前が駄々を捏ねても既に確定したことだ。お前もこれからの生活をどうするか考えろ」
「これからって……大体どうしてそんな馬鹿なことになったの!?」
「この国では爵位剥奪を行うのにいくつかの条件がある。そのうちの一つが平民の署名だ。それが一定数を超えると爵位を剥奪すべきか議論がなされる。その間、本人たちの耳には入らないように事が進んでいく。そして王城から届いた書状で、自身らの状況を知ることとなるのだ……はぁ」
それを聞いて頭が真っ白になった。
平民の奴らのせいで僕たちの人生が駄目になる……?
「リネオ、お前市井で相当やらかしていたようだな。飲食店で一切金銭を払わず、エヴァリア嬢のドレスやアクセサリーも無償で作らせていたのは本当か?」
「え~? そんなの貴族なら誰でもやってることじゃないの……?」
僕の家は貴族、それもとっても偉い公爵だ。そんな選ばれた存在の僕たちに尽くすのが平民の仕事じゃない?
僕がそう言うと、父上に思い切り殴られて、床に倒れた後に頭を蹴られた。
署名が多い理由の一つが僕の振る舞いにあるって、父上に荒々しい口調で言われた。
エヴァリアは悲鳴を上げるだけで、父上を止められずにいる。
だ、誰かたすけ……。
あんな性格悪そうな奴を教育係にするなんて、国王も何考えているんだか!
しかも僕が何言ってもすぐに言い返してくるし。エヴァリアのことも馬鹿にするし!
「ひっく……ぐすっ。こ、怖かったです、リネオ様……それにあんなに酷いこと言われるの初めてで……」
「平民を馬鹿にしないって言っていたけど、あんなの嘘だ。だったらエヴァリアを悪く言うわけない!」
エヴァリアだって頑張っている。ただ、元平民のこの子には大変みたいですぐに泣き出してしまう。その度に授業が中止になって、だから勉強が遅れている。それだけの話。
なのにエヴァリアが何も苦労していないみたいな言い方をしたのが許せない。
というより、もうラピスと仲良くしてるっぽいのが一番腹が立つ! あいつのことだ、絶対にラピスのことを狙ってるに決まってる! いつもラピスのおっぱいをいやらしい目で見ているんだ! ずるい!
「裁判を止めさせてラピスを取り戻すには、まずあいつをどうにかしなくちゃな……」
マジで父上に言っちゃおう。あいつも貴族なんだろうけど、公爵の父上には逆らえないだろ。僕とエヴァリアを侮辱した罪で家族もろとも平民に落としてやる!
本当はヒスライン家にエヴァリアを送り届ける予定だったけど、エヴァリアが「一人にしないで」って可愛いことを言うから屋敷に連れ帰っちゃった。今夜はた~っぷり愛してあげないと……。
ああ、早くラピスとエヴァリアが僕を取り合う幸せな未来がやって来ないかなぁ。なんて考えながら屋敷に入ると、使用人たちがドタバタしている。
おい、僕が帰って来たのに挨拶もなし? 文句の一つでも言ってやろうとすると、
「……ひっ!」
一斉に睨まれた。え? いつものみんなじゃない……。エヴァリアも怖がって僕の後ろに隠れてしまった。
「……リネオ様、主様がお待ちになっております」
感情を抑えたような声で執事に言われる。心臓がバクバクうるさくて、足も震えている。
僕が何したってんだよ! 不安になりながら父上の執務室に辿り着くと、この世の終わりみたいな顔をした父上からとんでもないことを言われた。
「え……爵位、剥奪……?」
「ああ。その場合、直近に開く予定だった裁判も強制的に取り止めとなる。はは……よかったではないか……」
「よくないよ! それって僕たちが平民になるってことだよね!?」
貴族じゃなくなったら贅沢出来なくなる! 平民と同じ安い服を着て安い食べ物を食べなきゃならない。そんなの無理! 僕は嫌だ!
「お前が駄々を捏ねても既に確定したことだ。お前もこれからの生活をどうするか考えろ」
「これからって……大体どうしてそんな馬鹿なことになったの!?」
「この国では爵位剥奪を行うのにいくつかの条件がある。そのうちの一つが平民の署名だ。それが一定数を超えると爵位を剥奪すべきか議論がなされる。その間、本人たちの耳には入らないように事が進んでいく。そして王城から届いた書状で、自身らの状況を知ることとなるのだ……はぁ」
それを聞いて頭が真っ白になった。
平民の奴らのせいで僕たちの人生が駄目になる……?
「リネオ、お前市井で相当やらかしていたようだな。飲食店で一切金銭を払わず、エヴァリア嬢のドレスやアクセサリーも無償で作らせていたのは本当か?」
「え~? そんなの貴族なら誰でもやってることじゃないの……?」
僕の家は貴族、それもとっても偉い公爵だ。そんな選ばれた存在の僕たちに尽くすのが平民の仕事じゃない?
僕がそう言うと、父上に思い切り殴られて、床に倒れた後に頭を蹴られた。
署名が多い理由の一つが僕の振る舞いにあるって、父上に荒々しい口調で言われた。
エヴァリアは悲鳴を上げるだけで、父上を止められずにいる。
だ、誰かたすけ……。
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