68 / 88
68.予想外(アデラ視点)
しおりを挟む
私が『精霊の隠れ家』のことを教えてあげると、予想通り王子は食いついてきたわ。
だからここぞばかりに、あの店の良さをアピールしてやった。
あ、黒い魔法使い様のことをものすごーく喋りたかったけど、そこは我慢した。
私が他の男に夢中だって知られたら、王子を口説くことが難しくなるもの。
王子も以前から『精霊の隠れ家』のことは知っていて、候補には入れていたみたい。
で、私の話を聞いてますます興味を持ってくれた。
やっぱり、リザリアの話題を出したのが決め手だったかしらね。
私としてはとても不本意だったけど、使えるものは何でも使おうと思って「フィリヌ魔導店を名店にした凄腕事務員がそこで働いている」って言えば、王子は目の色を変えた。
これで私は王子と結びつきができたし、後は『精霊の隠れ家』が王宮と契約を結べば……なんて思っていたら、ここで事件発生。
リザリアと変なおばさんが契約の話を蹴ったの!
何考えてるの、あいつら。
王宮との契約よ? 最初に手紙を送らなかっただとか、私を頼った王子も悪いだとか色々と難癖つけちゃって!
あのね、こっちは王族なの。
それに対してあっちは人気店と言っても、開店してから半年も経っていない小さな店。
王子からは『向こうに話を通していてください』って言われていたけど、アポイントなんて必要ないでしょうが。
おまけに王子を落ち込ませて。あんたたち、不敬罪で牢屋送りか極刑になるわよ!
だけどここは怒っていないで、しおらしい態度を見せておいた方がいいかも。
王子の頼みを無視した最低な女って思われたら嫌だし。
私は帰りの馬車の中で、声を震わせて何度も謝った。
「ご、ごめんなさい、ルシロワール様。私が甘く考えていたせいで、こんなことになってしまいまして……」
「いえ、あまりご自分を責めないでください。アデラ嬢に全てを任せて、契約を結ぶことだけを考えていた私が悪いのですから」
「ぐすっ……ルシロワール様はお優しいのですね」
この王子は人がよすぎるから、こっちから謝ればすぐに折れてくれるって分かっていたけどね。
ホッと安心したから、お礼に今度は私が王子を慰めてあげることにした。
「私のような女でも許してくださるなんて……やっぱりルシロワール様は王の器です!」
「そ、そうでしょうか?」
「ええ! そんなルシロワール様をこれからも支えてまいります!」
「……はい。ありがとうございます」
まだ心の傷が癒えていないみたいで、王子は寂しそうに笑った。
やっぱりあいつら不敬罪よ、不敬罪。
私の未来の旦那様が悲しんでいるじゃない。
だからここぞばかりに、あの店の良さをアピールしてやった。
あ、黒い魔法使い様のことをものすごーく喋りたかったけど、そこは我慢した。
私が他の男に夢中だって知られたら、王子を口説くことが難しくなるもの。
王子も以前から『精霊の隠れ家』のことは知っていて、候補には入れていたみたい。
で、私の話を聞いてますます興味を持ってくれた。
やっぱり、リザリアの話題を出したのが決め手だったかしらね。
私としてはとても不本意だったけど、使えるものは何でも使おうと思って「フィリヌ魔導店を名店にした凄腕事務員がそこで働いている」って言えば、王子は目の色を変えた。
これで私は王子と結びつきができたし、後は『精霊の隠れ家』が王宮と契約を結べば……なんて思っていたら、ここで事件発生。
リザリアと変なおばさんが契約の話を蹴ったの!
何考えてるの、あいつら。
王宮との契約よ? 最初に手紙を送らなかっただとか、私を頼った王子も悪いだとか色々と難癖つけちゃって!
あのね、こっちは王族なの。
それに対してあっちは人気店と言っても、開店してから半年も経っていない小さな店。
王子からは『向こうに話を通していてください』って言われていたけど、アポイントなんて必要ないでしょうが。
おまけに王子を落ち込ませて。あんたたち、不敬罪で牢屋送りか極刑になるわよ!
だけどここは怒っていないで、しおらしい態度を見せておいた方がいいかも。
王子の頼みを無視した最低な女って思われたら嫌だし。
私は帰りの馬車の中で、声を震わせて何度も謝った。
「ご、ごめんなさい、ルシロワール様。私が甘く考えていたせいで、こんなことになってしまいまして……」
「いえ、あまりご自分を責めないでください。アデラ嬢に全てを任せて、契約を結ぶことだけを考えていた私が悪いのですから」
「ぐすっ……ルシロワール様はお優しいのですね」
この王子は人がよすぎるから、こっちから謝ればすぐに折れてくれるって分かっていたけどね。
ホッと安心したから、お礼に今度は私が王子を慰めてあげることにした。
「私のような女でも許してくださるなんて……やっぱりルシロワール様は王の器です!」
「そ、そうでしょうか?」
「ええ! そんなルシロワール様をこれからも支えてまいります!」
「……はい。ありがとうございます」
まだ心の傷が癒えていないみたいで、王子は寂しそうに笑った。
やっぱりあいつら不敬罪よ、不敬罪。
私の未来の旦那様が悲しんでいるじゃない。
12
お気に入りに追加
5,290
あなたにおすすめの小説
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
【完結】野垂れ死ねと言われ家を追い出されましたが幸せです
kana
恋愛
伯爵令嬢のフローラは10歳の時に母を亡くした。
悲しむ間もなく父親が連れてきたのは後妻と義姉のエリザベスだった。
その日から虐げられ続けていたフローラは12歳で父親から野垂れ死ねと言われ邸から追い出されてしまう。
さらに死亡届まで出されて⋯⋯
邸を追い出されたフローラには会ったこともない母方の叔父だけだった。
快く受け入れてくれた叔父。
その叔父が連れてきた人が⋯⋯
※毎度のことながら設定はゆるゆるのご都合主義です。
※誤字脱字が多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】皆様、答え合わせをいたしましょう
楽歩
恋愛
白磁のような肌にきらめく金髪、宝石のようなディープグリーンの瞳のシルヴィ・ウィレムス公爵令嬢。
きらびやかに彩られた学院の大広間で、別の女性をエスコートして現れたセドリック王太子殿下に婚約破棄を宣言された。
傍若無人なふるまい、大聖女だというのに仕事のほとんどを他の聖女に押し付け、王太子が心惹かれる男爵令嬢には嫌がらせをする。令嬢の有責で婚約破棄、国外追放、除籍…まさにその宣告が下されようとした瞬間。
「心当たりはありますが、本当にご理解いただけているか…答え合わせいたしません?」
令嬢との答え合わせに、青ざめ愕然としていく王太子、男爵令嬢、側近達など…
周りに搾取され続け、大事にされなかった令嬢の答え合わせにより、皆の終わりが始まる。
夫に用無しと捨てられたので薬師になって幸せになります。
光子
恋愛
この世界には、魔力病という、まだ治療法の見つかっていない未知の病が存在する。私の両親も、義理の母親も、その病によって亡くなった。
最後まで私の幸せを祈って死んで行った家族のために、私は絶対、幸せになってみせる。
たとえ、離婚した元夫であるクレオパス子爵が、市民に落ち、幸せに暮らしている私を連れ戻そうとしていても、私は、あんな地獄になんか戻らない。
地獄に連れ戻されそうになった私を救ってくれた、同じ薬師であるフォルク様と一緒に、私はいつか必ず、魔力病を治す薬を作ってみせる。
天国から見守っているお義母様達に、いつか立派な薬師になった姿を見てもらうの。そうしたら、きっと、私のことを褒めてくれるよね。自慢の娘だって、思ってくれるよね――――
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果
あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」
ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。
婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。
当然ながら、アリスはそれを拒否。
他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。
『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。
その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。
彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。
『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。
「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」
濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。
······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。
復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。
※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください)
※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。
※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。
※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる