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62.契約
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「く、国と!?」
これには叔母様も流石にぎょっとしている。
「はい。正しくは王宮との契約と言った方がいいでしょうか。先日までマリガント王宮は某魔導工芸品店と契約を結び、品物を購入していました。ですが、その契約を破棄して新たな契約先を探していたのです」
「……その魔導工芸品店とは、フィリヌ魔導店のことですか?」
「ええ、……その、これは公にはされていないのですが、あの店の『永久の灯火』を使用した際に大きな事故が発生しまして」
「それは本当ですか?」
魔導工芸品の中でも、一番取り扱いを注意しなければならないのは『永久の灯火』。
他の三属性と違って、火傷や火事に直結するものだから。
たった一度の事故で、魔導工芸品店は信用を失墜させることになる。
事実、フィリヌ魔導店は王宮に見捨てられてしまった。
いや店だけの問題ではない。フィリヌ家そのものにも、大きなダメージがあったと思う。
「ですが、よくご存知でしたね。まだ貴族の間でも、ごく一部の者にしか知らせていないことなのですが」
「以前私はあの店に勤めていましたので、契約の内容も存じていました」
「……失礼ですが、あなたのお名前は?」
「リザリアと申します」
答えると、ルシロワール殿下は合点がいった様子で何度も頷いた。
「あなたではなく、別の事務員に代わってから品物が一斉に値上げとなったのです。それに加えて質の低下など問題が相次いだところで、『永久の灯火』による事故。あの店はあなたがいたからこそ機能していたのでは? と噂も流れていました」
「実際そうでしょ。この子の知識量と判断力ってピカイチで、あいつらはそのことに気づこうともしなかったけど」
叔母様が呆れたように言う。
フィリヌ家……予想以上に追い込まれているようたま。
これはトール様が暴走するのも分かる気がする。だからといって、あんな手紙を送って来られても困るけれど。
「……とまあ、フィリヌ魔導店に代わる店を探している時、こちらのアデラ嬢にこのお店を教えていただきました」
「そう! とーっても素敵な魔法使い様がいて、最高の品物を扱っている店って紹介してあげたの。このわ、た、し、が!」
アデラさんはルシロワール殿下の腕に抱き着いた。
さっきも思ったけれど、やけに距離感が近い。殿下も少し困ったような顔をしている。
トール様がこの現場を見たらどう思うのかしらと、わりとどうでもいいことを考えていると、
「あんた、いくら王子様だからってそんな風にベタベタしていたら、トールが怒るんじゃないの?」
叔母様が指摘してくれた。
するとアデラさんは、得意げな顔をしてこう言い放った。
「心配いらないわ。あんな男とは別れたから」
「……え?」
おかしい。トール様の手紙にはそんなことは一言も書かれていなかった。
……ただ、逆を言えばアデラさんとの仲が良好だとも書かれていなかった。
ひょっとして、アデラさんに逃げられたから私との復縁も狙っている……?
これには叔母様も流石にぎょっとしている。
「はい。正しくは王宮との契約と言った方がいいでしょうか。先日までマリガント王宮は某魔導工芸品店と契約を結び、品物を購入していました。ですが、その契約を破棄して新たな契約先を探していたのです」
「……その魔導工芸品店とは、フィリヌ魔導店のことですか?」
「ええ、……その、これは公にはされていないのですが、あの店の『永久の灯火』を使用した際に大きな事故が発生しまして」
「それは本当ですか?」
魔導工芸品の中でも、一番取り扱いを注意しなければならないのは『永久の灯火』。
他の三属性と違って、火傷や火事に直結するものだから。
たった一度の事故で、魔導工芸品店は信用を失墜させることになる。
事実、フィリヌ魔導店は王宮に見捨てられてしまった。
いや店だけの問題ではない。フィリヌ家そのものにも、大きなダメージがあったと思う。
「ですが、よくご存知でしたね。まだ貴族の間でも、ごく一部の者にしか知らせていないことなのですが」
「以前私はあの店に勤めていましたので、契約の内容も存じていました」
「……失礼ですが、あなたのお名前は?」
「リザリアと申します」
答えると、ルシロワール殿下は合点がいった様子で何度も頷いた。
「あなたではなく、別の事務員に代わってから品物が一斉に値上げとなったのです。それに加えて質の低下など問題が相次いだところで、『永久の灯火』による事故。あの店はあなたがいたからこそ機能していたのでは? と噂も流れていました」
「実際そうでしょ。この子の知識量と判断力ってピカイチで、あいつらはそのことに気づこうともしなかったけど」
叔母様が呆れたように言う。
フィリヌ家……予想以上に追い込まれているようたま。
これはトール様が暴走するのも分かる気がする。だからといって、あんな手紙を送って来られても困るけれど。
「……とまあ、フィリヌ魔導店に代わる店を探している時、こちらのアデラ嬢にこのお店を教えていただきました」
「そう! とーっても素敵な魔法使い様がいて、最高の品物を扱っている店って紹介してあげたの。このわ、た、し、が!」
アデラさんはルシロワール殿下の腕に抱き着いた。
さっきも思ったけれど、やけに距離感が近い。殿下も少し困ったような顔をしている。
トール様がこの現場を見たらどう思うのかしらと、わりとどうでもいいことを考えていると、
「あんた、いくら王子様だからってそんな風にベタベタしていたら、トールが怒るんじゃないの?」
叔母様が指摘してくれた。
するとアデラさんは、得意げな顔をしてこう言い放った。
「心配いらないわ。あんな男とは別れたから」
「……え?」
おかしい。トール様の手紙にはそんなことは一言も書かれていなかった。
……ただ、逆を言えばアデラさんとの仲が良好だとも書かれていなかった。
ひょっとして、アデラさんに逃げられたから私との復縁も狙っている……?
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