43 / 88
43.お礼の店巡り
しおりを挟む
店の居住スペースに戻ると、叔母様はミルクパン粥を深皿に盛りつけてテーブルに並べてくれた。
パンはミルク風味のスープをたっぷり吸って真っ白……ではなく、淡い黄色に染まっている。
仕上げに刻んだパセリが散らされてお洒落だ。
お兄様にはパン粥のみで、私たちには温野菜のサラダとデザートのゼリーつき。
一応お兄様にもサラダとゼリーを食べられるか聞いたらしいけれど、「無理」という答えが返ってきたらしい。
パンが黄色い謎の正体は南瓜。潰してミルクと混ぜたとのこと。
パンはとっても柔らかくて、優しい味がする。
温野菜サラダもほんのり温かく、濃厚な味わいのドレッシングがよく合う。
「うめぇ……うめぇ……」
お兄様は蒼白い顔でパン粥をゆっくり食べている。
今日一日ずっとこの有様だろう……。
迎えの馬車はお昼近くに来るそうだけれど、それまで様子を見ていたほうがいいかもしれない。
私がそう考えているのを察した叔母様が、苦笑しながら口を開く。
「リザリア。シルヴァンは私が見ておくから、あんたはせっかくの休みなんだし部屋でゆっくりするなり、出かけるなり好きにしていいわよ」
「……大丈夫ですか?」
「とりあえず食べ終わったら寝かせておくわ。もう~、酒に弱いのはお姉ちゃん譲りね」
初めて知るお母様の情報だった。
アルコールには強いと勝手に思い込んでいた。
「しかもすぐに酔っ払って次の日は二日酔いに苦しむのに、懲りずに毎回飲みすぎるのよ」
「ああ、なるほど。道理で世話の仕方が手慣れていると思った……」
合点がいった様子で、オブシディアさんがぽつりと呟く。
テーブルの上にあったメモを読んだ叔母様が、お兄様の介抱をする様子を眺めていたそう。
叔母様の口振りだとこれが初めてのことじゃなさそうなので、結婚前にこの悪癖を直してもらわなければ。
ちなみにオブシディアさんは、何ともなさそうに朝ご飯を完食していた。
朝食後、お兄様は叔母様に託して私は店を出た。オブシディアさんもそれについてくる。
「リザリア、どこに行くんだ?」
「魔法使いギルドにレストラン、それと花屋と……」
「……行くところ多くないか?」
「この前色んなお店の横を借りて、屋台を開かせていただきましたから。改めてそのお礼に伺いたいと思いまして」
ついでにそこで食事をしたり、商品を買おうかなとも思っている。
例えばお花を飾るだけで、店の雰囲気が明るくなるのだ。
だけどオブシディアさんは呆れたような、困惑したような顔で私を見た。
「お前……ミレーユに言われただろ。今日は休みなんだって。もっと自分の好きなことをすればいいのに」
「これが私のしたいことですし……いえ、違いますね。こういう時、他に何をすればいいのか分からないのです」
孤児院を出てからはずっと働いてばかりだった。だから暇の潰し方がなかなか思いつかない。
「そうなんだな。じゃあ店を繁盛させる以外に、お前の趣味も見付けないと」
「……ちなみにオブシディアさんの趣味は何ですか?」
「俺の? ……遊ぶこと?」
「そ、そうですか……」
あまり参考にならない答えだった。
でもお兄様曰くチェスを少し教えただけで自分より強くなったらしいので、何でもできる……所謂天才肌というものなのかもしれない。
と、そんな話をしているうちに魔法使いギルドに到着した。
パンはミルク風味のスープをたっぷり吸って真っ白……ではなく、淡い黄色に染まっている。
仕上げに刻んだパセリが散らされてお洒落だ。
お兄様にはパン粥のみで、私たちには温野菜のサラダとデザートのゼリーつき。
一応お兄様にもサラダとゼリーを食べられるか聞いたらしいけれど、「無理」という答えが返ってきたらしい。
パンが黄色い謎の正体は南瓜。潰してミルクと混ぜたとのこと。
パンはとっても柔らかくて、優しい味がする。
温野菜サラダもほんのり温かく、濃厚な味わいのドレッシングがよく合う。
「うめぇ……うめぇ……」
お兄様は蒼白い顔でパン粥をゆっくり食べている。
今日一日ずっとこの有様だろう……。
迎えの馬車はお昼近くに来るそうだけれど、それまで様子を見ていたほうがいいかもしれない。
私がそう考えているのを察した叔母様が、苦笑しながら口を開く。
「リザリア。シルヴァンは私が見ておくから、あんたはせっかくの休みなんだし部屋でゆっくりするなり、出かけるなり好きにしていいわよ」
「……大丈夫ですか?」
「とりあえず食べ終わったら寝かせておくわ。もう~、酒に弱いのはお姉ちゃん譲りね」
初めて知るお母様の情報だった。
アルコールには強いと勝手に思い込んでいた。
「しかもすぐに酔っ払って次の日は二日酔いに苦しむのに、懲りずに毎回飲みすぎるのよ」
「ああ、なるほど。道理で世話の仕方が手慣れていると思った……」
合点がいった様子で、オブシディアさんがぽつりと呟く。
テーブルの上にあったメモを読んだ叔母様が、お兄様の介抱をする様子を眺めていたそう。
叔母様の口振りだとこれが初めてのことじゃなさそうなので、結婚前にこの悪癖を直してもらわなければ。
ちなみにオブシディアさんは、何ともなさそうに朝ご飯を完食していた。
朝食後、お兄様は叔母様に託して私は店を出た。オブシディアさんもそれについてくる。
「リザリア、どこに行くんだ?」
「魔法使いギルドにレストラン、それと花屋と……」
「……行くところ多くないか?」
「この前色んなお店の横を借りて、屋台を開かせていただきましたから。改めてそのお礼に伺いたいと思いまして」
ついでにそこで食事をしたり、商品を買おうかなとも思っている。
例えばお花を飾るだけで、店の雰囲気が明るくなるのだ。
だけどオブシディアさんは呆れたような、困惑したような顔で私を見た。
「お前……ミレーユに言われただろ。今日は休みなんだって。もっと自分の好きなことをすればいいのに」
「これが私のしたいことですし……いえ、違いますね。こういう時、他に何をすればいいのか分からないのです」
孤児院を出てからはずっと働いてばかりだった。だから暇の潰し方がなかなか思いつかない。
「そうなんだな。じゃあ店を繁盛させる以外に、お前の趣味も見付けないと」
「……ちなみにオブシディアさんの趣味は何ですか?」
「俺の? ……遊ぶこと?」
「そ、そうですか……」
あまり参考にならない答えだった。
でもお兄様曰くチェスを少し教えただけで自分より強くなったらしいので、何でもできる……所謂天才肌というものなのかもしれない。
と、そんな話をしているうちに魔法使いギルドに到着した。
12
お気に入りに追加
5,283
あなたにおすすめの小説
どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら
風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」
伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。
男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。
それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。
何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。
そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。
学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに!
これで死なずにすむのでは!?
ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ――
あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?
完結した作品の番外編特集
アズやっこ
恋愛
既に完結した作品の番外編をこっそりのせます。
麗しの騎士様の好きな人の番外編は本編で書いているのでこちらには掲載しません。
❈ 設定うんぬんないです。
❈ 時系列バラバラです。
❈ 書きたいように書いてます。
❈ 読みたい作品だけお読み下さい。
❈ 思いつきで書いてます。本編作品の描写を損なう話もあります。
❈ 小話程度なので、この話はこの話として読んで頂けたら嬉しいです。
前世で家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる 俺だけが使える氷魔法で異世界無双
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
家族や恋人もいなく、孤独に過ごしていた俺は、ある日自宅で倒れ、気がつくと異世界転生をしていた。
神からの定番の啓示などもなく、戸惑いながらも優しい家族の元で過ごせたのは良かったが……。
どうやら、食料事情がよくないらしい。
俺自身が美味しいものを食べたいし、大事な家族のために何とかしないと!
そう思ったアレスは、あの手この手を使って行動を開始するのだった。
これは孤独だった者が家族のために奮闘したり、時に冒険に出たり、飯テロしたり、もふもふしたりと……ある意味で好き勝手に生きる物語。
しかし、それが意味するところは……。
短編まとめ
あるのーる
BL
大体10000字前後で完結する話のまとめです。こちらは比較的明るめな話をまとめています。
基本的には1タイトル(題名付き傾向~(完)の付いた話まで)で区切られていますが、同じ系統で別の話があったり続きがあったりもします。その為更新順と並び順が違う場合やあまりに話数が増えたら別作品にまとめなおす可能性があります。よろしくお願いします。
「こんな横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で横取り女の被害に遭ったけど、新しい婚約者が最高すぎた。
古森きり
恋愛
SNSで見かけるいわゆる『女性向けザマア』のマンガを見ながら「こんな典型的な横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で貧乏令嬢になったら典型的な横取り女の被害に遭う。
まあ、婚約者が前世と同じ性別なので無理~と思ってたから別にこのまま独身でいいや~と呑気に思っていた俺だが、新しい婚約者は心が男の俺も惚れちゃう超エリートイケメン。
ああ、俺……この人の子どもなら産みたい、かも。
ノベプラに読み直しナッシング書き溜め中。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ベリカフェ、魔法iらんどに掲載予定。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
いつも余裕そうな先輩をグズグズに啼かせてみたい
作者
BL
2個上の余裕たっぷりの裾野先輩をぐちゃぐちゃに犯したい山井という雄味たっぷり後輩くんの話です。所構わず喘ぎまくってます。
BLなので注意!!
初投稿なので拙いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる