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37.甘い言葉(トール視点)
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アデラをルミノー邸に送り届けてフィリヌ邸に帰ると、『極光の財宝』の従業員が集められていた。
フィリヌ魔導店の職人もきていて、店の不人気の原因を話し合うらしい。
こっそり大広間を見に行くと、どいつもこいつも沈んだ表情をしている。
それなりに客は入っているみたいだったけど、あれだけ大きな店だとかなりの儲けを出さないと、赤字まっしぐらなんだってさ。
父上はイライラが頂点に達しているのか、パイプを吹かしている。
『風の囁き』を使っていないから、廊下にまで煙が流れているじゃないか。
「……ん?」
そういえば、この場に最もいなければならない人物の姿がない。
どこに行ったんだ、ハーライトの奴。店長のあいつがいないのはおかしくない?
そう思っているのは僕だけじゃないみたいで、フィリヌ魔導店の職人が険しい表情をして「ハーライト殿はどちらへ?」って室内を見回しながら質問した。
問いかけに答えたのは、怯えた表情をした『極光の財宝』の従業員。
「ハ、ハーライト様は『自分は悪くない』と言って、どこかへ行ってしまいまして……」
「悪くないだと!? ふざけるな、愚か者めが!!」
父上が声を荒らげながら拳でテーブルを強く叩いた。
その迫力に、その場にいた奴らが驚いている。僕だって怖いよ。
「二週間だ、あと二週間やろう。その間に私が納得のいく結果を出せなければ、『極光の財宝』は潰す!!」
「なっ……お待ちください、侯爵様!」
父上の宣言に、大広間がざわつく。
当然だ。オープンして一月も経たないうちに閉店だなんて、とんでもない横暴だ。
だけど父上は自分の意思を曲げるつもりはないのか、従業員たちを睨んで黙らせた。
「私が、フィリヌ侯爵家が奴と『極光の財宝』のために、どれほどの資金を投じたと思っている? 恩を仇で返すような真似をした報いは受けてもらうぞ!!」
え~? いやいや……ハーライトじゃ売上を回復させることはできないでしょ。
同じ頃に開店したリザリアの店と比較されまくっているし、客だって向こうのほうが断然多い。
でも……待てよ。
『精霊の隠れ家』があれだけ賑わっているのは、黒い魔法使いのおかげっぽい。
僕は急いでハーライトを探し回った。
ハーライトがいたのは庭園の池付近。煙草を吸っているし、足元にも吸い殻が何本も落ちている。
「おいハーライト! 吸殻を捨ててんなよ、ここがどこか分かってんのか!?」
「あぁ!? うるせぇぞ、クソガキ!!」
注意すると、思い切り怒鳴られた上に胸倉を掴まれた。
「ぐぅ……っ!」
「俺は何も悪くねぇ! 普段通り工芸品を作っていたし、雇った職人も中々な腕前の奴らばかりだった! どうせ俺に嫉妬したフィリヌ魔導店の奴らがデマを流してるだけなんだよ! 何が『精霊の隠れ家』だちくしょう……!!」
「で、でも、実際『精霊の隠れ家』にはあんたよりすごい職人がいるっぽいし……」
「うるせぇ!!」
こ、このままじゃ殴られる!
「待てって! 逆を言えば、そいつがいなくなればあの店は終わりだと思わない?」
「そいつが……いなくなれば……?」
「そ、そうだよ。『精霊の隠れ家』が駄目になれば、客もみんな『極光の財宝』に流れてくるよ……!」
自分の店の問題を改善させるんじゃなくて、ライバル店を潰す。
そんな提案をするなんて、プライドを傷つけるようなものだよね。
でも父上の指示であったとしても、リザリアの店から従業員を引き抜いたような奴だ。
こいつなら……と僕が期待していると、ハーライトはニヤリと下品な笑みを浮かべた。
「へ、へへ……いいこと言うじゃねぇか……」
よーし、作戦大成功!
フィリヌ魔導店の職人もきていて、店の不人気の原因を話し合うらしい。
こっそり大広間を見に行くと、どいつもこいつも沈んだ表情をしている。
それなりに客は入っているみたいだったけど、あれだけ大きな店だとかなりの儲けを出さないと、赤字まっしぐらなんだってさ。
父上はイライラが頂点に達しているのか、パイプを吹かしている。
『風の囁き』を使っていないから、廊下にまで煙が流れているじゃないか。
「……ん?」
そういえば、この場に最もいなければならない人物の姿がない。
どこに行ったんだ、ハーライトの奴。店長のあいつがいないのはおかしくない?
そう思っているのは僕だけじゃないみたいで、フィリヌ魔導店の職人が険しい表情をして「ハーライト殿はどちらへ?」って室内を見回しながら質問した。
問いかけに答えたのは、怯えた表情をした『極光の財宝』の従業員。
「ハ、ハーライト様は『自分は悪くない』と言って、どこかへ行ってしまいまして……」
「悪くないだと!? ふざけるな、愚か者めが!!」
父上が声を荒らげながら拳でテーブルを強く叩いた。
その迫力に、その場にいた奴らが驚いている。僕だって怖いよ。
「二週間だ、あと二週間やろう。その間に私が納得のいく結果を出せなければ、『極光の財宝』は潰す!!」
「なっ……お待ちください、侯爵様!」
父上の宣言に、大広間がざわつく。
当然だ。オープンして一月も経たないうちに閉店だなんて、とんでもない横暴だ。
だけど父上は自分の意思を曲げるつもりはないのか、従業員たちを睨んで黙らせた。
「私が、フィリヌ侯爵家が奴と『極光の財宝』のために、どれほどの資金を投じたと思っている? 恩を仇で返すような真似をした報いは受けてもらうぞ!!」
え~? いやいや……ハーライトじゃ売上を回復させることはできないでしょ。
同じ頃に開店したリザリアの店と比較されまくっているし、客だって向こうのほうが断然多い。
でも……待てよ。
『精霊の隠れ家』があれだけ賑わっているのは、黒い魔法使いのおかげっぽい。
僕は急いでハーライトを探し回った。
ハーライトがいたのは庭園の池付近。煙草を吸っているし、足元にも吸い殻が何本も落ちている。
「おいハーライト! 吸殻を捨ててんなよ、ここがどこか分かってんのか!?」
「あぁ!? うるせぇぞ、クソガキ!!」
注意すると、思い切り怒鳴られた上に胸倉を掴まれた。
「ぐぅ……っ!」
「俺は何も悪くねぇ! 普段通り工芸品を作っていたし、雇った職人も中々な腕前の奴らばかりだった! どうせ俺に嫉妬したフィリヌ魔導店の奴らがデマを流してるだけなんだよ! 何が『精霊の隠れ家』だちくしょう……!!」
「で、でも、実際『精霊の隠れ家』にはあんたよりすごい職人がいるっぽいし……」
「うるせぇ!!」
こ、このままじゃ殴られる!
「待てって! 逆を言えば、そいつがいなくなればあの店は終わりだと思わない?」
「そいつが……いなくなれば……?」
「そ、そうだよ。『精霊の隠れ家』が駄目になれば、客もみんな『極光の財宝』に流れてくるよ……!」
自分の店の問題を改善させるんじゃなくて、ライバル店を潰す。
そんな提案をするなんて、プライドを傷つけるようなものだよね。
でも父上の指示であったとしても、リザリアの店から従業員を引き抜いたような奴だ。
こいつなら……と僕が期待していると、ハーライトはニヤリと下品な笑みを浮かべた。
「へ、へへ……いいこと言うじゃねぇか……」
よーし、作戦大成功!
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