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14.懲罰

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「アデーレ院長、朝からシスターメロディを見かけないのです。どこにいるかご存知ないでしょうか?」
「お部屋にもいないんですぅ……」

 いつも一緒にいるアントワネットとクラリスも心配になって、アデーレに尋ねた。
 するとアデーレは眉一つ動かさず、

「いいえ。ですが、もしかするとあなた方を置いて一人脱走したのかとしれません」
「そんな……彼女はそんなことをする方ではありません!」
「そうです! 何を考えているか分からない時もあるけど、とっても優しい人です!」
「何を考えているか分からない時もある? でしたら、彼女の本性を見抜けていなかったかもしれない、ということにもなりますね」

 二人の必死な訴えに対して、アデーレは柔らかな声音で言い切った。
 昨晩のことは誰にも言っていない。アントワネットとクラリスにも。メロディを本気で心配している二人には悪いけれど、彼女は私にだけアデーレの悪事を教えた。きっと、あの子たちを巻き込みたくないからだ。

 それにアデーレがメロディの行方を知らないなんて嘘に決まっている。
 落胆するアントワネットとクラリスに背を向けた時に見えたのだ。あの鞭おばさんの口元が吊り上がっているのを。

 間違いない、メロディ失踪にはアデーレが関わっている。
 私が直接問い質そうと考えていると、

「ん?」

 いつの間にか両脇にいたおばちゃん修道女に肩をがっしりと掴まれて、どこかへ連れて行かれる。
 修道院から数分ほど離れたところでぽつんと佇んでいる物置小屋が見えた。
 ま、まさか。

「アデーレ院長のご命令です。あなたはここにやって来た時に儀式を途中で放棄し、食事の最中に私語を連発していたり問題行動が多いので、暗闇の中で反省していなさい」
「お、お待ちください。反省なら後でしますので、その前にアデーレ院長にお聞きしたいことが……!」
「口答えはよろしい」

 二人がかりで小屋の中に押し込まれて、あっという間に鍵を閉められる。

「開けてください! ちょっと!」
「二日経ったら出してあげます。ああ隅に排泄用のタライがあるので、催した時はそこにどうぞ」

 真っ暗でよく見えないんだが?
 どうにか脱出しようとする私を無視して、二人分の足音が遠ざかっていく。
 その最中に、

「ふう、これで問題児の動きは封じたわね」
「あの泥棒娘だけじゃなくて、あの陰気な娘にまで動かれては困りますものねぇ。二日飲まず食わずで過ごしていたら、噂通りの気弱な性格になるんじゃないかしら?」

 という会話がばっちり聞こえた。
 メロディのことだって気になるのに、こんなところに二日もいられない。

「ええい……!」

 助走をつけてドアに体当たりするけれど、びくともしない。せめて何かものはないかと小屋内を見回しても、本当に隅っこに放置されているタライの他には、天井付近まで積み上がった藁しか……
 いや、おかしい。先程まで真っ暗闇だったのに、どうしてうすぼんやりとでも室内の状況が把握できるんだろう。
 それは、オレンジ色の光に照らされているからだ。そしてその光は、私の真横から──

「リグレット嬢、何故このようなところに?」

 ランタンを持ったレイスが怪訝そうな表情で私に尋ねた。
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