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2.秘密
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少年はむっくりと起き上がり、ベルトに手を掛ける。
「子作り」
「え、…ちょっと、…まだ育てらんないから」
焦りながらも真面目な声がかえってきて、少年は肩を揺らす。冗談なのに。
「ちゃんと持ってるよ」
財布からピンクの輪をちらっと出して見せる。先輩に貰った、のが期限が切れそうになったところで、父がそろそろ持っておけ、と箱ごと渡された。
「意味わかんない」
「男のマナーだからさ、親父が入学祝いにくれたんだ」
「…素敵なお父さんだね」
ぐふっとのどの奥が鳴った。素敵なお父さんなんて初めて言われた。しどろもどろになりながら手渡してくれた父親に、照れくさくて礼は言ってなかったかもしれない。
役にたったよ、有難う、なんて言ったら殴られるかな。
肩を抱き寄せて、頬にキスしながら、膝をさすって、スカートに手を入れる。するりとした布が手の甲にあたり、きもちいい。腿も、汗ばんでいなくて、すべすべ。
男とは違う、やわらかな弾力。
「いきなりそっち?」
「脱いだら汚れるじゃん、それよりいいの?」
暑すぎて、いや、寝不足で頭がおかしかったのだろうか。
自分で言っておいて、何がどう『いいの』か、わからない。
上手い話には裏がある、もうひと押し、合意の確認をしたいのか。
「…よくわかんない」
少女のなかで恋愛はまだ本や映像の向こう側ので世界のもので。
ちょっと気になる男の子ならいた。友達へ向ける好意とはちょっと違ったけれど、○○君だいすき、じゃなくて、○○くんの、そういうとこ、好き。くらいの。恋ともいえないような淡い好意。
付き合いたい、気持ちを伝えたい、そういう段階ではなくて。いつか王子様が、に憧れていても、その対象も見つけられていなかった。それに、えっちなことに興味を抱くのは不潔な気がしてた。
この先のことには興味もなかったのに、
でも、暑いのに、人の体温につつまれてどぎまぎしていた。
「こういうの、考えたこともなかったから」
少年もこういう展開は考えてなかった。ここへ連れてきたのは涼しくて静かだからだ。下心があって誘ったんじゃない。でも、年ごろの男の中身なんてソレだけでできてるようなもん、ちょっとしたきっかけで、すぐにそっちに振られる。半袖から覗いた白い肌にさっきぐらっときたのは確かだけど。
「…それもそうだよな」
やっぱり、よくないよな。お姉さんに誘われたのとはわけが違う。でも、止まれるかな。
意思に反して、手と、身体が勝手に動いていく。手を腰に回して、白いブラウスの上からふくらみの下との段差を確かめる。それから、自分の右手がブラウスを引き出して、その内側に左手が入り込んでいく。
「…ん」
少女も、気をつけてはいた。知らない人に声をかけられても返事をしちゃだめ、男の人と二人きりにならないように。
目の前の相手は、確かに男の子で、だけど、まだ男くささのない、少女相手に、照れたところもなくて大丈夫だと思ってしまった。
何度か人伝に好意を伝えられて、卒業間際には告白もされた。それをすぐ上の姉に何気なしに話したら、とりあえず付きあってみたらと適当なことを言われ、更に、男に期待をもたせるような態度だったんだろう、と母に注意された。誰にも分け隔てなく優しくって言ったのは母なのに。
ちゃんと断ったし、友達にも誰からとは言わずに話したら、無理目だから卒業式だったんだよ、気持ちだけでよかったんだから気にすることないよ、と返ってきた。二番目の姉も友達と同じように、言ってくれた。でも、みんなと同じ態度なだけで誤解しちゃう男の子もいるから、気をつけて、と。
まだ、ヒトから好意を持たれる肯定感のほうが強い、そんな年ごろ。
興味のない相手から好意を向けられて嫌悪感を抱いたことのある姉は可愛い妹にそう、付け足した。
「いいよ、ちゃんとそういうの用意してあるなら。別のクラスだし、同じクラスだと休み明けに気まずいけれど」
「わけかわらん、来年同じクラスになったらどうすんの」
「それはそれで」
少し恥ずかしそうに顔を背けたしぐさが急にかわいく思えて、覗きこむようにキスをした。
もっと自分を大事に。こんなところじゃ嫌だよね、と言って自分の腰抜けを相手のせいにはしなかった。チャンスは無駄にしない。
少年は少年で、女の子もおなじように 欲望があるとおもってしまっていたし、
少女は少女で、男の人はともかく、男の子が年がら年中そんなことを考えてるなんて、知らなかった。
「あ、彼女は?」
「いない、そっちは?」
「私も」
お互い周囲に異性がいたことを思いだし、尋ねる。あのなかにいなくても、異性慣れしているのは彼氏彼女がいたりするから。
例え嘘でも、言い訳の材料は揃った。
これはいけないこと、なんだろう。小学生のころ、三番目のお姉ちゃんが男の人と裸でいたのを見てしまった。何をしていたのは知らなかったけれど、だれにも言っちゃいけないことだと幼ごころに思った。
きっと、これもいけないこと。だからちょっと、してみたくなる。
それに、だれにも迷惑をかけてない。
「子作り」
「え、…ちょっと、…まだ育てらんないから」
焦りながらも真面目な声がかえってきて、少年は肩を揺らす。冗談なのに。
「ちゃんと持ってるよ」
財布からピンクの輪をちらっと出して見せる。先輩に貰った、のが期限が切れそうになったところで、父がそろそろ持っておけ、と箱ごと渡された。
「意味わかんない」
「男のマナーだからさ、親父が入学祝いにくれたんだ」
「…素敵なお父さんだね」
ぐふっとのどの奥が鳴った。素敵なお父さんなんて初めて言われた。しどろもどろになりながら手渡してくれた父親に、照れくさくて礼は言ってなかったかもしれない。
役にたったよ、有難う、なんて言ったら殴られるかな。
肩を抱き寄せて、頬にキスしながら、膝をさすって、スカートに手を入れる。するりとした布が手の甲にあたり、きもちいい。腿も、汗ばんでいなくて、すべすべ。
男とは違う、やわらかな弾力。
「いきなりそっち?」
「脱いだら汚れるじゃん、それよりいいの?」
暑すぎて、いや、寝不足で頭がおかしかったのだろうか。
自分で言っておいて、何がどう『いいの』か、わからない。
上手い話には裏がある、もうひと押し、合意の確認をしたいのか。
「…よくわかんない」
少女のなかで恋愛はまだ本や映像の向こう側ので世界のもので。
ちょっと気になる男の子ならいた。友達へ向ける好意とはちょっと違ったけれど、○○君だいすき、じゃなくて、○○くんの、そういうとこ、好き。くらいの。恋ともいえないような淡い好意。
付き合いたい、気持ちを伝えたい、そういう段階ではなくて。いつか王子様が、に憧れていても、その対象も見つけられていなかった。それに、えっちなことに興味を抱くのは不潔な気がしてた。
この先のことには興味もなかったのに、
でも、暑いのに、人の体温につつまれてどぎまぎしていた。
「こういうの、考えたこともなかったから」
少年もこういう展開は考えてなかった。ここへ連れてきたのは涼しくて静かだからだ。下心があって誘ったんじゃない。でも、年ごろの男の中身なんてソレだけでできてるようなもん、ちょっとしたきっかけで、すぐにそっちに振られる。半袖から覗いた白い肌にさっきぐらっときたのは確かだけど。
「…それもそうだよな」
やっぱり、よくないよな。お姉さんに誘われたのとはわけが違う。でも、止まれるかな。
意思に反して、手と、身体が勝手に動いていく。手を腰に回して、白いブラウスの上からふくらみの下との段差を確かめる。それから、自分の右手がブラウスを引き出して、その内側に左手が入り込んでいく。
「…ん」
少女も、気をつけてはいた。知らない人に声をかけられても返事をしちゃだめ、男の人と二人きりにならないように。
目の前の相手は、確かに男の子で、だけど、まだ男くささのない、少女相手に、照れたところもなくて大丈夫だと思ってしまった。
何度か人伝に好意を伝えられて、卒業間際には告白もされた。それをすぐ上の姉に何気なしに話したら、とりあえず付きあってみたらと適当なことを言われ、更に、男に期待をもたせるような態度だったんだろう、と母に注意された。誰にも分け隔てなく優しくって言ったのは母なのに。
ちゃんと断ったし、友達にも誰からとは言わずに話したら、無理目だから卒業式だったんだよ、気持ちだけでよかったんだから気にすることないよ、と返ってきた。二番目の姉も友達と同じように、言ってくれた。でも、みんなと同じ態度なだけで誤解しちゃう男の子もいるから、気をつけて、と。
まだ、ヒトから好意を持たれる肯定感のほうが強い、そんな年ごろ。
興味のない相手から好意を向けられて嫌悪感を抱いたことのある姉は可愛い妹にそう、付け足した。
「いいよ、ちゃんとそういうの用意してあるなら。別のクラスだし、同じクラスだと休み明けに気まずいけれど」
「わけかわらん、来年同じクラスになったらどうすんの」
「それはそれで」
少し恥ずかしそうに顔を背けたしぐさが急にかわいく思えて、覗きこむようにキスをした。
もっと自分を大事に。こんなところじゃ嫌だよね、と言って自分の腰抜けを相手のせいにはしなかった。チャンスは無駄にしない。
少年は少年で、女の子もおなじように 欲望があるとおもってしまっていたし、
少女は少女で、男の人はともかく、男の子が年がら年中そんなことを考えてるなんて、知らなかった。
「あ、彼女は?」
「いない、そっちは?」
「私も」
お互い周囲に異性がいたことを思いだし、尋ねる。あのなかにいなくても、異性慣れしているのは彼氏彼女がいたりするから。
例え嘘でも、言い訳の材料は揃った。
これはいけないこと、なんだろう。小学生のころ、三番目のお姉ちゃんが男の人と裸でいたのを見てしまった。何をしていたのは知らなかったけれど、だれにも言っちゃいけないことだと幼ごころに思った。
きっと、これもいけないこと。だからちょっと、してみたくなる。
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