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特攻の兆候

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 原典の白雪姫のような光景だった。

「リエル、サイ」

 暗闇の中で、死人のように青白くなった白髪の少女に何度も何度も口をあわせる。そのたびに、少女の右手を握る左手に力がこみ上げる。のぞき見た兵士達からは、死体を愛して居るようだと密かに言われるほどには……。絵になっている。

「リエル様のお加減をカペルが見てるようだが、なんで医者に」

「それがな、医者を送ってもかたくなにカペルがみせようとしないんだ。医者じゃどうにでも出来ないって」

「なら、カペルの坊ちゃんだったらできるっていうのか?」

「知らねぇよ」

 外では、お通夜のように湿っぽい雰囲気の兵士達。数日前までは、どんちゃん騒ぎしていたのに。リエルが倒れたと言う報告一つでこんなにも静かになってしまった。呆れたコックやら店の雇われ女将が、文発して肉を出したりなど、気遣ってくれてはいるが。兵士達の顔は暗いままだ。

「口止め食らってるけどさ、リエル様が凄い青白い顔になってたんだよ。まさか死ぬんじゃ」

 口に皺のよった中年の女将が言う。それに続いて、髪の短い男のように粗暴な手つきでお玉を振る女が言った。

「医者がダメなら呪いかも知れない」

「やだよ。リエル様のお陰で安月給と、雇用が安定したのに……逆戻りなんて」

「なら祈るしかねぇな」

 店の女将達やコックは口々に情報交換を始める。プロとだけあって手は一切休めずに野菜と肉を炒め続けた。恐ろしいほどに大きい不安は従業員と兵士に伝わる。今この時にも、自分たちの希望が潰えるんじゃないかという不安と恐怖で、みなみな、恐怖に顔を青ざめさせる。

その間にも……。


「はぁ……はぁ……」

「融合したら、バットエンドの後だっけ? それを取り戻すんだよね、はぁ……。それを、目指して頑張って……」

 互いに意識朦朧とした中でも、剣を振り続ける。変わらぬ相手だけはしっかり見える面妖な暗闇の中。キンキンと鳴る金属の音とお互いの疲労での荒い呼吸音が聞こえる。

交わるように、お互いの呼吸が合わさり。

何時しか同じ動作で打ち合うようになった。

下を切れば相手も同じ動作を行う。

上を切れば相手も鏡のように同じ動作を行う。

反発、離反、交わり、一つに、互いを貫く。



 互いを貫いた剣が互いの血を交わらせる。何故かすがすがしい気分……何故かとても嬉しくて。早朝に幻想的な霧を見たようなすがすがしさ。身長差はあれど互いの身体を抱きしめて……私達は交わった。





「リエル、サイ」

「うーん身体の主導権は私みたいね」

【だって、革命軍倒すのめんどくちゃいから、おねーちゃんパース】

 何が面倒くさいだ!っとツッコミそうになるけど、心配そうな顔でこちらを見続けるカペルを見てすぐにそんな考えは霧散した。目を潤ませて居るカペルに以前と変わらずにリエルと呼ぶように言うと。ぎゅーっと抱きしめられた。

「あれから4日眠り続けてました……よかったです。目が覚めて」

「うん、ごめんね」

 震えるカペルの身体。抱きしめられて、こうして心配してくれる人がいてくれて。私はとても、とっても嬉しい。相手は泣いているのに、嬉しくて思わず笑ってしまうほどに。やがて、我慢できなくてクスクスと声を上げると。カペルが身体を離して口を開けて、ジーッと睨んできた。

「酷いです!」

「ごめん、ごめん、可愛くて」

 勢いのままヨシヨシとカペルを撫でると、腕を掴まれてキスをされた。ぶちゅ~なんて下品な効果音が付きそうなほどに。歯の内側から舌の裏までぺろぺろ蹂躙された。

「は、はぁ」

カプリッ

 やっと口を離されたと思ったら、首元に噛みつかれた。カペルは大人しいのにこういうことになると、大分猛獣になる素質があるんだな~と。他人事にように思いながら……。カペルの気が済むまで、思う存分……。そこはご想像ください。ただ、安心してください。今回はヴァージンは守り抜きました。




 現在は、アンドールの城の中。あれだけ無駄に絢爛だった装飾品は無くなり。ほどほどに装飾された城になっていた。アンドールは城の外の装飾品でさえ宝石を阿呆ほど付けていたから、それがなくなるだけでも相当国に良い。中も無駄な装飾がなくなり、シンプルに品のある仕上がりとなっていた。私もリエルもカペルも呆気に取られながら、歩みを進めた。

 そのまま歩いて行けば、貴族服を纏ったグランド君が国王の謁見の場で出迎えてくれた。

「よ! リエル様具合よくなったよかったな」

 ニヤニヤしながら、バスバス私とカペルの肩をバンバン叩きながら、あれよあれよという間に、私はイスに座らせられ、カペルはその横に控えさせられていた。

「あーどーもー。統治補助ご苦労様」

 そうそう、なんで個々に居るかというと。その後にすぐに【あぁ、体調が治ったのならすぐにアンドールに向かってください】っと、レミリスにブラック発現されて、渋々兵士数名だけつれて来てみれば(残りの兵士は国境防衛に残って貰って居る)グランド君が統治していた。アンドールに入れば、石の100や200は投げられるだろうななんて思って居たのに。

「リエル様! バンザーイ」

「恩を忘れた蛮族……」

「貴族の時代は終わりだぁぁぁ!」

 エヴァ王国と変わらず、市民からは人気が高いけど。一部貴族からは親の敵とばかりに怨まれている。やかましい【不労所得】なんていうシステムがあるから、貧富の差が埋まらないんだ。貴族だろうがなんだろうが働け。そう、ふんぞり返っての今だ。回想そこそこに、グランド君に現在の状況を聞いてみると。

「革命軍がなりふり構わず、捨て身の攻撃に出始めた。次の戦争はタダじゃ……すまない」

 ニヤニヤを消して無表情で、グランドはそう言った。真剣な眼差しにカペルも私も……その中のリエルちゃんも気が引き締められる。捨て身……。

(まさか、異世界に来て神風特攻のような攻撃を受ける側になるとは……)



ー小話【リエルちゃん】ー

「高いたかーい」

「わー次は肩車! ねーねーお絵かきもしたい!」

 
 出発の前に、リエルちゃんがカペルと遊びたいと言っていたので、身体を明け渡してみました。なんか、意識はあるけど、身体が勝手に動くような感じで、微妙になれないけど。中々に面白い経験だ。リエルちゃんは、カペルに向かって両手を突き上げたり。思う存分子供らしい遊びをしていたんだ。


「まさか、リエル様熱で幼児退行」

「そこまで、ストレスを……」


 宿のお庭で遊ばして貰ってるから、大分周りの目が痛いけどいいでしょう。いい……でしょう。


「わ~。これなんですか?」

「これねー。クッキー」

「うまくかけてますよ~」

 こうして見ると、カペルが見る目は本当の兄のようだった。リエルちゃんが悪戯半分カペルにちゅーしようとしたら、カペルはするりと躱す。試しに身体を交代させてから、カペルに不意打ちでキスをしてみたら、難なく受け止めて。にへら~と破顔した。これなら、と思ってリエルちゃんとまた身体を交代してキスしてみて貰うと、カペルは避けた。

「ちゃんと、リエルとサイの見分けは僕は付いているんですから無駄ですよ!」

 悪戯する悪い子は高い高い! といいながら、身体を持ち上げるカペル。その笑みが中々に顔を行かしたつやつやしい笑みだったので、私自身はドクリと泡立つ。身体の主導権が私にあったのならば、今頃お顔は真っ赤になっていたであろう。


「あー。リエルおねぇちゃん凄く照れてるよ」

 ちょっと!?

「本当ですか!」

 ねぇ?

「それでねぇ、実は最初の頃に子供の膀胱?の要領に油断してお兄ちゃん……」

そのときの私の気持ちを代弁して今語らなくて宜しい!?

 
 もうやめてくれ~!!!

結論 リエル・メーカー・アンドールは悪戯好き 
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