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灰燼の胎児

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「本当にいいのか? 本当に?」

 最後まで、私はリエル様に…アンドール襲撃の可能性を伝えずに送り出した。目の前の親友が痛々しそうに私を見つめている。それを一別し、ペンを置いて、立ち上がり。窓の前まで歩いて、憎たらしいほど綺麗に晴れている城の景色を見て答えた。

「いいさ。これで、リエル様とカペルリットの団結力と絆が深まるだろう…同じ母が敵という…どうしようもない結末でな」

「後押ししてどうするんだ…全く」

「押そうが何しようがどうにもならないならば、追い風になろうというと思っただけだ」

「随分荒々しい追い風だな…」

 親友が顔を歪めて訝しげに、こちらを睨んでくる。私は再度一瞥して窓に顔を向けた。

 今回は、わざとアンドール襲撃を伝えずに死地へと五人を送り出した。嫌がらせでも復讐でもない…。リエル様とサイ様とカペルリットの中の敵を、明確に認識させるためだ。それと、危機的状況のさいに、二人の精神の強さを確かめるため。

 この先は私を含め誰でも死ぬ可能性のある戦争に突入する。

 思いも心も全てを吹き飛ばす戦争の幕開け。目をつぶれば、未だに心に燻るこの恋情と呼ばれる物だろうと、戦争を前にして命と共に散るだろう。

 サイ様やカペルリットが覚悟するように、私も覚悟して五人を送り出した。生きると信じて…。サイ様へのこの想いが叶わずに散るならば、嫌われても嫌悪されようとも…二人の未来への最善を尽くそう。

 全てを私の責任で、命である情報を使い…最善を。

(相手の気持ちを蔑ろにしろにして…最善を選ぶのだから。私は最初から、人を好く権利などないかもしれないな)

「これから、幾らでも死人は出来るのだから、身内一人死なれた程度で使い物にならなくなっては困るからな……。ちょっとした予行練習だ。グランド、出る」

 添えて忌々しい程に太陽が気を大きくしたような良い天気。その天気をふっと顔を逸らして見れば、部屋が一段と薄暗く見えた。どうやら、少し外を見すぎたらしい。暗い部屋に暗い顔をするグランドに一言だけ呟いて、グランドの横を通り過ぎた……瞬間に一言。

「難儀なやつだよ。お前は」

 困ったように笑って親友は、俺の後ろに遅れて付いてきた。

 愛して居るから、自分の傍に居ても幸せになれないと理解していて遠ざけようと思えば。そんなの関係ない、他をたたき伏せても幸せにしてみせる……だから傍に居たい。遠ざけたいのか、一緒に居たいのか自分でもわからない……結局の所な。

 嫌われても良いけど、嫌われたくない、その二つの相反する気持ちを……本当にどうしてくれようか。

 なぜ、私はこの二者択一だけ切り捨てられないのだろうな……。





【贖うは太古の祖の対となる大炎 灰に息づく幼子はその身を灰燼と帰して 我が身を食らわんとす】

「この声ガバン!」

【大地を食らい染め抜く焔の脈動は愛しく空を乞う その身を綻ばせ戦火の花と散り舞い上がれ】

「すぐに向かいましょう。ヌファンさんは消耗が激しいので、僕が先行します!」

 ガバンの豪快な詠唱が、用水路の当たりを一帯を轟かせる。反響して位置が把握しずらいが、僅かにエルフの血を引くカペル君が、位置を特定した。その間にも長くも野太い詠唱と、その間に聞こえるレドビスの剣を振る音と、コールの独特の鳴き声が、当たりを満たしてゆく。くらりと、音酔いなのか頭痛がしたが気合いで持ち直して、一つの曲がり道を曲がると、そこに二人は居た。

【やがて 舞う幼子の灰燼の焔は対へと帰るだろう これこそが循環 我こそが自然の歯車なり】

「レドビス! ガバン!」

 何か本に淡い光を纏わせるガバンと、レドビスの身体はボロボロだった。そりゃ、私達よりはマシだけど……それでもこの状況が続けば、確実に死に居たる傷だ。急いで援護しようと剣を握った所で、レドビスがこちらを向いた。その隙にコールが、レドビスの身体を食いちぎらんと噛みつくが、ソレに構わずレドビスは叫んだ。

【狂騒となれ 飛び回れ 踊れ 滅びと不死の舞を 我が身を害する全に火炎の塵の帰す地獄の焔を】

「巻き込まれたくなければ来ないでください!!」

【指先は狂 足先は乱 瞳は写し さぁ 我を見よ 我こそが炎熱なり 我は循環し 胎動して お前の元へ帰ってきたぞ 完全詠唱【灰燼の胎児】プラーミア・ケオ・トランクイッロ】

 確かこの世界だと、静かに燃える炎という意味だ。本の触媒にした魔法だと有名な【灰燼の胎児】という有名な童話を詠唱にしたバージョンだ。

 全てを産む水は、自身の対となる炎を生み出してしまった。それを恐れた水が我が身の力を制御仕切れずに、自壊する対の子を、見放して最後まで燃え尽きたのを確認して、幼子の灰を飲み込んだ。

 だが、幼子は灰という形で生きていて、長い年月を掛けて蒸発して天へと昇りそして雨となってまた水になるという循環を繰り返し、少しずつ自分を再生させた。

 やがて復活した幼子は、今度は見捨てた全ての祖である水を燃やして、蒸発させ、自分と同じように天と地を行き来する循環を今度は水にやらせることで復讐した。

 そうして、水と火は互いに相容れずに喧嘩を今もいままで続けて居る。だから、世界に雨が降るんだ。そんな童話だ。

 教訓は【嫌いな人とは無理に仲良くしなくていいよ。火や水がわかり合えないように、無理しても絶対わかり合えない時はわかりあえないから】って意味のこの世界のシンデレラ並に知名度のある童話だ。

 そんな童話を元にした詠唱の詠唱と魔法名と共に、静かにコールが灰燼に帰して消えた。

 辺り一帯には、静寂だけ、あっけなく終わったそれをパチクリと見て居ると。私達の怪我を見てレドビスとガバンが飛んできた。

「リエル様 ヌファン様 カペルリット ソーラ様!」

「俺、荷物持ちますから速く出ましょう! 破傷風だだだだあだ、でででましょう」

「ギャーガバン天井にぶつか」

「我が君ィ!!」

「落ち着きなさい!」

 飛んできたガバンが私を持ち上げて、危うく顔面を天井にぶつける所だった。レドビスは駆け寄って怪我をみようとしてくれたけど……。凄く顔を赤くして俯いて居る。そう、豪快に持ち上げられたから、多分レドビスと……カペル君もか、私のオパンティーがあら丸見えになってしまっている。忘れてたけど、私一応社交用のドレス着てたからね。

「とりあえず。このままでましょ?」

「ええ、そうしよう。ガバン怖いから降ろして」

「すんません」

 しょぼくれたガバンを撫でて慰めながら降ろして貰った。私も結構ボロボロなようで、よろめくとすかさずカペル君が支えてくれた。未だに私のパンツ大公開で、お顔が真っ赤っかだけど「ありがとう」と笑うと余計に「だ、お、どういたしまして」っとさらに真っ赤にして俯いた。

「ソレではこのレドビスが先行いたしましょう。皆さんは後ろで」

「じゃあ、その次は私いきますねー」

 それぞれ、いつ奇襲が来ても良いように陣形を

1レドビス

2ソーラ

3私

4カペル君

5ガバン

6ヌファン

 この並びで、進むこととなった。ゲームおなじみのボスとか追い打ちの敵の待ち構えとか無い事を祈りながら、一道は進んだ。


ー【小話】女性至上主義ー

 やあ、俺はマーベラスほにゃららー。女性がいないと動く気も働く気も無い男だ。俺は、愛妻家の騎士団長に育てられて歪な形でソレが遺伝したとか、しないとか言われるが……。

「お前みたいな肉だるま見てたらそりゃ、女の子バンザーイ! だけど、命の方が一応だいじーになるわそりゃああああああ!!!」

「やかましいわ! たわけッッ!!」

 俺は弾ける前は、親以外全て、男 男 男 で構成されいたから……初めてふれたグレンちゃんで目覚めたんだ……。フられたけど。








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