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宣戦布告

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「悪辣な政治で国民を縛ることを改心するならば、我々は手を付けぬ」

「お断りします。悪辣? 法の整備を進め失職したものの支援を惜しまず行い、新たな労働を獲得した上での生産と国力向上を見てそうおっしゃいますか?」

「その発展に幾度の見えぬ犠牲が払われているのか……今に暴いて進ぜよう。交渉は決裂……我々はアンドールの傘下に入った国全域に戦争を申し込む……。宣戦布告だ!!!」

 見えぬ犠牲だったら、私の子供時代は、全て政治と国の運営に捧げたんですがそれは? なんて言うことは出来ずに、目の前できゃんきゃきゃ吠える使いの男を見る。ここ7年で革命軍は勢力を伸ばし、ワジェライだけでなくカラデア及び、他の小国も飲み込んだ。ある程度戦力が整ったと踏んだこいつらは……。ほらみたことか、すぐに戦争申し込んでくれちゃってマー!

 こめかみが数度ヒクヒク動くけど、どうにかとどめ、玉座から降りて目の前の使いの前へと来て、そいつの胸ぐらを掴んで引きずった。

「やめろ、なにをする!」

「国王自ら追い出してあげるんだから、有り難く思え! なんて言うつもりはないけど、一応もう敵のあなたに私の大事な国民を使いたくないから、私自ら追い出すだけよ」

「何を、この蛮族女王! はなせー!! へぷ!」

 蛮族と言った使いの人は、どこからともなく投げられた物体に顔をぶつけられて、なさけない声を出した。貴族には評判悪いけど、私は一応だけど、労働者には評判いいからそりゃいかんよ……。と、心の中で毒づいては階段に差し掛かったら、使いの野郎をご丁寧に、お姫様だっこしてやってからまた引きずった。

 見た目は細身だけど、しっかり筋肉ついているから成人男性くらいなら、綺麗なドレス着たまま持ち上げられるようになった。現に

「はなぁぁぁぁせぇぇぇぇぇぇ!」

 成人男性に暴れられても痛くないし、仮に蹴られても魔法障壁でなんなく防御できるしってね。大真面目に戦争でも一人生き残れるように……訓練されたんだよ。女王なのに山に投げ出され、岩を背中に乗せて走らされ……。ついでに下着泥棒常習犯に進化したマーベラストうんちゃらさっさー? 君を退け……本当にあいつ怖い。だってこの前だって……。

コンコン

「何この夜中に窓ぉー」

 この前の夜に、また暗殺者でも入ったかと、愛剣を携えて音のする方向へ向かった。音のするのが私のお風呂場方向だったから、そこの脱衣所に行ってみると……パンツを握りしめるマーベラストが……。

「やあ師匠! よいパンツですね。では俺はこれで」

「ちょっとまてやゴラァ」

 コイツが下着求めて侵入するお陰で、城の防犯が何度も見直されては強固な物になっていく……。それを易々と破るマーベラスト……恐ろしいことに、この変態行動が城の防犯に役立ってるのがなんとも言えない。


「おい、はな、なんだその顔は」

「いや、夜な夜なはいってくる下着泥棒の事を思い出して」

「た、大変だな」

 
 馬鹿弟子を思い出しながらも、何故か使いの人と世間話をしながら引きずって城の外へソフトにおかえり頂いた。こんな調子でよくわからんうちに、女にあるまじき強さを手に入れてしまったのです……騎士団長とその変態とパトちゃんのお陰で。澄み渡る綺麗な空の下で、城の門で追い返した使い君が見えなくなるまで手を振った所で、城に戻ってこれからの対策を練らないといけない。

 今回の宣戦布告を受けたら、私は一回アンドールへと戻らないといけないからだ。一応はアンドールの傘下として管理している、まぁ雇われ大家みたいな感じだから、戦争となると私の独断では【今は】できないのよ……のちのち、後ろからぶっすり刺してやるから、敵城視察な感じで行ってくるけど。そんなことを考えて急いで執務室に戻る。もはや会議室よりも執務室に行った方が皆に会えるから早いと思って向かったら案の定そこに皆居た。

「リエル様ぁ、おかえりなさぁい。みんなあつまってまーす」

「我が君こちらへ」

 いつからだろうか、カペル君が顔をちょっぴり赤くしながらエスコートしてくれるようになったのは。皆誰も文句言わずに温かい目で私達を見ながら、執務室の私のイスに座る。

「それでは「遅くなりました!」ヌファン! あれ、まだ休み残ってた筈だよ?」

「いえ、このヌファンがこのような大事な日を逃すのはずがありません。団らんは済ませました」

 そう言って、皺が目立つ顔で幾分か柔らかくなった表情でヌファンは笑った。それを了承して、私はそのまま多々住まいを正し皆に向き直った。

カペルリット レミリス グランド ナザルカラク レドビス パトちゃん ソーラ ヌファン ガルベラスト ディザスター

 マーうんちゃらの馬鹿弟子と仲良し司書の三人組のカレット ヴェネス ガバン 全員揃った。ぶっちゃけ7年もかけて、見つけられた信用できる人材はたったのこれだけだ。たったのこれだけ……大切な信頼できる仲間を見回せば、皆私を見て言葉を待っていた。私は大きな深呼吸をして強く前を向いた。

「革命軍から宣戦布告を受理しました。これよりアンドールの傘下の雇われ国王である私は一度アンドールに向かいます。お呼びに今回の同行者を5人選びます。選ばれなかった方はそれぞれ動きは任せます。どうか、私が居ない間に城を守って下さい……それでは、言います」

一人目 カペルリット

二人目 ヌファン

三人目 ソーラ

四人目 ガバン

五人目 レドビス

 おなじみの4人の中で一人珍しいガバンを入れた。その目的はアンドール内部の図書館の散策だ。アンドールは中央で大国とだけあって情報が素晴らしいので、あったら模写して持って帰ってからこっちで新しい本にするというセコいことをするため。タダでは絶対私はいかない、何が何でも持って帰る。そう意気込んだのだ。選ばれなかった数人は残念そうにしながらも、城を守るのは自分たちの義務であると持ち直した。そうして私の前に躍り出たレミリスは腰を折って礼をした……本当にドワーフ族なのに縦にデカくなったなーと思いつつ顔が上がる様を見てみれば、変わらぬ道化顔で笑った。

「城の事でしたら私にお任せ下さいませ。それと、行く前のご忠告申し上げましょう。アンドールはこちらと違い防犯は余り出来ない故に、革命軍の刺客が何人か潜伏しています。油断無きようお願いします。それとこれを」

 そう言って私の元へと来たレミリスは、ガシガシと最初の頃よりはミミズ一個分マシになったナデナデテクで頭を撫でながら、するりと私の手元に紙を忍ばせた。そうして、レミリスは私の耳元まで唇を寄せた。

「私とサイ様が初めて会った王族専用の庭に、庭師用の用水路があります。そこは監視も居ないので有事の際にはお使いください。ただ、迷ったら二度と出られぬほどに入り組んでおります。このメモを無くされぬように」

 そうして、私の手に小さなメモを握らせて離れた。チラリとカペル君を見るとむっとしながら恨みがましそうにレミリスを見て、レミリスはレミリスで面白そうにカペルリットに挑戦的で勝ち気な笑みを向けて居た。なんか、私が言うのもなんだけど、レミリスの方が妹を守る為に牽制する兄みたいで、カペル君が婚約者みたいだなぁーって思った。

 実際はカペル君がお兄ちゃんなんだけど……世の中って良い具合に噛み合わない。そう思いながら二人を苦笑いして見た。そして、私はそのメモをポケットにしまって。手を数度叩いて皆の視線を集めた。

「じゃあ、そういうことで私はアンドールに向かうから、付いてく人も残る人も同じように力を貸して下さいって名分けで、明日からすぐに私は出発するから、今日はかいさーん!」

 そう、宣戦布告されたらすぐに来いって言われたんだよ。あの馬鹿色欲変態に……あぁ、忙しい。


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