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破骨の記憶と血染の記憶

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 私たちは、クロージス様と共にあり…そして敗れたレン・マーヤンの子供だ。妖精族の普通の女性と結婚して双子として生まれて…そして、その手を血に染めた双子。

「その長棍は叩けば中身を振動させる特殊な魔力を纏った魔武器なんだよ。そーだねぇ…わかりやすく言うなら叩けばこのように内側から対象が破壊される」

 私たちがまだ冒険者となっていなかった頃…まだ父が職人として現役だった頃に、私とソーラは武器を与えられた。最初で最後の父の武器…その説明をしてくれる庭は太陽が照っていて…余計に最後という言葉が重くのしかかった。父が捕まえた野生動物を殺して使い方の説明を聞きながらも世界を美しく太陽が照らしてくる。内側から破壊されたハウンドの目が飛び出る様もくっきりと太陽の下で見えた。

 普通ならば怖いと思うのが正しい人間だと理解しています。けど……私は。

「心地いい…」

 内側からひっくり返るように折れて絶命する音が心地よく感じた。何気なくつぶやいた言葉に、心を痛めるように父は目を細めた。私たちが異常なのは知れている。知っているその異常さを許容できなくとも否定しない父が…私は大好でした。悲しみを含む目を見ながら……武器を受け取り、私は昔の思い出を手繰り寄せた。



 最初の異常の始まりはいじめだったと思う……私は人間だからもの心付く前の妖精族の子供たちにいじめられ続けた。

「おら、平坦顔の人間、くやしかったら捕ってみろーやーい!」

「やめなさい! それはソーラの…」

「お前が産まれてここにいるからその大事なソーラちゃんの持ち物が踏まれてんだろ、おや、産まれてごめんなさい? だろ? いってみろー!」

「う、うあああああああああああ!!!」

「やべ、切れた」

 私自身が虐められるならいい、けどいじめはそれにとどまらずに。ソーラを介していじめが行われるようになってから、私は感情の制御ができずに激高して自分の体が死ぬ寸前になるまで相手を追い詰めて反撃するようになった。そんなことを繰り返してたら、強くなるのは必須で…いつの間にか私は大人にも負けないほどに強くなった。いじめは止んだ。その代わり得たのは他者の迫害だった。やり返してもやり返さなくても、私はいじめられるのだと何度も自身を嘲笑して……村から出るために冒険者を目指した。

「いいか、棍はトリッキーなことが売りなんだから、絶対に軌道を読ませちゃだめ」

 それでも冒険者として外にでるのは父が何度も反対をした。危険だ、それなら家族一緒に別の村に引っ越そうと何度も何度も言われては首を振った。このままいればソーラも父も…亡くなった母にも迷惑がかかるそう思っていたから、何度の説得も功を奏した…今日になってやっと私は武器をもらうことができたんだ。

あぁ、そこからは怒涛だった。奇異な私とソーラを認めてくれる素敵な男性にも会えた。結婚もできた…冒険者徴収礼で翼がおられようとも…父と同じように口伝の伝説の傍に立てることを何度も喜んだ。クロージス様口伝のような気高いお心と、それを凌駕する才能と頭脳……絶対に壊させはしない。大好きなクロージス口伝…惜しくも敗れてしまったら歴史を紡いでリエル様に笑っていただくために、私は舞う。

「ば、化け物! なん」

 私を見て化け物の罵る男のあたまを砕いた。水っぽい音と共に私の顔に割った頭の中身の切れ端がぺちんと当たる。鉄臭い匂いがワインのように私を酔わせる。攫われたリエル様を安全なところまですぐに運んだあとに、役立たずな兵士共を置いて洞窟の中を蹂躙していく。

「私は…妖精になることができなかった…ただの人間です」

 化け物と呼ばれればぽつりと、いまだ旦那に慰められていてもぬぐえない傷を零しながら…報復の蹂躙を繰り返した。

 瞼の裏にはカペルリットと仲睦まじい姿で笑うリエル様。兄と慕っていながらも目にちらつく情欲は…ご本人には自覚がなし。けど、そのうち結ばれるでしょう…レミリスではなくカペルリットっと。リエル様がこの騒乱の世の中で笑えるように…私はこの暴力ですべてをねじ伏せましょう。

「さぁ、ほかにはいらっしゃられますか! 私に潰されたい御仁はいらっしゃるか!!!」





私たちは、クロージス様と共にあり…そして敗れたレン・マーヤンの子供なんです。妖精族の普通の女性と結婚して双子として生まれて…そして、その手を血に染めた双子の妹が私なんです。

「なんなんだ! なんなんだよぉぉ!」

「何と言われましても。私は人間になりたかった妖精族…ただの血が好きな妖精さんですよ! 意地でも人間と自称しちゃいますけど」

 答えを差し上げてすぐに対価の命を屠った。男のように野太い声だが性別は女の妖精族を切り裂く。チャクラムで私の周りに花と咲けば、私は自然に笑みが零れる。お父さんのくれた最初で最後のチャクラムを始めて使った日を思い出しながら笑ってあたりを血に染めた。

「おい、なんでそんな人間なんかに」

「人間以前に私のお姉ちゃんなんだよ? 私の、たった一人の」

 最初にチャクラムを使ったのは私とヌファンの冒険の旅立ち前の早朝……幼いころから私を使ってヌファンをいじめていた男の子達を一人一人完璧に惨殺してやりました。醜い嫌いな人でも死ぬ瞬間にきれいに咲かせる花を見て…私はきれいだと思った。嫌いな人でもこんなきれいな花を咲かせてくれるのならば…好きになれるから、私なりの歩み寄りのようなものなんです…殺すのは。

 私は…クロージス口伝が大っ嫌い。お父さんの話してくれる口伝は私にはとても許容できないものだった。だって、血でその人のすばらしさなんて語れない。犯罪者の子は犯罪者なんてものは私は暴論だと思ってしまう自分には、気高い血と称される物語は…合わなかった。だって、私たち双子はまた血によって苦しめられてきたのだから。

 私とヌファンは双子なんだけど…ヌファンは人間で私は妖精と混ざり合うことなく、産まれてしまった。ヌファンは必ず私を置いて逝く。だから、せめてこんな狭い世界で一緒にいるよりも冒険をして濃く一緒に過ごそうとしたの。

 結果…私は大嫌いな口伝に翻弄される主のもとで働くことになった。うれしかった、必死に血筋の決めつけ…偏見にあらがうリエル様を支えるのが。血やその人の子供だからという決めつけの殻を破って進むリエル様が私は大好きなんです。だから、私は舞います。

 瞼の裏には、レミリス様と仲睦まじい姿をして笑いあう姿。残念ながらリエル様は恋情をレミリス様に抱ききれないようですけど…兄と慕うカペル君よりも、レミリス様のほうが兄として気安く冗談を言い合っていて見てて微笑ましい。レミリス様と結ばれても結ばれなくても、笑っていてくれるのならこのソーラ…頑張ります。

「ばけもの」

「化け物だなんてひどいですよ~!」

 ひどいと言いながらおびえる男の顔面を何度も踏みしめる。あぁ、いじめっ子の顔を踏みつけるときの感触に似ていて…とても懐かしく思っちゃいます。

 ヌファンの家族もリエル様もその仲間も…私は守りたい。大嫌いなクロージス口伝のようにリエル様を散らせはしない。リエル様こそ…アンドールを救い世界の情勢を真に正し統治するお方なんです。

「だから、貴方のような人が踏みいじってはいけないんですよ。
血が何ですか? 伝説? 口伝? そうしてリエル様を…あの小さな背中でそんな呪詛を背負わせる思考停止した貴方達なんかが…触れていい人じゃないんです。わかったら、死んでください」

 リエル様…私もヌファンも舞います。だから、世界を助けてください。無駄に力をもって手を付けられなくなったアンドールを打ち滅ぼして新たな女王と国王を……。





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