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お釣りは馬鹿一つと道化一つ

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「足音が消せて居ないですぞ! リエル様ぁ!!!」

【障壁】

 そりゃそうだ。足音消す魔法までは展開していなかったのだから。振り下ろされる壁のような剣の間に障壁を張ってから、すぐに後方へと飛んだ。本気でやったら後方に飛ぶ時に足蹴り一つ食らってるだろうから、相当無理な手加減して頂いてるんだな、なんて思った。瞬きの間にすでに体勢を整えた騎士団長が、絶えず緊張感を張り巡らさせて私を見て居る。宣言通りに、子供の私も一つの武人として真摯に接してくれているのだ。
 もとより、騎士団長は貴族出身であるのだが、恵まれた体格より進んで前線へと降り立ち市民に寄り添う評判のいい人だ。心を痛めながらもまっすぐに私を見てくれているのだから、私もそれに答え無ければならない。

「リエル様はこれから前線に立たれるやも知れないと聞いております。確かにリエル様は年齢にそぐわぬ判断力と冷静に状況を見定めるお心を持っております。ですが、やはり女人とあって難しい所があるのはご承知でしょうか?」

「ええ、承知です。中々に戦線に立つ騎士団や魔術団の方々のご負担になるお願いだというのはわかっております。けれど、持つ物を危険だから、難しいからと試さずにしまい込むほうがいけないと私は考えておりますので」

 軽くも大事なもんとうだ。もとより予定では騎士団長にご挨拶をしたさいに真っ先に事の言葉を言われる予定だった。あの馬鹿のせいで剣持ながら言われることとなったけど。

「え、あんな子供が前線に?」

「しかもリエル様だぜ?」

「他の上の重役は一体なんとお考えか」

 周りのギャラリーはそれぞれの不満と恐怖を口にする。あと、他の重役(ナザルカラク)以外の人には全員反対されたけど、ナザルカラクの寝返りをちらつかせて無理矢理黙らせたから、できればそのことについては聞かれないように誤魔化したい所だ。
 周りのざわめきを四方八方から受け手も、私は剣を握って前を向く。正直剣はあの馬鹿道化に習った分しかできない、魔法も同じく。だから、ゲームの知識を今此処で使う事にした。

「リエル様!?」

【聖者の火種道】

 剣で私の前の地面を軽く傷を付けると、地面から走るように火の亀裂が入る。光属性と火属性と土属性の三属性混合上級属性だ。地面を這う火は亀裂を作りながら縦横無尽に地面を焼いてとどまっている。私と騎士団長が決闘している所の地面はあらかた走った所を確認した。【聖者の火種道】は、亀裂の走った場所に魔力を込めれば亀裂から雲に届くまでの炎の膜を張る。

(ドワーフ子ちゃん永遠の18歳ちゃんの攻略の時に出てきた、一番行動ポイントの減りが少ない上級魔法……だけど、結構キツいわこれ。意識が微妙にだけど段々と朦朧としてきた。)

「三属性混合の上級魔法、剣術といい素養がお有りで……女なのが惜しいですな」

「女でも強い人が居るので、(ヌファンとかソーラとかパトちゃんとか)私も見習おうかと思いまして」

 もし、レミリスがドワーフ子ちゃんからこの上級魔法のこと聞いていたら根堀歯堀聞かれるだろうな。騎士団だから絶対関係ないし、今頃仕事に悩殺されている筈だしと思って使ったのだ。私の上級魔法の張り巡らすのを終えたのを確認した騎士団長が壁のような大剣を構え治して、足に力を入れている。体勢は段々と低く前に重心が行くように変えていつでも私の目の前に突進してこれるように見て居た。

「それでは、次はこちらから攻撃させて貰うぞ!!!」

 そうして突っ込んでくる騎士団長さんは速い。魔力の遠隔操作でどうにか火の壁を作って進路を塞いでるけどすぐに抜け道を見つけ出して、着々と私の元へと向かってる。

「右」

「っは」

「ひだり」

「ひだり!!!」

 団長さんが疲れるより先に私の方が疲労してきて、段々と操作がおぼつかなくなってくる。イメージを固める為に苦し紛れに口に出して魔法を込めるが、それも少しキツくなってる。炎の吹き出す音をと天から降り注ぐ僅かな火花で身体が熱い。腕を必死に振って足を動かして翻弄するようにしても、大人と子供。しかも騎士団長とペーペーとの戦いだ。体力と経験ではどっちに勝敗が上がるのはもとより見えていた。

キン

「お手合わせありがとうございました。リエル様」

「ありがとうございました。流石ですね」

 段々と追い詰められて遂には目の前まで来た騎士団長に、苦し紛れにゴボウぶん回してるようなお粗末剣術で迎え撃ったけど、壁のような剣で、剣を真っ二つに切られてあっけなく終わった。けど、果たすことは果たした。もとより誇示が目的でもあるから、上級魔法を使用したのは中々アピールになっただろう。剣術も騎士団長からすればゴボウだけど、一応レミリスに死ぬほどしごかれたから普通くらいにはあるはず。

「普段から鍛錬をなさっていることが窺える素晴らしい、けんじゅ「ギャアアアアアアアア!!! しっしょっーが筋肉髭だるまりんりんに負けたァァァァァァ」

「騎士団長、頭上に二発くらいグーでお願いします」

「承知いたしました」

「え、親父? 何でにじり寄って、ほべらぁぁん!!!」

 ここは、騎士団長が私を褒めてから認める流れで丸くギャラリーも私も丸く収まる流れだったのに、あろうことかこの正統派赤毛美形が台無しにしてくれた。黙ってれば男らしいのに……なんで? 見た目通りにいかな過ぎて色々頭が痛くなってくる中で、騎士団長は私のお願い通りにマーベラス佐藤鈴木だかの息子さんの頭上に一発落としてくれて、晴れて私は騎士団に入り浸ることが決定した。


「んふふ」

「!?」

 なにかゾッとする悪寒が背中に走った。ギャラリーの中でその声の発生源を探ると……。今頃書類で悩殺されている筈のレミリスが、遠くからグランド君を連れて面白そうに目を細めてこちらを見ていた。横のグランド君は両手を合わせて「悪い、引き留めるの無理だった」っと声なく謝罪をしてくれた。一体どこまで見て居たのやら、上級魔法とか見られてないだろうな? なんて恐怖半分にレミリスを見て居たら。もうソレは素敵な素敵な笑顔でニッコリと笑ったあとに。


後 日 お 話 し ま し ょ う か?


(ひぃ~。根堀歯堀聞かれるぅぅぅぅ!!!!)

 口パクでそんなことを言ったのだ。なんでこんだけ離れてわかるんだよと、自分で自分にツッコミを入れながらも愉快と言いたげにニッコリと笑ったまま顔を逸らして城の奥へと消えていった。

「リエル様、これからの戦力状況などのお話などを後日」

「わかりました。今日の見学後に私から見た改善点をピックアップして書類と共にお話しましょう。13時頃で宜しいですか?」

「お時間の事までお気遣いありがとうござます。そのように」

 身分が上だからと言って好き勝手時間をこっちで決めてたら、回るところも回んないだろうに。そう思いつつもこの世界の一応の常識だと飲み込んで騎士団長のお礼を何も言わずに頂いた。ついでに……その端っこで伸びてる息子さんの事もちょっと興味があるし聞いてみようと思った。騎士団長は馬鹿親で戦闘能力を評価を変化させる人物じゃないのは戦ってわかった。あの、戦いの時に【空間転移】を行えるほどの素養と力があると騎士団長は言ったのだ。ソレが本当ならば見逃せない才能だから、アッホーでバッカーでも接触を持って知りたいと思うのは当たり前だ。

(特に私は命狙われすぎて、祝、毒盛られ回数55回目更新したばっかりだし、いろんな方面から末永く守ってくれる人を獲得したい。死にたくないし)

 
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