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規格外って言わないで

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 先んじてこの世界の魔法のことを話しましょう。この世界の中心的な魔法の属性は5つ。その他含めて2つ計7つの属性があります。

 火、水、地、風、木が中心の基本属性で、それ以外の属性は、闇、光の属性……無属性なんてものはゲームにはなかったはずなんですよなかったはず……なんだけれども



 三日の休養を終えて、今度は剣術と護身術の体力作りの基礎を難なくこなして次は魔術で、初日は自身の適正属性をチェックできる水晶を使って自身の属性にあった魔術の練習を軽く行うだけ。私は初日でやらかしてしまったが、今度こそは初日でやらかして堪るか! と意気込みながら水晶に手をかざすとモヤモヤとした白いもやがかかり……そこから色がつくはずなんだけれど、そのもやもやが段々透明に、陽炎みたいにあることはわかるのだけれども透明だ。

「えーっとー。全部の属性に適性がないって、逆のほうに……きーかーくーがーいー。ですねぇ~。けど魔力はありますから、名付けて無属性なんっちゃってー」

 水晶をのぞき込む、パトちゃんの苦笑いが凄く心にズカズカと突き刺さる。横で様子を見てくれるカペルに至っては慰めるように私の頭をグリグリと撫でてくれる始末。思わず自分の顔を顰めてしまう。この身体が規格外だというのは山のてっぺんをハゲにした時点で覚悟はしてたけれど、まさかゲーム外のことにも逸脱してたのは予想外だ。顔をしかめながらため息をつくと、パトちゃんが怯えるようにあたふたし始めたので慌てて顰めた顔を正して笑顔を作る。

「なんちゃってー……。それで、無属性の練習の方は?」

 なんちゃってー……っといって両手を挙げて笑うと、パトちゃんが良かったと柔らかく笑って小さく「処刑されなくて……」っと呟いたのを聞いてしまった。本人は呟いたのに気がついてないのか、いつもの明るくてのんびりとした雰囲気に戻ってゆく。

「ごめんなさいー。私も初めてでして……普通の魔力制御から慎重にやってみましょーかー」

「魔法でしたら、僕も村でやったことありますので一緒に頑張りましょう。我が君」

 パトちゃんは両手を胸の前で握ってぐっとキラリと光る大きな目をもっと大きくさせて笑って任せてください!とカペルはお辞儀をしながら、微笑んでそう言ってくれる。カペルは私が休息している三日でどれだけ勉強をしたのか、大分礼節も言葉遣いもちゃんとして知らぬ間に急成長してて驚いてしまう。
 いつの間にか横流しに一つまとめになった長い翡翠の髪が余計に彼の魅力を引き立てている。思わずじっとカペルを見てしまい、カペルが顔を赤くして「我が君どうかされましたか?」っと聞かれて初めて、見つめていたことを気づくほどに私は目を奪われてたようで慌てて謝罪をしてカペルから目をそらした。

「あらあら……若いっていいですねー」

「パトちゃん、そういうのではありません」

 カペル君私みたいに前世疲れ切った社会人と違って純粋な10歳だから、異性になれてないだけだと思って否定するも、どうやらパトちゃんはどうやらなにがなんでも恋愛にしたいみたいだ。私は悪役の血筋なのでそんなことはおこらないと思うなんて言えないから、によによし始めたパトちゃんに苦笑いをして返す。カペルは未だに赤面から回復せずに、何故か私を撫で始めて、さらには力一杯撫でたから私の頭がぐるんぐるん回転する。ちょっとちょっと首がもげる!

「気を取り直しましてー。まずは魔力循環は……言った傍からお二人ともできるのですっとばしてー。魔力制御、も、えー……。言ってる傍からなんでお二人ともできてるんですかー? カペル君はーお母さんに習っていたってお話聞きましたけどー。リエル様ができるのはー、倒れていたから予想外ですー。 どうしましょう? もう、二人ともやらなくておっけーでいいかしらー」

 部屋に居ながらできる基礎練習の魔力を身体に循環させる魔力循環と、魔力を自身の望み通りに動かす魔力制御の二つを、私もカペルも言われてすぐにやってできてしまったので、パトちゃんが驚きながらやらなくてもいいか? と聞いてきた。

「いえいえいえ、お願いします! たまたまかも知れませんからたまたまかも!」

「僕からもお願いします!!! 強くなりたいんです」

 私もカペルもそれは困るので、慌ててパトちゃんに私は駆け寄って服を掴んで駄々を捏ねるように、カペルは扇のようにブンブン頭を上下させて、横流ししてひとまとめにした髪を振り回しながら必死にお願いをした。カペルはともかく王族の私は戦う必要はないけれど、のちのち私は王族から抜けるのだから腹いせでいつ殺されかねないし、父親を引き釣り下ろす前に死にかねないからこっちは死活問題なんだよ。強くなんなきゃいけないんだよ!!!

「はいーでしたら、基礎、はー。もうお二人ともやらなくてもできちゃっているのでー。明日の午後の王族鍛錬場で、カペル君はそのままー。リエル様は無属性でよくわからないまま基礎以上の修練をーしたら危険なので、私が無属性のことを調べ終わるまで中止のほうがよろしいと、おもいますー」

「……ダメ?」死活問題だからこその必死の訴えはパトちゃんには届かず、私は初日で中止を言い渡されてしまった。そもそも、ゲームの設定にすらない無属性なのだから、文献とか見つかるはずなんてない。事実上の禁止のようなもの、諦め切れずにパトちゃんを見ても、首を静かに横に振って「見つかるまでは……中止ですー」と念を押されて、パトちゃんの掴んでいた服の裾を放して「わかりました」と引き下がる。

「リエル様、僕はリエル様の……我が君の分まで頑張ります」

「うん、頑張って! パトちゃんカペルをよろしくお願いします」

「任されましたー。安心してくださいー私がカペル君を魔法で人体爆散できるくらいに強くしてみせますー」

 人体爆散ってなんぞ? 物騒な言葉がパトちゃんから聞こえて来たけれども心強い? 言葉を頂いて悲しさ半分にカペルを託す。出来ればカペル君を私の独断で奴隷解除できる六年までに自立出来るくらいに強く賢くなって自分の進みたい道へと行って欲しい。

(それがたとえ……私を恨む道でも)

 テニク・メーカー・アンドールの血を引くリエル・メーカー・アンドールである私は生きているだけで恨まれる理由が沢山ある。カペルもヌファンもソーラもレドビスもパトちゃんも……優しくて、優しいからこそ。

 人々の笑いを怨嗟に変え、資源で私腹を肥やし、血の通った生命ではなく国の歯車として人々を商品のように扱いあらゆる混乱を招いたこの血を……恨むでしょう。

(憎くてもせめて、バットエンドをハッピーエンドに塗り替えるまで、私は死ねないし死にたくない)





 私が今できることはただ一つ! お勉強のみ知識は武術より強し……魔法がダメな今は知識を使ってどうにかできないかと、私も一応嘆いては居られないので、午後は図書館に入り浸りどうにか無属性に関する本とかないかと探してみるけれども、どうにも出てこない。そもそも魔法の書に無という字すらも少ないしまつ。
 午前の素振りと簡単な護身術をやりながら午後の無属性の資料を調べたり、もし反乱に失敗したときにサバイバルできるように、食べられる雑草やら野生動物の解体の仕方も合間に調べる。それでも中々見つからないものだから、思わず図書館の中で途方に暮れてしゃがみそうになるけれど、流石にここでは人目に触れるのでやらないけど。

「精が出ますわね……穢れた血」

 本を漁っている間に堅い何かが私の頭に直撃してしまう。慌てて倒れないように前の本棚に手をついたもので振動で背中合わせの反対側の本がドサドサといくつか落ちる音が聞こえる。後で落とした分を戻してから、司書さんに落としたことを謝罪しないと。その前に……この高飛車な声……記憶にある。

「……ッ。これは、これは、マイベルお姉様……今日もお美しい」

 私の中の前世を思い出す前のリエルが「うわぁ……でたよ」っと悪態を付いた。目の前には悪役女王テニクに姿形は一緒で目はもう狐というよりはドブネズミのように丸くつり上がり、口は誰かを蔑むように歪な三日月を描き、鏡を見るとき無駄に眩しくて手入れするの大変じゃないですか? と突っ込みたくなるような金髪。それでもお世辞じゃなく本当に綺麗なのが余計腹立つけど。

「ええ、穢れて白く染まったお前と違ってね。分かってるじゃない……。お慈悲の あっはっはっはっは」

「はい、お父様の寛大な慈悲によって比較的自由に勉学に励めることを感謝しております。お姉様のお父様のおかげです」

 度々穢れた血だのお慈悲の第三王女様だのそういえば思い出す前に合う度に虐めて来たなこの第一王女。一度思い出せば芋づる式に記憶が蘇るけれど、流石に顔にだすと色々問題なのでどうにかよいしょよいしょでやり過ごす為に美麗句やらなんやらをこれ以上無いまでに並べて「わかっているならばいいのよ。とっとと辺境で我が国の歯車となりなさい」っとブラック企業真っ青……いやブラック企業の社長も一応口には言わないけれど同じこといってるだろうな……思考が脱線したけれども、人を物としか思って居ない言葉を吐いて去って行った。

 騒ぎを聞きつけた職員さんが慌ててこちらに向かってくる足音が聞こえてるけれども、そこでも「穢れた血が地を這いつくばる様は面白いから貴方達もみてなさいな」っと心の中でそのまま去ってろよ!っと今度はこの私が悪態を心の中でついて、無理矢理にマイベルに連れてこられた職員とマイベルに見られながら落ちていた本を丁寧に拾い上げて、落とした分全てもと合ったところであろうところに戻す。

「泣くなりしなさいよ穢れた血! つまんない」

 つまらなくとも結構でーす。あっかんべー!!! 心の中で最上級に幼稚な悪態のあっかんべーをしながら今度こそ去ってゆくお姉様を見送る。職員もとい司書さんが固まって動けないところに謝罪をせねばと近寄るとそれぞれが、顔を青くしながら、一人は「神よ……」もう一人は「アベルちゃん……」最後の一人は「ぐっ……」っとそれぞれ何かを覚悟したように私を見る物だから困ったように微笑んでしまう。微笑みながら怯える職員や司書達にゆっくりと近づき。

「お騒がせして申し訳ありませんでした。大切な本を傷つけてしまい……申し訳ありませんでした!」

 三人に向かって頭を下げた。丁度今はこの捕まった三人以外は厄介事に絡まれぬようにその場から皆去ったおかげで私とこの三人しかあたりに居ないからできたのだ。三人とも息を飲み沈黙している、なんだろうなんか弱腰だからやっちまえ!って気になってないかなーなんてのんきに謝罪のお辞儀を続けていたら、自身の垂れてくる髪になんか赤い物が……血だこれ。

(あんの小娘ぇぇぇぇぇぇ!!! 今は私の方が小娘だけれど!!!)

 なにがつまんないだ! がっつり血出てるじゃないか、気がついたらなんか痛いような気がしてきた。速く三人のフリーズ解けないかなぁ……と途方にくれていると「顔を上げてください」と職員の一人が言ってくれたのでやっと顔を上げた。どうやら声を上げたのはなんかふわふわしたオレンジの髪色のくせっ毛の男の司書が言ってくれたようだ。それで顔をあげたので、さらに馬鹿姉のなにかされてないかを聞こうとすると逆にその人が私に頭を下げて。

「暴力を振るわれている貴女を助けることができなくて……申し訳ありませんでした!」

「「申し訳ありませんでした!!!」」

「いやいやいや、下げなくていい、下げなくていいからぁッ!」

 思わず素が出てしまったけど、なんか必死なようで気づかれることは無くこのままいらないのにお詫びをということで、私が勉強したい本を、赤のセクシー系女司書カレット、オレンジの髪のくせっ毛司書ヴェネス、少し大柄の男司書ガバンの三人交代で専属で付いて探してくれると言ってくださいました。


 嬉しいけれど悪いなぁ……っと思いながら押し切られるままにそのお礼を了承しました。



 
 
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