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最終戦争【4】

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 リチェルリットの特徴として戦いの出来る物は上に行けば行くほど前線へと駆り出される。普通だと上に行けば行くほど失うことを恐れ前線から遠のく物だが、リチェルリット逆だ……上に行けば行くほど前線へと駆り出される。

 それによって戦いたくない人間は登ってこないし、死の恐怖も戦いの辛さも痛さもわかる者が指揮権を持つので失敗も少なく、被害も素早く沈静化しやすい。幹部が前線で働いているという安心感がさらに下の者のパフォーマンスを上げる。出し惜しみをしない戦術こそが、リチェルリットの軍事力の強さである。

 全てを歓迎し、全てを受け入れ、全てを使う。

 それは犯罪を犯した者の例外ではないようで……。受刑者の肩も進んで兵士と救援を行っている姿が見える……あの人身売買組織の人間も一緒になって。

「犯罪者とて、受け入れてくれる場所をないがしろにする者は居ないということですよ」
 
 私がこの光景に驚いているとグラスがそう教えてくれた。それに引き続きスケイスが感心したように発言した。

「よう、人材をうまく使ってらっしゃるの。ホンマ希有な国やな」

「希有だね~。魔物も魔族も悪魔族も天使族も……みーんな一緒になって救援活動してるって、ほんと凄いや」

 本当に凄い。五つほどの国を見てきたけど、ここまで一緒になれるのは想像以上だった。その救援の中をくぐり抜けるように走り去る中で見知った恰好の男が居た。洒落た鍔広帽子にそこそこ堅そうな雰囲気と、壁のような大きい剣を背に携える割には、防御が薄い服を着た男……。

「あ! スパンコール!!!」

「スパーダスだ!!! 今日という今日は……この戦闘が終わったら覚えろよ馬鹿娘~!!!」

 こんなに姿が変わってるのに覚えててくれるのに嬉しく思いながらも、事態が事態だから走る足は止めない。一回後ろを向いて手を振ると、呆れたようにため息をついて手を振り替えしてくれた。その後に邪魔だシッシとも手を振られたから笑って背を向けて、少し先の方へ行ったグラス達の所へと走る。

(覚えてるから死なないでね)

 戦争でこんな考えをしちゃいけないんだけど……できれば皆死なずに会いたい。皆の強さを信じている。エピクと対峙した時の感覚を覚えているから、皆強いから大丈夫と信じられる。

 そして、4人で助けられ分は急ぎ足で助けてやっとこさ城のすぐ下へとたどり着いた。

「セシル、顔面はよ用意せい。詐欺面、詐欺面」

「一度お前は僕をなんだと思ってるのか話し合おうじゃないか、はぁ……」

 詐欺面という中々のパワーワードに嫌な顔しながらもそれを消して、善人のような優しい笑顔に変わった。笑顔は笑顔でも元を知ると確かに詐欺だと思う。おかげで、セシルの顔パスで城の中へと簡単に入れた。後はセシルが前に来てカロネちゃんとリュピアちゃんが居るところというか、国王の間へと案内された。

「失礼します。国王……神聖騎士団団長セシルが参りました」

「冒険者、グラス馳せ参じました」

「よっ! カリスティア来ました」「よ~! ナイスなスケイス来たで~」

「はぁ……」「はぁぁ……」

 二人が堅苦しい挨拶をしている中で、私とスケイスは普通に挨拶をしたら二人にため息をつかれた。そんな事は置いといて久々のカロネちゃんやリュピアちゃんはと玉座を見ると……目の前に豊満な胸があった。

「くぁりすさぁまぁぁぁっっっっ!!! わたくしですカロフィーネです! カロネちゃんですわ! カリス様こんなにお美しくなられて……。きゃぁぁぁぁぁん!!!」

「むぐぐぐ、し、ぬ」

 吹っ飛んで来たカロネちゃんを見たくても、胸に窒息させられてみえない。御姫様だからバシバシ叩いちゃダメだよねってことでわたわたしてると酸素が足りなくなって意識が朦朧としてくる。女なのに女の胸に挟まれて死ぬのね私……なんて、死んでも死にきれないことを思っていると。

「カロフィーネ姫、カリスちゃんが窒息してる」

「きゃ! ごめんなさい」

「ふぃぃ……大丈夫。カロネちゃん綺麗になって成長したね~。リュピアちゃんは凄いかっこよくでビューティー」

 そして、集まったグラス、カロネちゃん、リュピアちゃんの三人に構わず頭をなでぐり、なでぐり、されてしまった。この世界の人間はとことん人の頭を撫でるのが好きらしい。

「カリスちゃん、大きくなったね。僕は今カロフィーネ姫の専属メイドをやってるけど、この戦いが終わったらとっとと辞めて、カリスちゃんのメイドに戻るよ」

 男役のような素敵な女性に進化したリュピアちゃんが、切れ者のように艶のある笑みを浮かべて来た。屈んで顔を近くへと向けるから、何となくドキリとして硬直すると。若干強めにグラスに腕を引かれて胸へと迎えられると、私を守るように抱き上げて、グラスはリュピアちゃんから距離をとった。

「それは困ります」

 そして、若干の警戒心を宿してグラスはそう言った。

「何でグラスが困るの?」

 なんでグラスが同性相手にそんなに警戒するのか疑問に思って聞くと「愛ですわ」様子を見て嬉しそうにニヤつくカロネちゃんがそう呟いた。愛……愛……そういえば前にリュピアちゃんにキスされたあの光景が頭にふわりと蘇る。もしかしてと思ったら、ピースがカチカチと組み上がるのにはそう時間が掛からなかった。

「え? リュピアちゃんてもしかしてソッチ系!? だからあのときキスしてきたの」

「キス、どういうことですかリュピア様?」

 もしかして、リュピアちゃんはレズビアンだったのか! 驚愕の表情で停止していると、キスの単語に反応したグラスが眉間に皺という皺を寄せて、リュピアちゃんを睨んだ。対してリュピアちゃんは肩をすぼめて悪気なくこう言った。

「僕の初恋を砕いたんだから、そのくらいはくれないとね。グ・ラ・ス」

 私のリュピアちゃんはいつの間にか小悪魔に進化したみたいだ。挑発するサキュバスのように舌を出して微笑んだ。私を抱きしめる腕が怒りなのか嫉妬なのかでプルプル震えてる。

「一度、お と「まままま、まてまてまて。今は喧嘩をするときではないぞい! スマンのゴメンの! ちょっとまっとくれ~い!!!」命拾いしましたね」

 グラスのおと? の先が気になる者の国王様が首振ってダメダメダメっと待ったをかけた。グラスの些か殺気が籠もった一睨みにも意も返さないリュピアちゃんは、カロネちゃんをエスコートして王の下へと戻っていた。そして、こちらのやりとりを暖かい目で見ていた王妃様がニッコリと、私とグラスを見てから……オカメ面が般若面に変わったように目をつり上げて、ドスの聞いた声で「アルハイル」と呼んだ。心臓発作でも突然来たかのように身体をビクリと跳ねて国王様は慌てて玉座から降りて、私とグラスの目の前来たかと思ったら「本当に申し訳ない」っと頭を下げた。

「お主達を贄にして今までの人生を奪うこととなり、本当にすまなかった」

 国王の謝罪が響き渡る。中の護衛兵士達は表情こそ変わらないものの痛々しいものを見るように謝罪をする国王様も見て居た。王妃様もカロネちゃんもリュピアちゃんも……何故か断罪される罪人のように沈んだ表情で国王様の背を見て居た。謝罪する国王様にかけれる言葉と言ったら……一つ。

「うん、いいよ」

「へぇあ?」「え?」「やっぱりの」「……え?」

 私の即答に国王様は気の抜けた声を出して私の次にグラスの顔を見た。カロネちゃん達もお間抜けな声を出した。その回りの兵士達も同じく間抜けな顔で、即答の私の目をかっぴらいてガン見した。

「はい、わかりました。では、私達はこの国の為に何をすればよいのでしょうか? 指示をお願いします」

 その皆が次に注目したグラスも、きょとんとしながら国王様の謝罪を軽く受けて戦いのことを聞いた。皆が皆私とグラスに目線を行ったり来たりさせて、もはや声がなく驚いていた。

「あの、わしは大体6年近くの人生をパーにしたんじゃよな?」

 小さい子に言い聞かせるように国王様は言った。それに私もグラスも目を合せて首を縦に振った。

「うん」「ええ」

「じゃから、それに付いての? ふざけるなとか、弁償しろとか、誠意を見せろとかないのかね」

 あぁ、あっさりし過ぎてて驚いたのかと納得して笑った。グラスも納得したように「そういうことですか」っと言った。国王様はわかってくれたのかと喜んで「それではなにか」っと続けようとした所で私が遮った。

「弁償できるもんじゃないし、怒るのも疲れるし」

「そもそも、求めていない謝罪をされてもこちらが迷惑ですので」

「特に言うことないかな」「特に言うことはございません」

 言うことはないけれど、国の為に働くと私とグラスはぽかーんとしている国王様に言った。未だ納得しないように顔を曇らせたから、私もグラスも自分なりにこの旅の言葉を紡いだ。

辛かったけど互いを知れたこと。

悲しかったけどそれだけでないこと。

出会えた仲間達とその人生。

私達が救えた者、満足するような結果を得たこと。

私も、グラスも、サクリちゃんもだから生きようと思えたこと。

グラス本人は殺したいけど、殺すことはしない……。ただ、ディザを殴らせて欲しいこと。

私本人はディザに特に思うことはないけれど、伝えたい言葉があること。

 こんな時だけど余すことなく伝えた。だから私達は国王にもこの国にも思うことは特にないと。国王は真摯に聞いてくれて辛いこと悲しいことは、自分の事のように涙を流して聞いていた。あぁ、だからこの国の王はこんなにも好かれるのか、私は今更そう思った。

「わかった。お主達の思い真摯に受け止めた上でわしは何も言わぬ。それじゃあの、気を取り直して指示をしようぞ」

 国王はそう言って歩いて玉座へを戻って最初の時のように笑った。目にはありありと憂いをともしても眩しい笑顔で。国王が気を取り直すというと場は最初の頃の雰囲気に戻っていた。カロネちゃんもリュピアちゃんも顔を引き締め、王妃様は艶やかに扇子を開いて口元へ、唯一セシルは国王へと傅いて指示を待った。

「最初に、セシルはこれから防壁が破壊されたあとの民達を匿うこの城へ結界を張る作業の指揮を取るように」

「承りました。カリスティアちゃん、スケイスを借りて宜しいでしょうか」

「どうぞ」

「ありがとうございます」

 指示を受けて顔を上げたセシルが、私にスケイスを借りて言いかと聞いてきた。本人には聞かないのだろうかと疑問に思いながらも了承すると。猫かぶりしているセシルの満面の笑みを送られた。その後すぐにずっと聞きに徹してたスケイスは小言を漏らした。

「本人にも聞くのがすじっちゅーもんやろ。んべー」

カッカッカッカッカッカ!!!

「これは失礼致しましたスケイス様……よろしければ僕と共に結界を張る作業に赴いて頂けないでしょうか? 神の為、人の為に貴方のお力が必要なのです」

 お ね が い し ま す っとスケイスの骨の手を違和感なく握手して微笑むセシル。苛立ちを隠そうともしない靴音にこっちが冷や汗をかきそうになる。私とグラスにだけ聞こえるスケイスの手の骨の軋みが痛々しく耳まで届く。すっごいミシミシ言っている。

「お、う。ええで」プチッ

「ありがとうございます」ゲシッ

(どっちもさりげなく、足踏んだり髪の毛引っこ抜いたり……仲がよろしいことで)

 あまりの仲の良さに苦笑いするものの。どっちもこんなに大人数の中でバレずにようやるなと関心してしまいそうになる。実際に気づいてない王が仲がいいの~っと脳天気に口ずさみながらも居住まいを正して、次は私とグラスを見た。



「二人には防壁が壊れた時に雪崩れ込んでくるだろう天使達との戦闘を任せるぞい。城を守ることを一番に戦闘をこなしてくれ」


 城を守りながら天使と戦闘する。それが私達のやるべきことだ。 
 








 

 


 
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