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不運は変わらずチャンスを遠ざける。

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「エイデルグロー!!!」

「っふ、ほっほっほ」

 気味の悪い薬と手紙をストックに仕舞ってから、急いでメリナとロイエ・ペッカートの試合を見に行った。今回はグラスも試合に興味があったようで、国王の隣にカロネちゃんとグラスが二人仲良く座っていて、その後ろに一歩後ろに引いたリュピアが控えている。

 いち早くリュピアがカリスティアのことを見つけて、今日のことなんて感じさせない照れた笑顔で手招きしているものだから、いつもの無表情を活用してなんでもないようにリュピアちゃんの隣に座った。カロフィーネもグラスもそれぞれカリスティアに挨拶を交してすぐに試合の方へ顔を向けた。

(釣られて試合見たけど、ザッ猫娘のメリナちゃん可愛いしか頭に入ってこない。にしても……、ある意味リュピアちゃんを人質にとられたようなもんだよな……気づかれたってことは)

 それと手紙には自分のことを知っているようなことを匂わせる文章で、異世界に来た時にとっさに吹いたホラがこうして現実味を帯びる事態、反対にカリスティアはどこかそれを非現実的に見てしまうような、ぼんやりと霞んだ思考に支配される。

 自分の軽率な行動の産物だというのに、してしまったのだから感じても仕方ない後悔が頭をグラグラと揺らす。横を見ても左を見ても前を後ろを見ても歓声と歓喜が鼓膜を揺らす。思わず居ていられなくなって「飽きたから城下でまた遊んでくる」っとだけ告げて、振り向きもせずに会場を後にする。そもそも、こんなよく分からない物質を持っているからだ。侵入しているときは魔力の流れから見つかるのを恐れて鑑定をしていなかった。今日が落ち着いたらやろうとは思って居たのだが、何故が胸を逆撫でするような妙な感覚とクラクラした感覚を消したくて、カリスティアは城に戻り、すれ違う人の挨拶もほどほどにして、自分専用病室に滑り込む。

「具現化ストック、よくわからない薬、そして鑑定」

【強化剤】

 一時的に筋力と防御とステータスを増大させる。

「何で出来てるかの説明も出たらいいんだけど、魔力の調整が難しいし、頭痛い。副作用は」

 前の世界のスポーツでおなじみのドーピングに近い物だったら、肝障害や脳梗塞とか男が使ったら女体化で女が使ったら男体化がおなじみの副作用だけど、こちらは副作用の事が書かれてないから、副作用がないのか鑑定技術がないのか、大方後者だろうと、カリスティアは結論付ける。

 取りあえず薬だけでも、どうにか自然な感じで手放さないといけない。もし他人を少しずつ追い詰めたいのなら噂から、もし、何かしら利用したり潰すつもりならば噂を流して孤立させるところから始まるはず。

「この砂……あぁ、砂だと思って遊んでやりゃいいのか。そうだ身体とステータスは4歳なんだから」


 有言実行、これをお砂だと思って地面にばらまいて捏ねて、無駄に具現化スキルを使用して土のゴブリン(美化100%)を作りだして、城の門を潜って帰ってきたグラスとリュピアちゃんとカロネちゃんとその他姫の護衛兵士に、「変な人から綺麗な砂貰ったから、それで作ってみた。出来を教えて」と貰った瓶と一緒に、変な砂入り力作ゴブリンを持って駆け寄ると。

 カロネちゃんは姫とは思えないほど大口を開けて両腕で顔を挟み込み、まるでムンクの叫びのようなポーズに。リュピアちゃんは「とととととと、とてもも、よよよよくできて、ます」とまるでくるみ割り人形のように、ガタガタカチカチを歯を鳴らして必死に言葉を紡ぎ。グラスに至っては、とても良い笑顔で「変な人とはどんな格好をされていましたか?」っと後ろに殺気って文字を背負って恐ろしく魔力を怒らせた。

「にゃっと、へー可愛くできてんじゃん。おねぇーさんに見せてカリスティアちゃん」

「わぁ! ほぼ初めましてメリナちゃん。どうぞー」

 背後から腕が急に伸びてきたかと思うと、ふさふさとの尻尾が腕に絡む、そうして柔らかい手が自分を包むように抱かれる。まさかと思って振り向くと今回戦っていたメリナが後ろで抱きついて居た。気配無く背後に立たれるのは慣れているので少ししか驚かなかった。手放すには丁度いいと、快くメリナに手渡してついでにあげると言うと嬉しそうに顔を笑顔にして喜んでくれる。尻尾もブンブンと振っていたから本当に嬉しいのか? っとカリスティアは不思議に思った。

「嬉しい! 人が楽しそうに作ったやつって好きなのよねー! ありがと。でも、知らない人から物を貰っちゃダメだからね? おねーちゃんと約束よ」

「うん!約束するよ。あっメリナちゃんはこの綺麗な砂が取れるところしらないの?」

「あーね。お砂が欲しいなら研究室においでよ。綺麗な砂を出してくれる魔物居るからさ、錬金術の連中の隣がそうだからいつでも来て良いよ」

「ありがとう」

「うー、カリス様が行くならば私も行きたいです」

「ごめんねー。姫様はちょっと危ないからもうちょっと大きくなってからね」

 幹部会議以来特に話しも会いもしていないメリナに幸運にも接触できた。これで、私が服用したとかの噂が立っても大丈夫だとは思いたいところだ。こればっかりは行動したので、もし噂がたってしまっても後の祭りなのだからと、カリスティアは考えるのを止めて、自分だけ姫というだけでまだ入れないことにご不満なカロフィーネのご機嫌取りに戻る。カリスティアがまた暇になった時は一日中遊ぶと言うことでなんとかご機嫌とりを成功させた。

「あたしゃ猫だから……猫かぶりはわかるよ。けど、見逃してあげる」

 自分にだけ聞こえる声で言われて振り向くも、風のように消えてメリナは居なかった。のちほどグラスに見た目通りの素早い人物、17才の見た目に似合わず聡明で手堅い取引でいままでの異種同士の結婚や住まいの問題を解決してここまでのし上がってきた実力者らしい。



「いやいや、グラスさん。カワイイ女の子をこんな風に壁に追いやって脅さないで」

 ご機嫌とりだけで一日終われるはずもなく、カリスティアはとっさに付いた嘘の架空のおじさんのことについて自分専用病室で、グラスに尋問されていた。イケメン伝家の宝刀【壁ドン】が華麗に決めて尋問するグラスに、狙ってんのかこの中性イケメンめ! っと言いそうになるもグッと堪える。

「私は聞いているだけですよ。その変なおじさんの髪型、髪色、顔の配列、口調、背丈、外見年齢、どこで? いつ? どういった状況で? それを私は聞いているだけにすぎません。教えてくださらないのならば……」

 無言と話題逸らしにしびれを切らしたグラスが顔をドンドン近づけてくる。いくら中身はババアとはいえ、イケメンに迫られるのは初めてなので、ひぃ~っと心の中で叫ぶ。逃げたくても逃げられないので、思い切ってどうにでもなれ!と目を瞑って身構えて居ると、コツンっと額に衝撃が目を開けるとドアップのグラスが目と鼻の先でご登場だ。あまりのことに絶句をして固まる。

「熱がありますね。ちょっと失礼します」

「ぎゃおらわ!!!」

「一体なんの雄叫びですか……」

 お前の良すぎる美形顔とお姫様だっこに対する悲鳴だ!!!そう威勢良く叫びたかったが、自分の第二の家と呼べる此処に来たのがいけなかったのだろう、身体が重くて動かないので、抵抗することなくグラスにベットまで連行された。

「いつまでいるの?」

「貴女が寝たのを確認するまでです」

 連行されたあとも、移るから帰れと散々言ったのに結局帰らなかった。あの戦いのせいなのかグラスが一日で大分強気で強引になったなーっと重い頭で思ったのでした。

(せっかくメリナちゃんのパイプができると思ったのに熱……がっくしだよ。あぁぁあぁ)

  
 
 
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