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グラス対カリスティア【1】

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 カロフィーネ姫も実際に足を運んで、人の多い観客席に座り祈るように二つの白と黒を見る。見て只管に祈りを捧げる。二人は無表情のままで、にらみ合う。他の大人とは違い実力も積み重ねた物も足りない子供の試合にこれほどまでに人々の関心が集まる。勧誘、買収、好奇、色とりどりの目線が二人へと向けられるも、本人達は互いしか見えないと、武器を握り互いを瞳に移す。


「さぁー。ぶっちゃけ何度も名前言ってるから、お馬鹿さん以外は、名前を覚えてるでショー!!!っということで、決闘始まりますぞー!!! それでは……開始!!!」

「天の横流れ」

 開始と共にカリスティアは、水明の長剣を横に振ることで、剣から流れ落ちる水玉を弾丸のように飛ばしてグラスに攻撃する。グラスは難なく前に突撃する形で躱し【所有者の許可外に触れた物質と生命を弾く】能力を持つ杖をカリスティアにぶつけて、弾き飛ばそうとするも、カリスティアは水の魔法を剣にさらに纏わせて水の層を作ることで、弾き飛ばす効果を受け流して打ち合いをしていた。

「凍れ」

「ッチ」

 呪氷の杖との名を持つだけ合って、術者の要望通りに魔力を通し水の層ごと剣を凍らせたことで、弾き飛ばす能力を受けきる事ができななり、カリスティアは剣を咄嗟に手放すことで自分まで弾かれるのを免れた。グラスはこの機会を逃すわけはなく、杖に魔力を込め、カリスティアに向けて全力で振り下ろす。
 
 それをカリスティアは【魔力をこめることにより、長さを自由に変えられる】水明の剣の刀身を伸ばすことによりグラスの杖に刃があたり軌道がずれ、カリスティアの隣に杖の打撃がたたき込まれる。カリスティアは咄嗟に風魔法の補助で、空気抵抗を減らした状態でマンション二階の高さまでに飛び上がったことにより。氷の魔力の爆発に巻き込まれずに、弾き飛ばされた水明の剣の隣に着地することができた。
 
 氷点下の爆風から、グラスがゆっくりと歩いて出てくる。普通はこんな風に氷の魔力を爆発させよう物なら、術者も無事では済まないし、本来は愚策の自爆にしかならないが、グラスの【氷雪適応体質】は氷雪に身体が適応している……グラスには氷雪系の攻撃は自分の放った魔法を含め効かない。だから、普通の魔術師では考えられないような無茶な攻撃もできる。先ほどの自分をも巻き込む氷の爆発のように。

「ここから先は……貴女の水魔法や攻撃は通じないと思ってください」

 凍てつくような、平坦にそう言い放った。その瞬間にグラスの身体に氷点下の霜が薄く纏わり、薄く雪のような白い発光した光に包まれ、歩く度に地面が凍り付き、カリスティアの吐いた息が白くなるほどに会場の温度が下がる。グラスが軽く手を左に振れば、霜がふわりと舞いあがり、霜が舞った所は瞬時に凍り付く。

 【適応体質系】のスキルには、その属性の攻撃が効かない以外にも厄介なところがある。それは、自身に属性攻撃が効かないからこそ、自分の体内や身体に氷魔法そのものを纏い、たたき込み自身がその属性そのものの高密度な魔力の塊となる。

「最初から知ってたよ。基本元素が上級元素の氷魔術に勝つのは難しいくらい。具現化ストック【渇望の指輪】」

【渇望の指輪】

効果 自身の願いに精神を焦がす代わりに、絶大な攻撃力を上げる効果。
   自身の心の傷を攻撃の刃に変える傷心魔術の発動を補助する

 カリスティアは、【渇望の指輪】を左薬指にはめ込み水明の剣をストックに収納する。カリスティアは薄く発光するグラスに目を細めて綺麗だなっと小さく呟いて、歩いてくるグラスに向かって自分もゆっくり歩いて微笑む。今の自分はなんと綺麗な笑顔だろうな、仕事で潰された心を犠牲に獲得したスマイルはさぞかし綺麗だろうと自虐を含めて笑う。

「お望み通りに全ての手段を、スキルを道具を使うから……覚悟してね」

 少女は綺麗に笑う。ゾッとするくらいに完璧な人を寄せ付ける美しい笑顔。その笑顔だけで、この戦いを実際に見ている者、水晶を通してあらゆる国や場所から見ている一人を覗いた全ての者の表情を恐怖で塗り替えた。




 
 
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