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病室から脱走したら美少女を保護しました。誘拐じゃないよ

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変化したステータス

物質具現化Lv2→物質具現化Lv3

空想具現化Lv1→空想具現化Lv2

治癒術Lv1→ 治癒術Lv5

NEW 鑑定Lv1 隠蔽Lv1 リチェルリット言語


 あの事件から、やっとのこと一週間。

「彼女はスキルのために運を支払ったのかしらん」

 ラブマルージュは、あまりに彼女が死にかけるのでこの治癒部隊隊舎の体験の間病室まるまる彼女に貸し与えたのだ。もし彼女がまたトラブルで死にかけたときに処置がしやすいように。その彼女を呼ぶためにラブマルージュは彼女の病室の前に立っていた。

 城の城の役職の体験では一番安全と判断されてこの体たらく。初日に責任を持って彼女に謝罪をして許されたのだが……。彼女を預かっている責任感が柄にもなく襲ってくるが、頭を振ってそれを押しのけて、ノックをするも、返事はない。彼女……カリスティアなら起きているだろう時間に返事がない。寝坊しているのかとゆっくりラブマルージュは、扉を開けると……寝ているはずの彼女はいない、ベットはもぬけの殻……開け放たれた窓……。不自然に一枚の紙が置かれていた……「まさか………」とラブマルージュは震える手で紙を取ると。確かにで【体験飽きたので外で遊んできます。探さないで】と書かれていた。

「…………スパーダスちゃんとリアンちゃんに連絡ね。騎士団だから、なんとか……いや無理ね。夕方までに帰ってこなかったら、アタシが探しにいかないとだわ。あ~んもー」

 ラブマルージュの渾身の嘆きは空っぽの病室に悲しく響くのみ。



 教科書で見た中世よりも豊かな緑に覆われた石レンガに囲われた美しい町。露店もあのクズの町と違い清潔感あふれる瑞々しい果物が箱一杯に積まれていた。今度は物質具現化スキルで周りの子供を見てそれらしい服装にしてあるので、4歳くらいの子供がトボトボ歩いている以外に不自然な所はないはず。病室とは違う春の花に溢れた匂いと活気のある人の話し声に、本当の4歳のようにはしゃいでしまいそうになるがグッと堪えて目的の場所をでたらめに探し歩く……といっても目指すのは外なのだから、ちょっと見上げれば見える王都と城を守る壁に向かえばいいんだけどね。

 やがて、王都の中と外をつなぐ門が見えた。門の周りには建物が極端に少なくなるので、予め家の屋根に無断に登って確認すると、当たり前だけれども門番が居て商人の馬車や冒険者の情報チェックなど手早く済まして人の出入りをキッチリカッチリと行っている。大雑把に見ても10人ちょっと……いやもうちょっと居るかな?くらいの人数の兵士。やれやれと昨日作った透明になれるインビジブルマントをスキルで呼び出して羽織って潜ったので難なく外へでることが出来た。昨日スキルで獲得した隠蔽スキルが早速役に立った!

「ふいー!壁が見える範囲で色々探しますか!」


 スキルの扱いに大分なれたので、左腕をそれらしく振り上げるとおなじみの長剣が手に現れる。具現化ストック様々だ。心の会話もそこそこに、鑑定スキルを使い有益な薬草や毒草や一応で雑草や草などをストックしていき、土地が変わって初めての魔物も危なげなく退治して素材を解体する。


【獲得素材】

薬草

雑草

ルーン花

ヒン草

ウレニク草

オークの木の葉

ホブゴブリンからカツアゲしたリチェルリット銅貨 

ホブゴブリンからカツアゲしたズボン

ホブゴブリンからカツアゲしたボロ布

フォレストハウンドの毛皮

フォレストハウンドの爪

フォレストハウンドの肉

光食いコウモリの羽


 早朝から丁度、太陽がてっぺんなので多分昼頃、大分壁が遠く見えるのでそろそろ戻るかと壁の方向へほくほくしながら足を進める。もうモンスターと戦うのはゴメンなのでインビジブルマントをもう一度【具現化ストック】で呼び出して羽織る。なんか、最初でていったよりも+10くらいの兵士が居たけど透明マントでスルー。どこも彼処も兵士が居るから、門を抜けてもマントは脱げず。このまま帰るかーっと兵士の巡回をなんとなく避けて、市民の住居街へを通って城に帰ることにした。

「~~が~あ~~!!」

「ん?」

 こんなところが行けないだと思う。私は女の人の劈くつんざくような叫び声に何事だと見に行ってしまった。そこで見たのはとても躾では済まされないほどの罵声の数々が家の中では収まらず住宅街に響き渡るほどだ。殺すとか尋常じゃない様子に、とても見過ごせないのでイケないことを承知で罵声の発生源の二階建ての家の開いている窓から侵入をして、一気に罵声の発生源の二階へと駆け上がる。ドアは開いたままそこから漏れ出る子供の泣き声と女の先ほどよりも油を注がれたように燃え上がる罵倒、今度は足音を消してそっとドアまで近づきのぞき込む。

 母親だろう女は癇癪を起こして、子供にはとても聞かせられないような罵倒をぶつけてこの子の所有物であろうおもちゃを手当たり次第に喚いて投げつける「助けないと!」どうやって安全に助けられるかを必死に考えて居ると。

「いっそのことお前なんて……」


 髪質も声音も違うけれど、ある光景と重なる。

【殺してやる!!】


 その単語を彼女の耳に届く前に……この錯乱している女が言葉と言う刃で、在りし日の自分のようにこの子が切り刻まれないように。私はマントを脱いで母親にタックルをかます。何もかも違いのに似た状況と言うだけで女が前の世界の母親に重なる。タックルで案外簡単に飛ばされた女を一瞥して自分と6歳くらいの子供だろう女の子を担いでマントを羽織り二階の窓を乱暴に蹴り開けて、飛び降りる……。やっぱりステータスはちゃんと身体能力に反映されているようで、二階から落ちても簡単に着地できたので、1回も振り向かずに城へ一直線で走る。

「助けてくれてありがとう……うっ」

「……大丈夫よ。お名前聞いていいかな?」

「リュピア」

 名前を聞いて、人気の無いことを確認して一度立ち止まる。確認の為に。

「リュピアちゃんかーこのまま、このままリュピアちゃんの痣が治せる所まで行って良い? もしかしたら今日は家に帰れないかも知れないけど」

「いや、治っても帰りたくない。帰りたくないよう……」

 不自然に切られた橙の髪と、引っ張られて破かれたのだろう亜麻色の服とそこから見える無数の痣が酷く痛々しい。


「うん、わかった」

 うん、わかった。この後にこの子もお城で預かってくれないか駄々こねてお願いしよう、そうしようとこれ以上の事は考えずに、再度城へ向かい。空いたままの私の病室の窓に滑り込む瞬間にインビジブルマントと具現化ストックで仕舞う。リュピアに衝撃が行かないように姫抱きでベットへダイブ。

「あらまぁぁ!!」

「あっ、丁度良かったよラブちゃん。この子の痣治して~♪」

 夕方までに帰ってこなかったら、私を探すつもりだったオカマが最終確認で私の病室を確認しているときに丁度滑り込みで入ったので、あのオカマは病室に居たそうだ。リュピアちゃんの傷や痣を治しながら、オカマにお転婆だの、タダで日常をかき乱す子供だの、一歩間違えたら誘拐の乱暴な保護の仕方だの、散々言われたけど、最後には無事で良かったと言われたので、ちょっとくすぐったかったです。

 勿論だけどグラスには死ぬほど怒られました。
 
















 

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