上 下
50 / 79
第7章 だっだっだ うぉおぉ 大乱闘! スマッシュDスターズ

第49話 泥棒猫参戦!!(前編)

しおりを挟む
「みんなぁ~! りんごの配信、はじまるよぉ~!」

 りんご先輩の挨拶で「初代スマブラ対決コラボ」は幕を上げた。

 復帰報告からのずんだ先輩生誕ライブへのシークレットゲスト。
 そして、本日が復帰後初のゲーム&コラボ配信ということで、チャンネルは出だしから同接1万という好スタートを切った。

 もちろん、ゲストに私とうみ、美月さんという人気所を揃えたのも大きい。

「ゲストが豪華? そうでしょ~! みんな、復帰を祝ってきてくれたんだ~!」

「いや、嘘ばっか言うなバニ。ずんさんのライブの打ち上げで、言質取られちゃったバニよ。この泥棒猫に騙されちまったバニ」

「うぅっ、委員長もりんご先輩に脅されて。本当は、ばにらと深夜のマリオパーティ(そのまんまの意味)したかったのに……!」

「こらこらみんな! りんごの復帰配信一発目だでな! 文句ばっかり言ってたら――ずんだがしばきあげるよぉ~?」

「あははは~! は~い、というわけでね! 今日、ゲストに来てくれたのは、この三人! 三期生の八丈島うみちゃんと、川崎ばにらちゃん! そして~、僕の親友のずんさんで~す! みんな、挨拶をどうぞ~!」

「こんばにー! DStars3期生の川崎ばにらバニ!」

 おきまりの挨拶を終えて、さっそく「初代スマブラ」の対決へ。
 うみがまとめたルールをりんご先輩が読み上げる。
 その間、私と美月さんはサブPCで配信画面をチェックした。

 FaceRigの動作はうみを除いて良好。
 コメントも滞りなく流れている。
 今日はYouTubeの調子もよく、グルっている(通信トラブル)様子もない。
 同接は2万に差し掛かろうとしていた。

 復帰配信としては上出来だ。
 このためにコラボを画策したと言われても納得してしまう。

 もっとも、絶対にそれだけじゃない気がするけど――。

(ずんだ先輩に無理させないためって言ったわりには、うみにあらかじめ根回ししてるんだよな。そのくせ準備はなんかおざなりだし……)

 りんご先輩の狙いはなんだ。
 考えが顔に出ないよう笑いながら、事務所きっての悪戯者の腹を私は探った。

 そうこうしているうちに説明が終わりキャラクターセレクトへ。

 大乱闘スマッシュブラザーズは任天堂のキャラ(+α)が戦う格闘ゲーム。
 ただ、普通の格闘ゲームと違い「ゲージを削りきったら勝ち」ではなく、「相手をステージ外にはじき出したら勝ち」という特殊な格闘ゲームだ。また、ダメージを喰らえば喰らうほど、攻撃を食らって吹っ飛びやすくなる。

「ずんだはこのドンキーコングでいかせてもらうでな!」

 美月先輩が選んだのはドンキーコング。
 大味なパワータイプと思いきや、地鳴らしや上段への攻撃、さらに禁断の抱え込み自爆(ステージ外に自分から飛び出す)という、上級者向けのキャラクター。
 レトロゲーマーの美月さんらしい渋いセレクトだと思う。

「委員長はSPでも愛用しているピカチュウでいきますよ! 初代の頃から変わらない神性能! やっぱり任天堂と言えば、ポケットモンスターなんよ!」

 うみが選んだのピカチュウ。
 彼女が自分で説明した通り、SPでも愛用している持ちキャラだ。
 小さいボディに高い火力と機動力は間違いなくシリーズ最強。
 むしろ、速すぎるキャラにプレイヤーがついて行けるかが問題だ。

 その点、うみの操作能力は折り紙付き。
 野生のプロでも出てこない限りまず負けない。

 まぁ、相手はまさしく野生のプロ&歴戦のレトロゲーマーのりんご先輩。
 どこまで彼女のピカチュウが通用するか――はっきり言って分からない。

「ばにーらはSPでドラクエ勇者を使ってるバニですが、初代には出ておりません。ですので――今日はリンクでいかせていただきやす!」

 私が選んだのはゼルダの伝説のリンク。
 癖のない操作性能で攻撃力もそこそこ高い。
 ただ、バランスはいいが特化した能力がないのがネックだ。

 ぶっちゃけると、私はあまりスマブラが得意ではない。
 SPの方で勇者を使い込んでようやく勝負になる程度。
 なので、今回の勝負はうみの働きにかかっていると言ってよかった。

 さて、そんな中、注目のりんご先輩がキャラクターを選ぶ。

 最後までもったいつけた彼女は、灰色のコントローラーを手慣れた感じで動かし、1Pの赤いコインをキャラクター表の――左下に置いた。

 キャラクターの名前が配信に流れると共にコメント欄がざわつく。
 私も思わず「それを選ぶか!」と息を呑んだ。

「やっぱり、僕と言ったらこれでしょ。ずんさんが大好きなMOTHER2の主人公――ネスくんを使わせていただきます」

「きゃぁあああああっ! さすがはりんご! わがってるぅっ!」

「おぉ、初代スマブラで一番ピーキーなキャラを選ぶとは! 流石はDStarsの格闘ゲームマスター! すごい自信ですねぇ!」

 りんご先輩が選んだのは初代スマブラの追加キャラクター。
 MOTHER2のネスだ。

 性能はうみが言ったようにピーキーの一言に尽きる。
 PK(サイキック)能力で戦う少年なのだが、とにもかくにも技が独特。
 炎を打ち出すPKファイアと、コントロール可能な雷のPKサンダーを使う。

 この中で驚異となるのがPKサンダーだ。

 普通に喰らう分にはたいした威力はないが――この技は自分にも当てられる。
 自機にPKサンダーを当てると、無敵状態になったキャラが突進。その状態で跳ねられた対戦相手のキャラは、大ダメージを喰らって吹っ飛ぶのだ。

 威力は作中でも屈指。
 画面端で喰らえば一発KO(リングアウト)だ。

 さらに軌道をコントロールできるのも地味にいやらしい。
 ステージ復帰しようとするキャラに、確実に当てにいって倒すこともできる。

 うまく使いこなせば、とてつもない攻撃力を発揮するキャラクター。
 難点を上げるなら、PKサンダーのコントロールが難しい(使用中に本体が動作不能になる&独特の癖がある)こと。また、PKサンダーによる突進でリング外に出ると、ステージ復帰が困難になるという点だ。

 まさにスマブラ玄人のためのキャラクター。
 これをあえて選ぶということは、今回の勝負に自信があるということ。

「やっぱり、スマブラはPKサンダー! これで問答無用のKOを狙っていくよ!」

「復帰初回から本気バニですじゃん!」

「僕はゲームに関してはいつも本気だよ。ゲーマーならどんな時でも、全力でプレイしなくちゃゲームにも相手に失礼でしょ?」

 格闘ゲームで多くのゲーマーと戦ってきたりんご先輩。
 彼女の言葉にはずっしりとした重みがあった。

 いつもニコニコと飄々としているりんご先輩。
 彼女らしからぬ真剣な眼差しに、私はおどける余裕もなく「その通りですね」と、VTuberとしてなんの面白みのない返事をする。

 VTuberの前に、ゲーマーとして、人として、負けている。

 本当にこんな人とこれから戦うのか?
 勝てるのか、この勝負?

 牙を剥いた野生のプロ。
 そのオーラに戦慄する私に――「ふっ」とりんご先輩が笑顔を向けた。

「いや、真面目かーい!」

「なんでそこで茶化すんですか! ボケ必要なところでしたかバニ⁉」

 本当に、なにを考えているんだ津軽りんご。
 狙いも、言動も、コラボの意味も、まったくもって私には理解不能だった。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 はたしてりんごの真意は。そして勝負の行方は。
 それはそれとしてみなさんは初代スマブラでは何を使っておりましたか。
 拙者はカービィを使っておりました。(対空力がやっぱり高いのがいいのよね)

 次回、VTuber同士の仁義なき大乱闘がはじまる! ばにらよ頑張れ――という方は、ぜひぜひ評価のほどよろしくお願いいたします。m(__)m
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜
キャラ文芸
東大医学部卒。今は港区の大病院に外科医として勤める主人公。 親友夫婦が突然の事故で亡くなった。主人公は遺された四人の子どもたちを引き取り、一緒に暮らすことになった。 資産は十分にある。 子どもたちは、主人公に懐いてくれる。 しかし、何の因果か、驚天動地の事件ばかりが起きる。 幼く美しい巨大財閥令嬢 ⇒ 主人公にベタベタです。 暗殺拳の美しい跡取り ⇒ 昔から主人公にベタ惚れです。 元レディースの超美しいナース ⇒ 主人公にいろんな意味でベタベタです。 大精霊 ⇒ お花を咲かせる類人猿です。 主人公の美しい長女 ⇒ もちろん主人公にベタベタですが、最強です。 主人公の長男 ⇒ 主人公を神の如く尊敬します。 主人公の双子の娘 ⇒ 主人公が大好きですが、大事件ばかり起こします。 その他美しい女たちと美しいゲイの青年 ⇒ みんなベタベタです。 伝説のヤクザ ⇒ 主人公の舎弟になります。 大妖怪 ⇒ 舎弟になります。 守り神ヘビ ⇒ 主人公が大好きです。 おおきな猫 ⇒ 主人公が超好きです。 女子会 ⇒ 無事に終わったことはありません。 理解不能な方は、是非本編へ。 決して後悔させません! 捧腹絶倒、涙流しまくりの世界へようこそ。 ちょっと過激な暴力描写もあります。 苦手な方は読み飛ばして下さい。 性描写は控えめなつもりです。 どんなに読んでもゼロカロリーです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

ただしい異世界の歩き方!

空見 大
ファンタジー
人生の内長い時間を病床の上で過ごした男、田中翔が心から望んでいたのは自由な世界。 未踏の秘境、未だ食べたことのない食べ物、感じたことのない感覚に見たことのない景色。 未だ知らないと書いて未知の世界を全身で感じることこそが翔の夢だった。 だがその願いも虚しくついにその命の終わりを迎えた翔は、神から新たな世界へと旅立つ権利を与えられる。 翔が向かった先の世界は全てが起こりうる可能性の世界。 そこには多種多様な生物や環境が存在しており、地球ではもはや全て踏破されてしまった未知が溢れかえっていた。 何者にも縛られない自由な世界を前にして、翔は夢に見た世界を生きていくのだった。 一章終了まで毎日20時台更新予定 読み方はただしい異世界(せかい)の歩き方です

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ストランディング・ワールド(Stranding World) ~不時着した宇宙ステーションが拓いた地にて兄を探す~

空乃参三
SF
※本作はフィクションです。実在の人物や団体、および事件等とは関係ありません。 ※本作は海洋生物の座礁漂着や迷入についての記録や資料ではありません。 ※本作には犯罪・自殺等の描写がありますが、これらの行為を推奨するものではありません。 ※本作はノベルアップ+様でも同様の内容で掲載しております。  西暦二〇五六年、地表から高度八〇〇キロの低軌道上に巨大宇宙ステーション「ルナ・ヘヴンス」が完成した。  宇宙開発競争で優位に立つため、日本政府は「ルナ・ヘヴンス」への移住、企業誘致を押し進めた。  その結果、完成から半年後には「ルナ・ヘヴンス」の居住者は百万にも膨れ上がった。  しかしその半年後、何らかの異常により「ルナ・ヘヴンス」は軌道を外れ、いずこかへと飛び去った。  地球の人々は「ルナ・ヘヴンス」の人々の生存を絶望視していた。  しかし、「ルナ・ヘヴンス」の居住者達は諦めていなかった。  一七年以上宇宙空間を彷徨った後、居住可能と思われる惑星を見つけ「ルナ・ヘヴンス」は不時着した。  少なくない犠牲を出しながらも生き残った人々は、惑星に「エクザローム」と名をつけ、この地を切り拓いていった。  それから三〇年……  エクザロームで生まれ育った者たちの上の世代が続々と成長し、社会の支え手となっていった。  エクザロームで生まれた青年セス・クルスも社会の支え手の仲間入りを果たそうとしていた。  職業人の育成機関である職業学校で発電技術を学び、エクザローム第二の企業アース・コミュニケーション・ネットワーク社(以下、ECN社)への就職を試みた。  しかし、卒業を間近に控えたある日、セスをはじめとした多くの学生がECN社を不採用となってしまう。  そこでセスは同じくECN社を不採用となった仲間のロビー・タカミから「兄を探したらどうか」と提案される。  セスは自分に兄がいるらしいということを亡くなった育ての父から知らされていた。  セスは赤子のときに育ての父に引き取られており、血のつながった家族の顔や姿は誰一人として知らない。  兄に関する手がかりは父から渡された古びた写真と記録ディスクだけ。  それでも「時間は売るほどある」というロビーの言葉に励まされ、セスは兄を探すことを決意した。  こうして青年セス・クルスの兄を探す旅が始まった……

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした

仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」  夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。  結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。  それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。  結婚式は、お互いの親戚のみ。  なぜならお互い再婚だから。  そして、結婚式が終わり、新居へ……?  一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?

後宮にて、あなたを想う

じじ
キャラ文芸
真国の皇后として後宮に迎え入れられた蔡怜。美しく優しげな容姿と穏やかな物言いで、一見人当たりよく見える彼女だが、実は後宮なんて面倒なところに来たくなかった、という邪魔くさがり屋。 家柄のせいでら渋々嫁がざるを得なかった蔡怜が少しでも、自分の生活を穏やかに暮らすため、嫌々ながらも後宮のトラブルを解決します!

処理中です...