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10ー2.一番ヤバい奴

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「発情期だってぇぇぇぇぇぇ!?マジすか?え、獣人は全員にあるんすか?見境なく男を食うとか?そんなんすよねぇぇぇ!隠さんでくだせえよ親方ぁぁぁ!」

「バーロー」

ゴチッ――。

「痛っ、何するんすか!暴力反対!」

「てめえには配慮ってもんがねえのか!?レデーの前で、発情期を茶化すんじゃねえ!」

「ぇぇぇぇわ、分かりやしたよ。それとレディーね?レデーじゃなくて」

「っるせえ。さっさと行って来い!」

「あのー、その前に……」

「あんだよ?」

「もしよろしければ服を、一着いただけませんでしょうか。とても寒くて……いえ季節がらではなくて、視線が寒々しくて」

こうして俺は、服を一着手に入れた。
独特の臭いがするとか、そんな文句は言わない。
なんか黄ばんでるとか、そんな文句も言わない。
ただ、あまりにも体格が違いすぎて、俺が貧弱に見えるのだけは勘弁してほしいと思った。
もやしのナムルを思い出したのは、悲しい秘密だ。

「で、なんでお前らも来た?」

「だって私たちはパーティ、仲間だろう?」

「違います。俺はギルド職員です。おっさんから町役場の場所も聞いてるし、わざわざついて来なくてもよかったんですけどねえ」

チラリと残念なヒロインたちに視線を向ける。
どうしてだか、俺を挟むようにレイアとアドミラがいて、シェリスは端に追いやられている。

「ジュンさんに興味がありましてぇ」

「はいはい。たとえ上目遣いで言われても、俺はなびきませんよー。アンタはシェリスと懇ろねんごろなんだからねー」

「え?違いますよぉ?」

「へっ。嘘つけい!シェリスが暴れたのも、お前が誘惑したからだろ!なにしたんだ?シェリスのシェリスをドロドロにして楽しんでたのか?詳しく聞かせろいッ!」

「シェリスちゃんがやたら胸を揉んできましたけど、私は何も」

「胸を……はっ、危ねえ。俺は騙されんぞ!」

「うーん、私は男の人が好きなんですけどねぇ」

「……」

だ、騙されるな俺!落ち着け息子!
これは何かの策略だ!
高度な心理戦の第二幕だな?
よおーし、こちとらラノベとアニメで心理戦は慣れてる。
どのパターンだ?どれで攻めてくる?

「シェリスちゃんは、大好きですよぉ。いたずらが好きなウサちゃんでぇ、妹みたいなぁ」

「そ、そんなクソエロい……妹がいてたまるかぁぁ!なんだ?お前の魂胆を言いやがれ!全部お見通しだぞ!このちんちくりんの服まで剥ぎ取る気だろ!ケツの毛まで毟り取ろってんだな!」

「いえ、私はチェレーブロ商会の娘なので、お金には困ってませんよぉ。」

「チェリー?な、なんだよ。おちょくってるのか?」

「チェレーブロですぅ。私の家族名忘れたんですぅ?」

あー。確かに言ってたな。
アドミラ・チェレーブロって。
てっきり童貞チェリーをいじってんのかと思ったぜ。

「ジュンさん、異世界人なんですよねぇ?日本人……?」

と言って、上目遣いと首傾げのダブルコンボで俺を見つめているわけだ。

くぁぁわいいなあお前は!

クソッ!騙されてるのは知ってる!マジで知ってるけど……ちょっと騙されちゃおう。

「うん。そっすけど」

「ついてったら面白いことが起きそうだなぁって。召喚された人は、面白い発想や行動をしますからねぇ」

「……アドミラさんほどじゃないと思うよ?」

「ぇぇ?変なことしてますぅ?」

「だってほら。さっきから、俺の前に足を出して転ばそうとしてるでしょ?バレてるよバレてないと思った?バカだと思ってる?ねえ?なんなの?止めて……ぶへっ」

「……反応は至って普通ですかぁ。面白くなあい」

「ん、てめえこの野郎!はっ倒すぞボケぇぇぇ!」

コイツ……なんか分かってきたぞ。
冒険者になったのも、シェリスを可愛がってるのも全部分かった!
ドSの卵なんだ。
面白そうとか言ってるから、本当に興味があるのは間違いないのかもしれん。
けど、そこになんの歯止めもかけないんだコイツ。

どんな反応をするのか、どんな顔を見せるのか。
それを見たいから、試してみた。

はっ!もしかして雑草汁も……。

「なんですかぁ?」

分かってて……俺たちの反応を見るために!?

一番ヤバいのは、怪力のシェリスでも、ドジッ子のレイアでもなく、コイツだ。

しかも商会のご令嬢……。
え?怖っ。
ないよなそんなこと。
まさかな。

まさか、興味があって人を殺したとかないよな?
商会の金でもみ消したとか……。

「フフ」

「あ、怖っ」





――――作者より――――
最後までお読みいただき、ありがとうごさいます。
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お手数だとは思いますが、何卒よろしくお願いします!
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