ハルカ・カナタの宇宙戦争

morikawa

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第1章

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 結構疲れちゃってたのか緊張が解けたせいなのか分らないけど、その後私はシャワーも浴びずにリビングのソファーで寝てしまった。

 夕方、お母さんがパートから帰ってくるまで何時間も寝ちゃったみたい。起きたらすぐ傍にハルカが居てくれた。

「おひゃよう…」

 寝ぼけた私の挨拶に、ハルカはくすりと笑いながら、

「もう夕方ですけどね。おはようございます、カナタ」

 と返事をくれた。私は小さくあくびをしながら体を起こして、

「なんだか全部夢みたいだね」

 と呟いた。

「そうですね、全部夢のようです。遥か彼方から、ここに、カナタの元へ来られて良かったと思います」

 ハルカもそう呟くように言う。

「まあ、私達の名前だしね」

「そう言えば、そうですね」

 私達はくすくすと笑った。お買い物してきた食材を冷蔵庫に入れていたお母さんが怪訝な顔で私達を見る。

 それが可笑しくて、私達はもっと大きな声で笑ってしまった。ごめんね、お母さん。

 お父さんも帰ってきて、皆で夕ご飯を食べて、いつものように二人でお風呂に入って。それから私達はベランダで缶ジュースを片手に夜空を見上げた。

 金星は西の山の向こうへ消えてしまったけど、替わりに土星が東の空から上ってきている。

「あんな所へ本当に行ってきたんだね~」

 私はぼんやりと夜空を見上げたまま、ハルカへ呟くように言う。

「そうですね。でも、カナタはもっともっと遠くへ、本当に遥か彼方へ行くことになるかもしれません」

「え、何で?」

「父が、私を造ってくれた人がそう言ったのです」

「ふ~ん?」

 私は同じように遠くの夜空を見ながらそう答えたハルカをちょっと見てから、良く分かんなくて、とりあえずそう返事をする。それからまたハルカの見上げる方を向きながら訪ねた。

「私が望めば、ハルカが連れてってくれるの?」

「ええ、もちろん。私はずっとカナタと一緒に居ますから」

 ハルカは私の方を向いて微笑みながら、そう言ってくれた。

「ありがと。じゃ約束」

「はい、約束です」

 私達は小指を絡めた。

 爽やかな風が静かに吹く。そしてどこからから虫の鳴く声が聞こえてきた。昼間のドタバタからは想像も付かない、静かな静かな夜だった。
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