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出会い編
17.
しおりを挟む青い空。白い雲。清々しい風。
あと1歩踏み出せばもうそこは『城下町』
「ヴィー楽しんでこいよ!」
「お話待ってるわ!」
「うん!いってくる!」
ロイ達に見送られ僕はアマンダとエルザ、ユリと数人の『騎士』という人達と教会にいく。
なんでもロイたちと、今日いく教会はしゅうは?が違うから入れないらしい。難しいね。
今日はいつもよりおめかししてるらしい。
言われてみればいつもは身につけないものをつけている。
教会に入るためには首からクロスとやらをつけなければならないらしい。そして僕は光の御子だから顔を隠すベールをつけないとならないらしい。なんでも女神様の顔と僕の顔は似ているからあまり人には見せたらダメらしい。よくわかんないけどそういうものらしい。
黒地のポンチョと膝丈のズボン。ポンチョの下に来ている白いブラウスの襟だけを出す。これぞ合法ショタ!!
ってさっきユリが叫んでたけどどういう意味なのかよくわかんなかった。ロイに聞いてみたけどなんでも知ってるロイでも知らないらしい。でも顔が引き攣ってたから本当は知ってるのかも知れない。
「ヴィー気をつけてね」
「うん。お話するから待っててね」
ロイとも別れの挨拶をしたらアマンダに手を引いて貰って僕は初めてお城から出た。いや、実際には処刑の際に出たのだがあの時はよく分からないまま抱えられて処刑台に下ろされただけなので外に出た、というより部屋の外が珍しくて白の外にでたという自分の状況が分かってなかった。
だから自分の意思で外に出るのはとても緊張する。
城の外は1歩出ただけで空気が変わったように感じた。少し怖くなって握っているアマンダの手を握りしめると優しく頭を撫でてくれた。
いつものアマンダの優しい手だ。
それだけで単純な僕は安心してどんどん足を出して教会に向かい始めた。
この2日で城下町について少しだけ学んだ。
街では『お店』や『屋台』で物を売ってるらしい。アマンダの描いてくれた絵からなんとなく判断できた。
おじさんおばさんが大きな声で何かを喋ってるのが聞こえる。ベールのせいでよく前が見えないため聴力と嗅覚だけが頼りだ。
大きな声でガラガラした声なのに両親とは違う。なんだかアルみたいな雰囲気だ。アルは頭を撫でる時も雑だし口も悪いけど嫌じゃない。ロイとは違う安心感がある。
なんだかアルに会いたくなってきた。
教会へは思ったよりも早く着いた。
ここにいる女の人はシスターで男の人はファーザー、教会で働く人全体を表す時はクレリックって言うらしい。でもファーザーよりは神父って言う時の方が多いらしい。混乱しちゃうね。
教会の入口まで出迎えに来てくれた。
「ようこそ我が教会へお越しくださいました。その御本に傅く名誉を頂けたことに深い感謝を。」
そう言って神父様が膝を立てると他のクレリックも同じように膝を立てクロスを頭の上に翳して目を閉じた。
僕はどうしたら良いか分からなくてアマンダをみる。
アマンダは優しく笑って言う内容を教えてくれた。
「敬虔なるクレリックに深い慈悲を」
クレリックしか意味が分からなかったけど皆には伝わったのが泣きながら感謝された。後でこの意味聞きたいな。
教会の中はとても美しかった。
天井には絵が描かれていて窓はいろんな色がキラキラしていた。
「…アマンダあれ…なに?」
「あれはフレスコ画っていう絵です。神様たちの絵ですね。あれはステンドグラスって言っていろんな色の硝子を嵌め込んでるんですよ。」
きれい、じゃあ伝わらない。
きれいだけどきれいじゃないんだ。きれいなだけじゃないんだ。
ここはダメだ。ここは不浄だ。だが、だからこそ惹き付けられる。
ステンドグラスの赤は親と妹のあの日の血の色だ。
青は母上が僕の指を切り落とした時のナイフの色だ。
緑は父上が僕で実験した薬草の色だ。
黄はあの部屋で僕をうっとりと見つめ愛を語った妹の色だ
白は昔父上の連れてきた男に咥えさせられたモノからでた液体の色だ
これは不浄だ。
ここはダメだ。
本能が知らせる。逃げないと。ここにいてはいけない。なのに動けない。
こんなに汚いのに目が離せない。
これは醜くて美しい
目が___離せない___
「シルヴィア様!?」
「……ぇ……あ……」
アマンダが僕の肩を掴む。途端、吸い込まれてしまいそうだった意識が戻ったことが分かった。
心配そうに顔を覗き込むアマンダの手を震える手で握った。
怖い、恐い。ここは怖い。この空間は嫌だ。
怖くて身体が震える。いやだ。いやだ。
「エル=サンティシエラ=ル=ディラ=ヤハネ=シルヴィア」
「……ぇ?」
「教会でミサに参加すると教えて貰える呪文の1つです。心を落ち着かせる効果があるそうですよ」
アマンダが優しく抱きしめて教えてくれる。
「……シルヴィア……?」
「はい。これは古代語で『常世を照らせ。光へ誘え。夢見る子らに癒しの風を。』となるのです。シルヴィアは癒しの風の部分ですね」
癒しの風……シルヴィア……僕の名前……
まだ呼ばれ慣れてない名前だけど少し嬉しくなった。この呪文覚えたいな。それで、ロイ達に教えてあげる。心が落ち着いてくれたらいいね。
いつの間にか震えは止まっていた。
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