牢獄の王族

夜瑠

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出会い編

10.

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光の御子

遠い遠いまだ神々と共に人間が過ごしていた頃、聖女が神の国を守り女神の寵愛を受けたことから始まりその祝福を受けたものは様々な加護を受けるとされている。この話から誤解されがちではあるが光の御子になれるのは決して女だけではなく過去には男の御子も存在した。どちらかと言うと男の割合の方が多いとされている。

話を戻して、

『光の御子は穢れない』

この格言があるように光の御子の身体には一切の傷が付かずどんな劣悪な状況でも身体は清潔に保たれるらしい。

そして皆が光の御子と聞いて1番に思い浮かべるのは『豊穣の祝福』だろう。
光の御子が認めた領主の土地は作物がよく実り、自然が輝き、人々に活気をもたらす。

だが依然として光の御子については分からぬ事の方が多い。何故なら光の御子はどの国に生まれたとて王家がすぐさま保護し離宮へと隠してしまうからだ。
よって我々研究者は数少ない資料や街で耳にした噂での憶測しか出来ない。

そしてその噂も多くが『光の御子と体の関係を持った』人物の話だ。
これは真偽が判断できない噂だ。
光の御子とは穢れなき存在。それが性を貪るなど認めにくい話だ。だが光の御子は性別を問わず一貫して傾国の美人である。その色香に惑われるとするのもまた頷ける話であるのだ。

私の研究結果が正しいのかは私にも誰にも、既に100年光の御子が現れなくなってしまった現在分からない。しかし、これだけは言える。光の御子は国土に安寧を与える救済者であると同時に、その時代の人々は光の御子を取り合い争いを起こす火種でもあるということだ。

      『ロイス=フーコー 光の御子の研究』より




「こりゃあ……たまげたな」

今日は朝から服を脱がされ初めてみる老人に観察されています。
けんこうしんだん、というらしい。意味はしらない。

「たまげた、とは?」
「あぁ…話に聞いておったこの子の知識の欠如率と実際みたあの地下牢の環境からどんな病にかかっておってもおかしくはないんじゃが、病気どころかかすり傷ひとつない綺麗な肌じゃ。肉がついてないのと肌荒れで分かりにくいが。」

老人は朝からずっと僕の身体を見てはほぉ、とかはぁ、とか言ってる。口の中も見られた。ご飯食べてるとでも思われたのかな?わざわざ光を当てなくても食べてないのに。

「そう言われれば確かに傷一つないね…」
「あの格言通りってこと?」
「『光の御子は穢れない』ってやつか……」
「あれ本当だったんだ……」

また言ってる。よくわかんないけどたまに使用人さんは僕のことを『みこさま』って呼ぶ。その度にシルヴィアだよって言うのにみこさまってよぶ。
僕はシルヴィアでヴィーでおーじでみこさま?意味わかんない。でもアマンダはこの前僕はもうおーじじゃなくなったって言ってた。なんでだろ?僕はおーじだって老人は教えてくれたのに。


「……ふむ、御子様ちょっと失礼しますぞ」


この老人は『せんせい』って言うらしい。老人だけどせんせい。難しい。

せんせいはナイフみたいなので僕の手首を浅く切った。突然だったからびっくりした。

「なっ…!?何してるんだ!!」

「え、ヴィーの背中に何か浮かんで……」

「魔法陣……?」

「やはり、か…。三傑殿、これは元王国宮廷魔道士の開発した魔法陣で類似のものが王城で務めておった使用人の身体からも発見されておる」

「本当か!?それでこれはなんの魔法陣なんだ!」


急に皆が騒ぎ出した。まだ言葉を理解するのは難しいからゆっくり分かりやすく喋ってほしい。でもまほーじんっていうのは聞き取れた。確か僕の目にもあるんだよね?見たことないけど。

「これは……痛覚麻痺の魔法陣。魔力が高ければ高いほどその威力を発する。痛みを感じにくくなる。そして光の御子の魔力は計測不能レベルとされている。つまりなにをされても痛みを感じない……」

「……そういえばヴィーは全然痛がってなか……え?今、手首から血でてたよね…?」

あ、_た。けどなんでか皆僕の手首をみて固まってる。何かあったかな?

「な、なんで……傷がんだよ……!!」


?きず?きずってなに?

「『光の御子は穢れない』って傷も残らず秒で治るってこと……?」

「おそらくは……だからこそあの環境で生きていけたのでしょう…光の御子であるがゆえに……そして使用人には認識麻痺の魔法陣が描かれてました。これは思考が鈍り自分がしていることについて考えられなくなります。そのためシルヴィア様の環境についてもメイドは王の慰みものにされても何の意見も出なかったのだと思われます……」

「……だ、だが老執事がシルヴィアのことを教えてくれた…彼はなんだと言うんだ……」

「おそらく他国の使者を迎えるときに全員が思考が停止していると問題が起きた時対処出来ないため1人残しておいたのでしょう。そして死体を見ると彼には隷属の紋がありました。これは……言わずもがなでしょう。」

また難しい話……
僕の話してるのかと思ったのに…

この部屋にはアマンダもいないからつまんない。
アマンダこれが終わったらまた抱きしめてくれるかな?抱きしめてお疲れ様でしたって言ってくれるかな?

はやくアマンダのとこいきたいなー…





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