牢獄の王族

夜瑠

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出会い編

3. other side

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初めてこの国に怒りを覚えたのは5歳の頃だった。

幼い頃村で畑を耕して皆で協力して生きていた。今思えば不自由なことばかりだったけど贅沢を知らなかった俺は特になんの不満もなく生きていた。


いつものように村の子供たちと山や川で遊んでいた時、どこからか矢が飛んできて1人の腕に刺さった。

俺たちは冒険者でもがこの当たりは武器を使っちゃいけないっていう決まりを知らずに獲物に放ってしまった矢だと思っていたがそこには肥太った男とその従者がこちらに矢を向けていた。

「動くでないぞー?矢が外れてしまうではないか。」

にちゃにちゃと気色悪い笑みを浮かべた男に混乱しパニックに陥り俺たちは何が何だか分からないまま泣き叫んで逃げた。


俺は山の中の洞窟に逃げた。そこに数人の友もいた。
俺たちは何を言うでもなくただ身体を丸めて震えていた。


日が沈むころ息を殺して村へ戻るとそこは酷い有様だった。
女は大人から子供まで中には男まで皆犯され、そして全員殺されていた。思わず挙げそうになった悲鳴をなんとか押し殺し当たりを見渡せば少し遠くから奴らの声が聞こえた。

「流石国王様!素晴らしい弓の腕前ですね!そして女の悦ばせ方もご存知でいらっしゃる!!素晴らしい!!」

「そう事実を述べるでない。城に居る『練習台』は動かぬからつまらんかったがやはり動く的はいいのぉ。そしてみすぼらしい女共も最高じゃな。貴様も男なんぞ犯しておらずに女を犯せばいいものを。」

「いや、意思の強いものが痛みと屈辱と少しの快楽にプライドをへし折られるところが好きなんですよ!それには男が1番ですからな!」


……国王?この豚が?

奴らの会話は続いていたが聞く気にはなれなかった。王様って人々のために心を砕く人なんじゃないのか?こんな、こんな国……終わってるじゃないか……


奴らが去ったあとの村は地獄だった。何かの薬を使われたらしく皆が快楽を求めて身体を貪りあった。

そこには村1番の戦士の姿もあった。精悍な顔はどこへ行ったのかだらしなく喘ぐ姿に俺たちは何も出来なかった。しかし1番に正気に戻ったのも彼だった。

まだ薬が抜けきっておらず辛そうにしながら俺たちを村の外へ誘導してくれた。村の保管庫から全ての財産を俺たちに託し、自分が常に自慢し整備していた剣や村の武器、食料など身体を引き摺りながら用意してくれた。

「この村はもうダメだ……いや、国は終わった…隣国へ行け。幸いここは国境に近い。きっと隣国なら助けてくれるから」

大きく肩で息をしながら彼は俺たちを村唯一の馬車に乗せ送り出した。


彼の言う通り俺たちは隣国へ行った。そこで俺たちの暮らしの異常さを知った。豊かな食事、保証された暮らし、各村に配置されている警備兵。全て俺達にはなかった。
子供に食事を渡し自らは1日1食食べれば良い方の母親、朝から日が暮れるまで栄養のない畑を耕し月に1人は害獣に殺されていく父親、ただでさえ少ない作物は税としてとられていく。

それが当たり前だと思っていた。王都の暮らしなど知る機会すらなかったから。


噂で未だ変わっていない王国の暮らしを聞く度怒りと罪悪感に苛まれた。

俺たちはまだ苦しむかつての俺たちを横目に豊かな暮らしをしている…。

保護してもらった協会の一室で俺たちは王国への怒りを語り合った。そして革命軍の設立に至った。

仲間はすぐに増えた。
何度か諍いは起きたが皆目的の為に結束した。

そのまま流れで俺はリーダーになった。

俺は元の名を捨てかつて俺たちを逃がしてくれた戦士の名を名乗った。

彼のような強い戦士になるために。


王国に戻り故郷の村に立ち寄ると村人は全員死んでいた。俺達が全ての食糧を持っていったからだろう。
そして全員の墓があった。
木に石で掘ったであろう墓標に家族の名を見つけた。

俺たちは泣いた。泣き喚いた。


そして1つの白骨化を初めていた死体を見つけた。

肉は腐り虫に食われていたけれどそれは彼だった。
彼がいつも着ていた服の端切れがあった。

彼は最後まで村の戦士であった。
俺たちは彼の墓を掘った。そして長い時間そこで手を合わせていた。



俺たちはこの国への怒りを更に滾らせ革命軍のメンバーを増やしていった。

そして俺たちは城内で王家の闇を見つけた。

薄暗い地下でこの国の犠牲として生きる少年を。



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