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八
熱い夜
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まさか、こんな事態になろうとは……
巧のマンションから戻ると、ドッと疲れが出てベッドに倒れ込んだ。
巧と私が恋人に……?
今までの関係を覆すような事態に、頭がパンクしそうだ。
とりあえず、今、巧の件を考えるのはやめておこう。
返事はまだいいと言っていたし、と自分に言い訳すると、頭の片隅に追いやった。
そして、ムクッと起き上がると、いつものようにお風呂に入って、髪を乾かし、歯を磨いて、パジャマに着替えてベッドに潜る。
藤原晃成の香りがするベッドに顔を埋めると、無性に彼が恋しくなった。
今夜、彼は帰って来るだろうか?
引っ越しのことをどう伝えよう?
私の引越しに、彼はホッとするだろうか?
そんなことを考えていると、いつの間にか眠ってしまったらしい。
私の髪に触れる指、僅かに軋むベッドの音で、目を覚ました。
すぐ側に、彼が立っていた。
すごくすごく会いたかった彼がすぐそこに……
暗闇の中で、ベランダに続く窓から差し込む月の灯りが、彼の整った顔を神秘的に照らす。
手を伸ばすと消えてしまいそうで、私はいつまでもそのまま見つめていたかった。
不意に彼が目を閉じ、辛そうに顔が歪む。
彼の手が、額を押さえた。
「大丈夫?」
私は彼に話しかけた。
突然の声にビクッとして、彼が私を見る。
「起きていたのか?」
彼はしまったというような顔をしている。
私に会いたくなかった……?
「久しぶりだね」
チクっと傷んだ胸を隠して、私は明るく言った。
「そうだな……」
彼が顔を逸らし、気の無い返事をする。
以前だったら、彼はすぐ私の隣に座ったのに。
「座ったら?」
じれったくなって、私はベッドの上に彼を促した。
「まだ、仕事が残っているんだ」
落ち着きなさそうに、彼がベッドから離れようとする。
「行かないでっ」
私は咄嗟にベッドから手を伸ばして、彼の袖を掴んだ。
「……キッチンに行くだけだ」
彼が困惑して、私を見る。
そんなのは分かっている。
でもここで彼と話をしないと、ダメなような気がしてならない。
「アパートを見つけたの。契約も――」
私は早急に要点を言って、彼を引き止めた。
効果はてき面だった。
彼が表情を変える。
予想に反したのは、彼がショックを受けたように青ざめたことだ。
「出て行くのか?」
彼が聞き返す。まるで出て行って欲しくないみたいに。
「……行って欲しくないの? 私を避けていたのに?」
私は身体を起こし、単刀直入に聞いた。
「避けていたのは、悪かった」
彼が観念したように認め、ベッドに腰掛ける。
「……限界だったんだ」
「何が……?」
検討もつかないでいると、私の首筋に彼が顔を埋めた。
私の心臓がキュンと跳ね上がり、そのまま大きな音をたて続ける。
彼の愛撫だけでもショック死しそうなのに、囁かれた彼の次の言葉がとどめを刺す。
「――君を抱けないのが」
ここで私の頭がショートしてしまったのが、いけなかった。
私の沈黙を拒否ととると、彼が立ち上がり離れる。
「……今のは忘れてくれ」
分かっていたように、彼が呟く。
私に背を向け、去ろうとした。
違うのに……彼に触って欲しいのに……思うように声が出ない。
もどかしくて、私は彼に後ろから抱きついた。
彼の身体が強張る。
「……抱いて」
ようやく私の口から、小さな声が出た。
「――え?」
聞こえたことが、幻覚かどうか確かめるように彼が聞く。
「抱いて」
もう少し大きい声が出た――と思ったら、私は押し倒され、彼にキスをされていた。
彼の舌が容赦なく私の唇に割って入り、彼の手が私のパジャマの中に侵入する。
胸に直に触る彼の手。
首筋にかかる彼の熱い息。
悶える私の甘い声。
彼の手が急くように私からパジャマを剥ぎ取り、私の身体を彼の目に晒す。
「もう一度見たかったんだ。君の裸を」
愛撫を中断した彼が、私から身体を起こした。
何も纏ってない私の身体を彼の視線が舐め回す。
ボッと身体中が赤くなるのを感じた。
こんなの恥ずかしすぎる……
彼はまだ服を着たままなのに。
「……ズルイ。私だけ」
「だったら、脱がせてみろよ」
意地悪い笑みを浮かべ、彼が挑発する。
えええっ? と私は胸の中で叫んだけど、いつもと違う一面を見せる彼をもっと見たくて……
とことん見たくて……
私は彼のシャツのボタンを外し始めた。
一つ目、二つ目と外すごとに、彼の息が上がっていくのを感じる。
四つ目を外すと、彼の指が私の背中の上でツーっと下へ動き、私の気が逸れた。
彼の指が私の中を愛撫し、私から喘ぎ声が漏れる。
ボタンを外せなくなった私の唇を貪ると、苦しそうな表情で彼が指を離した。
「悪い、もう……」
ベッド脇の引き出しに手を伸ばし何かを取り出すと、服を脱ぎ捨てる。
私に覆いかぶさると余裕なさそうに、彼が私の中に入ってきた。
乱れる彼の呼吸。私を感じる彼の表情――
奥へと激しく突き上げ、彼が私を満たしていく。
甘美な波が一気に押し寄せ、彼が私の上に果てた。
巧のマンションから戻ると、ドッと疲れが出てベッドに倒れ込んだ。
巧と私が恋人に……?
今までの関係を覆すような事態に、頭がパンクしそうだ。
とりあえず、今、巧の件を考えるのはやめておこう。
返事はまだいいと言っていたし、と自分に言い訳すると、頭の片隅に追いやった。
そして、ムクッと起き上がると、いつものようにお風呂に入って、髪を乾かし、歯を磨いて、パジャマに着替えてベッドに潜る。
藤原晃成の香りがするベッドに顔を埋めると、無性に彼が恋しくなった。
今夜、彼は帰って来るだろうか?
引っ越しのことをどう伝えよう?
私の引越しに、彼はホッとするだろうか?
そんなことを考えていると、いつの間にか眠ってしまったらしい。
私の髪に触れる指、僅かに軋むベッドの音で、目を覚ました。
すぐ側に、彼が立っていた。
すごくすごく会いたかった彼がすぐそこに……
暗闇の中で、ベランダに続く窓から差し込む月の灯りが、彼の整った顔を神秘的に照らす。
手を伸ばすと消えてしまいそうで、私はいつまでもそのまま見つめていたかった。
不意に彼が目を閉じ、辛そうに顔が歪む。
彼の手が、額を押さえた。
「大丈夫?」
私は彼に話しかけた。
突然の声にビクッとして、彼が私を見る。
「起きていたのか?」
彼はしまったというような顔をしている。
私に会いたくなかった……?
「久しぶりだね」
チクっと傷んだ胸を隠して、私は明るく言った。
「そうだな……」
彼が顔を逸らし、気の無い返事をする。
以前だったら、彼はすぐ私の隣に座ったのに。
「座ったら?」
じれったくなって、私はベッドの上に彼を促した。
「まだ、仕事が残っているんだ」
落ち着きなさそうに、彼がベッドから離れようとする。
「行かないでっ」
私は咄嗟にベッドから手を伸ばして、彼の袖を掴んだ。
「……キッチンに行くだけだ」
彼が困惑して、私を見る。
そんなのは分かっている。
でもここで彼と話をしないと、ダメなような気がしてならない。
「アパートを見つけたの。契約も――」
私は早急に要点を言って、彼を引き止めた。
効果はてき面だった。
彼が表情を変える。
予想に反したのは、彼がショックを受けたように青ざめたことだ。
「出て行くのか?」
彼が聞き返す。まるで出て行って欲しくないみたいに。
「……行って欲しくないの? 私を避けていたのに?」
私は身体を起こし、単刀直入に聞いた。
「避けていたのは、悪かった」
彼が観念したように認め、ベッドに腰掛ける。
「……限界だったんだ」
「何が……?」
検討もつかないでいると、私の首筋に彼が顔を埋めた。
私の心臓がキュンと跳ね上がり、そのまま大きな音をたて続ける。
彼の愛撫だけでもショック死しそうなのに、囁かれた彼の次の言葉がとどめを刺す。
「――君を抱けないのが」
ここで私の頭がショートしてしまったのが、いけなかった。
私の沈黙を拒否ととると、彼が立ち上がり離れる。
「……今のは忘れてくれ」
分かっていたように、彼が呟く。
私に背を向け、去ろうとした。
違うのに……彼に触って欲しいのに……思うように声が出ない。
もどかしくて、私は彼に後ろから抱きついた。
彼の身体が強張る。
「……抱いて」
ようやく私の口から、小さな声が出た。
「――え?」
聞こえたことが、幻覚かどうか確かめるように彼が聞く。
「抱いて」
もう少し大きい声が出た――と思ったら、私は押し倒され、彼にキスをされていた。
彼の舌が容赦なく私の唇に割って入り、彼の手が私のパジャマの中に侵入する。
胸に直に触る彼の手。
首筋にかかる彼の熱い息。
悶える私の甘い声。
彼の手が急くように私からパジャマを剥ぎ取り、私の身体を彼の目に晒す。
「もう一度見たかったんだ。君の裸を」
愛撫を中断した彼が、私から身体を起こした。
何も纏ってない私の身体を彼の視線が舐め回す。
ボッと身体中が赤くなるのを感じた。
こんなの恥ずかしすぎる……
彼はまだ服を着たままなのに。
「……ズルイ。私だけ」
「だったら、脱がせてみろよ」
意地悪い笑みを浮かべ、彼が挑発する。
えええっ? と私は胸の中で叫んだけど、いつもと違う一面を見せる彼をもっと見たくて……
とことん見たくて……
私は彼のシャツのボタンを外し始めた。
一つ目、二つ目と外すごとに、彼の息が上がっていくのを感じる。
四つ目を外すと、彼の指が私の背中の上でツーっと下へ動き、私の気が逸れた。
彼の指が私の中を愛撫し、私から喘ぎ声が漏れる。
ボタンを外せなくなった私の唇を貪ると、苦しそうな表情で彼が指を離した。
「悪い、もう……」
ベッド脇の引き出しに手を伸ばし何かを取り出すと、服を脱ぎ捨てる。
私に覆いかぶさると余裕なさそうに、彼が私の中に入ってきた。
乱れる彼の呼吸。私を感じる彼の表情――
奥へと激しく突き上げ、彼が私を満たしていく。
甘美な波が一気に押し寄せ、彼が私の上に果てた。
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