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三
彼とハイキングすることになるなんて!?
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彼とドライブすることでさえ気が引けたのに、ハイキングまでするはめになるなんて。
レザーのバッグを腕に下げ、ビジネスバッグを肩に掛けた彼と、いざ「冒険コース」と傾いた看板で指された道を下り始めた。
セピア色に包まれた思い出のハイキングコースは、昔より荒れていた。
草木が生い茂っていて、道を狭めている。所々、倒れた枯れ木が道を塞いでいる。
時折マキシ丈のスカートが木の枝に引っ掛かり、私の足が取られた。
その度に、彼が後ろから私の体を支え、触れられる度に、彼を意識してしまった。
できるだけつまずかないように、片手でスカートの裾を持ち上げ、足元に細心の注意を払って歩いていると――
気のせいか、道が険しくなってきた。
木に結ばれ、コースを誘導していた赤いリボンも、気が付くとなくなっている。
薄暗くなる中、既に五十分は歩いているはずなのに、一向に人口の灯りは見えてこなかった。
下り坂のはずが何故か上り坂に変わり、それが延々と続いたとき、私はついに立ち止まった。
彼が私の後ろで立ち止まる。
「……まさか、迷ったんじゃないだろうな」
「……そのまさかなんだけど……」
一寸も無駄にせず、彼がくるりと向きを変えて歩き始める。
「来た道を戻るしかない」
「ごめんなさい」
本当にごめんなさいと謝りながら、彼の後を追った。
途中、道を塞ぐ倒木を跨ぐ。
お約束のように、スカートの裾が枝に引っ掛かり、私はぬかるみに足を滑らせながら木の幹に尻餅をついた。
ついでに、太ももを擦りむきながら大胆に。
キャーと山をこだまする私の悲鳴に、当然、彼が振り向く。
彼の視線は何故か私の太ももに……?
ハッとすると、めくれ上がったスカートをサッと戻した。
「立てるか?」
私から斜め下に視線を逸らし、きまり悪くしながら彼が私に手を差し出す。
太ももを見られた恥ずかしさを噛み締めながらも、その手を取って立ち上がったとき。
スカートの裾を踏んでしまった。
再び私は足を滑らせ、前屈みに転んでしまう。
今度は彼を巻き添えにして。
次の瞬間、私は絡み合うように彼と重なっていた。
思いっきり、彼の胸に顔を埋めながら。
鼻を微かににくすぐるビターな香り……
甘美な居心地の良さに包まれ、私の唇から吐息が漏れる……
「……押し倒されたのは初めてだ」
真下で彼の呟く声が聞こえた。
「お、押し倒してなんか……」
「ごめんなさいっ」と体を起こした。
と同時に、何故かグィッと彼に手首を捕まれる。
また彼の胸に顔を埋めそうになって、地面に片手を突いて衝突を食い止めた。
「な、何?」
顔を上げと、彼の目とぶつかった。
彼の目が今までと違った色を帯びているような気がして、目を逸らせなかった。
ジンとした痺れを彼の手から感じる。
「……スカートが長すぎるんだ」
数秒後、彼が言った。
私の手首を掴んだのは、それを言うためだというように。
ドギマギする私を放し、スーツの泥を払いながら彼が立ち上がる。
「歩きやすいように、裾を結んで短くした方がいい」
私に背を向け、彼が言った。
私も何事もなかったように泥を払う。
素直に彼のアドバイスに従い、スカートの裾を結んだ。
レザーのバッグを腕に下げ、ビジネスバッグを肩に掛けた彼と、いざ「冒険コース」と傾いた看板で指された道を下り始めた。
セピア色に包まれた思い出のハイキングコースは、昔より荒れていた。
草木が生い茂っていて、道を狭めている。所々、倒れた枯れ木が道を塞いでいる。
時折マキシ丈のスカートが木の枝に引っ掛かり、私の足が取られた。
その度に、彼が後ろから私の体を支え、触れられる度に、彼を意識してしまった。
できるだけつまずかないように、片手でスカートの裾を持ち上げ、足元に細心の注意を払って歩いていると――
気のせいか、道が険しくなってきた。
木に結ばれ、コースを誘導していた赤いリボンも、気が付くとなくなっている。
薄暗くなる中、既に五十分は歩いているはずなのに、一向に人口の灯りは見えてこなかった。
下り坂のはずが何故か上り坂に変わり、それが延々と続いたとき、私はついに立ち止まった。
彼が私の後ろで立ち止まる。
「……まさか、迷ったんじゃないだろうな」
「……そのまさかなんだけど……」
一寸も無駄にせず、彼がくるりと向きを変えて歩き始める。
「来た道を戻るしかない」
「ごめんなさい」
本当にごめんなさいと謝りながら、彼の後を追った。
途中、道を塞ぐ倒木を跨ぐ。
お約束のように、スカートの裾が枝に引っ掛かり、私はぬかるみに足を滑らせながら木の幹に尻餅をついた。
ついでに、太ももを擦りむきながら大胆に。
キャーと山をこだまする私の悲鳴に、当然、彼が振り向く。
彼の視線は何故か私の太ももに……?
ハッとすると、めくれ上がったスカートをサッと戻した。
「立てるか?」
私から斜め下に視線を逸らし、きまり悪くしながら彼が私に手を差し出す。
太ももを見られた恥ずかしさを噛み締めながらも、その手を取って立ち上がったとき。
スカートの裾を踏んでしまった。
再び私は足を滑らせ、前屈みに転んでしまう。
今度は彼を巻き添えにして。
次の瞬間、私は絡み合うように彼と重なっていた。
思いっきり、彼の胸に顔を埋めながら。
鼻を微かににくすぐるビターな香り……
甘美な居心地の良さに包まれ、私の唇から吐息が漏れる……
「……押し倒されたのは初めてだ」
真下で彼の呟く声が聞こえた。
「お、押し倒してなんか……」
「ごめんなさいっ」と体を起こした。
と同時に、何故かグィッと彼に手首を捕まれる。
また彼の胸に顔を埋めそうになって、地面に片手を突いて衝突を食い止めた。
「な、何?」
顔を上げと、彼の目とぶつかった。
彼の目が今までと違った色を帯びているような気がして、目を逸らせなかった。
ジンとした痺れを彼の手から感じる。
「……スカートが長すぎるんだ」
数秒後、彼が言った。
私の手首を掴んだのは、それを言うためだというように。
ドギマギする私を放し、スーツの泥を払いながら彼が立ち上がる。
「歩きやすいように、裾を結んで短くした方がいい」
私に背を向け、彼が言った。
私も何事もなかったように泥を払う。
素直に彼のアドバイスに従い、スカートの裾を結んだ。
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