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第二章 動き出す関係(溺愛
④
しおりを挟む志麻子とマイサラン・ディの2人分の驚く声が上がる。
「あ。えっと。私が、ジュースと間違えて、お酒を飲んでしまって。保護者的な意味で責任感を感じているようなのです。未成年を放置して、酔わせるなんて、行為云々を置いておいても褒められないですし。殿下は私を今日は手放さないのでしょうか?」
志麻子はマイサラン・ディがコーヒー貿易の発端を作ってくれたこともあり、彼が望むのであれば俺にダンスくらい踊ろうと思うが・・・。
誠一は志麻子を放さない。
そんな様子に男女問わず周囲から視線は集まった。
「あらあら。皇子はその女性に好意を持っているのかしら?」
「まぁ。自分のお手元に女性をとどめるだなんて初めての事でございますね」
周囲のからの声に志麻子は焦った。
貿易は広げたい。
領地を反映させたい。
けれども、誠一の婚約者としてではない。
一人の伯爵令嬢として、誠一にいつでも婚約破棄をされてもいいように立ち居振る舞いたいのだ。
「誠一は彼女をいつ解放するんだ?いつも、数週間から数か月で解任しているよな?」
マイサラン・ディは誠一をまっすぐ見て言う。
彼も一国の皇子。
そして、この様子からしてきっとマイサラン・ディ殿下は誠一殿下と年齢も近そうだし。
仲がきっといいはず。
「解放してやれ」
「解放?まるで、婚約者を俺が捕えているような言い方だな」
「違うのか?」
「あぁ。志麻子は俺が望んで側にいてもらっている」
そういって、脇に置く志麻子をくるっと自分の前に立たせるとその頬に手を置く。
そして、そっとその額に唇を落とした。
「せ、せ、せ、せ、誠一皇太子殿下っっ」
体中の血液が物凄い勢いで全身を駆け巡るのが分かった。
あまりの緊張、驚き、そして羞恥心から真っ赤になり足が震える。
「大丈夫か?」
誠一は想像以上の反応に目を見開くと、志麻子を抱き上げた。
「そろそろ。解散の時間だ。今日は少し早いが失礼する」
一度に誠一はにこやかに挨拶をすると、そのまま会場を後にした。
確かに夜会の解散までは30分ほどであり、そろそろ帰りだす人もいる。
「なっ、なっ、せ、誠一皇太子殿下におかれましては・・・。酔っ払ってます?」
車に乗るなり志麻子は声を上げた。
「そんなに驚くことか?」
「勿論です!あなた、だって、女嫌いでしょう!あっ・・・。分かったわ」
志麻子は声を上げると、ビシッと誠一を指さした。
「あなた、ロリコンね!」
「はぁぁ?」
なぜそうなる。
なぜ、俺がロリコンになる。
「そっか、そっか。幼女が好きなのよ」
「別に女児が嫌いかと聞かれれば、嫌いではないが。性的思考がどうのこうのという話であれば、否定する」
誠一は面白そうに今まだに頬を硬直させ、少し震えている志麻子を楽しそうに眺める。
「お前、どう見ても幼女には見えないが?胸もしっかりあるし、酒飲んだからか色気もあるぞ?」
「へぇっ」
真正面から、褒められ目をぱちくりさせると誠一は足を汲み腕を組む。
客観的に見てもドレスアップをして、化粧をしっかりしている志麻子は綺麗だった。
初めて会った時は目立たないように存在感を消してたので、大人しそうな娘だと思ったが。
貿易話をとんとん拍子で進める姿。
自分が塩対応をしても、お構いなしにその場を有意義に過ごす姿には惹かれてしまう。
「直ぐに好きになって欲しいとは言わない。徐々に好意を持てくれると嬉しい。成人するまで3年はある。気長に待つよ」
誠一はのんびりというと、ニコニコとしながら志麻子を眺める。
「な、なんですか」
「寝るなり仕事をするなり好きに過ごしていいぞ?家まで2時間くらいはかかる」
王族者は救急車や消防車同様に一般車両はよけてくれるが、そのくらいは時間が掛かる。
「あぁ。そうだ。俺に抱き着くなり、上に座るなりして時間を潰してくれても構わない」
「・・・へ?」
「屁?まぁ、車内で臭いのは断りたいが、志麻子ならいいか」
「お下品なものは人間として時にはしますが。今ここではしていないです!」
誠一は真っ赤になる志麻子に声を上げて笑った。
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