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振られる理由。
やくざの娘だから。
交際に至らない理由。
やくざの娘だから。

・・・はっ!ヤクザがどうした!やさぐれでやる!
数々の男が大学時代に近寄ってきては男が去りつづけ。やさぐれてから3年。

「今日の合コン相手は帝国大学の経済学部大学院卒業の5人なの!しかも全員、大企業勤務とか実業家とか玉の輿間違いなしのイケメン揃い!お願い!急な合コンキャンセルなのっね?友達を助けると思って参加して!彼氏もいないんでしょう」
「そう言われても、恋愛は・・・」
恋愛はもういいのっと言おうとするのだが、麗奈の押しは強い。
「大学卒業して3年。初彼作って青春しよっ!」

25歳の夏。
押し切られるようにして、白銀琴音は友人の牧野麗奈に誘われて合コンに参加をした。

「琴音ちゃん。そんなに可愛いのに彼氏、できたことがないんだ」
162㎝、45キロと細身長身で白い肌に大きな瞳。
世に言う綺麗、可愛いに分類される琴音は苦笑する。
「そうなのよ!大吾君」
口を挟むのは麗奈。
「琴音とは大学4年間、一緒に居るんだけどね。この容姿なのに一回も彼氏が出来てないの!勿体ないよね!不思議だよね。大吾君っ琴音と付き合って・・・」
琴音の前に座る麗奈は付き合ってみたらどう?と言おうとするのだが、それは最後まで言う事は出来なかった。
合コンの男性メンバー5人の中でも一際顔の整った美青年が琴音の隣に大吾を押しのけて琴音の隣に座る。
「理想が高いの?」
彼は心配そうに琴音に尋ねるのだが。
「全然っ!」
琴音は全力で首を振りながら否定すると、彼は机に頬杖をつく。
「俺は宋史。琴音ちゃんの理想を教えて」
「理想は・・・」
口籠る琴音に宋史はふんわりと笑う。
「理想は?」

「ないですよ。目があって鼻があって口があったらOKですっ!」

琴音はビールを一気飲みすると大声で答える。
もういっそのこと、”やくざ”の娘でもいいという男だったらなんでもいいと言わんばかりの琴音の勢いにその場の9人は理想低すぎっと笑う。
「目、鼻、口があるって世の中の人間全員に当てはまる。見込みはあるか」
合コンメンバーと同じようにクスクス笑いながらも、芯のある声で宋史は呟くがその呟きは誰にも聞こえなかった。
えへへっと、宋史に完全に狙われている物の中に気が付くことなく苦笑すると琴音は運ばれてきたビールをもう一杯、一気に華奢な体に流し込んだ。

本当に理想は一つ。
“実家を理解してくれる人”それだけだ。
琴音の実家は小さい白銀組という“やくざ”である。
やくざにしては、恐喝や詐欺などといった犯罪は絶対にしない地域密着型の親しみやすい江戸時代より前からある組であるのだが。
“やくざ”は“やくざ”
一般人からは恐れられ、組員たちは全員が琴音を大切にしており小さい時から付き合う男はこの家の敷居をまたぎ挨拶をしてからと言われていたので。
告白をされると家に連れて行き、今まで告白してきた男性全員が家の敷居をまたぐことなく琴音の元を去って行った。
勿論、報復なとしないのだが報復を恐れて全員が琴音の実家について口をつぐんだために誰も琴音の実家を知らない。白銀組は日本一、世界一平和で温厚で情と人情の不快組だ。

「恋愛をしたくない。彼氏が欲しくないわけではない?」
「恋愛はご縁がないだけで、したいですよ」
ほろ酔い気分で琴音は答えると、彼はそうなんだっと微笑む。
「したいのは恋愛だけ?」
「勿論っセックスも!」
麗奈の言葉に全力で答える琴音は完全に酔っ払っており、宋史は思いっきり噴き出すと咳き込んだ。
「ぶっっっ。ゴホゴホ」

***
日本を飛び越え、世界でも名をはせるやくざと言えば“帝国組”。
帝国組は日用品から石油などエネルギーに至る貿易や日本国内の不動産なども手広くしている外資系不動産企業でもある。
「おい。昨日、合コンに参加していたコイツを徹底的に調べてくれ」
帝国企業の社長室で秘書の田中に宋史は昼食を食べる前に一枚の携帯で話しかける前に隠し撮りをした撮った琴音の写真を見せる。
太陽のような笑顔の彼女と親しくなりたい。
表向きは大企業の社長であるが、裏はやくざ。
彼女が見たままの純粋無垢な胸ならば、接近できない。怯えて泣かせてしまう自信がある。
万引きとか、実はキャバクラで働いていたとかヤクザに対して免疫がありそうなエピソードが知りたかった。
なので宋史は尋ねたのだが。

「あぁ。この方でしたらうちの不動産部門の社員で極小の白銀組のお嬢ですよ。どうかしましたか?」

何っ。
同業者だと!
宋史は驚きが隠せない。
そして、どこかで出会った一目惚れの女性が合コンにいて彼氏募集中かつ会った場所が自分の会社というのは盲点で笑える。
「次の社長賞で表彰される社員の一人で、綺麗な子だなと思って個人的に気になって調べたら面白い事が次々に発覚して覚えています」
「おもしろいこと?」
宋史は豪華な社長室の机の腕に腕を組む。
田中の面白い事と言えば、誰かが不幸になったり。
悲しい目に合う事だ。
一目惚れの女が悲しい目に合うのは放っておけない。

「ええ。白銀組は今、斎藤組に浸食されていて数か月以外に吸収されるんですよ。まぁ、それも1つ条件付きでこのお嬢が斎藤組の若頭に嫁げば免除らしいですよ」

田中はけらけら笑いながら言うと、宋史の眉間には深い皺が入る。
まったくもって面白くない。
笑える要素が一つもない。
「家を潰すと脅して手に入れて何が楽しいんでしょうね。物理的に手に入れたって、好意的ではなく最悪、悪態をつかれるか畏縮されて対応されても僕は楽しくない。確かに琴音嬢は綺麗ですけど、この程度の容姿の女なら・・・。頭?」

「この程度の容姿の女ならなんだ?」
鋭い目つきで尋ねられ田中はその額に嫌な汗を滲ませる。
「なんでもありません!」
「そうか。なんでもないか。・・・斎藤組からも白銀組からも目を離すな」
「勿論です!」

頭は琴音が好きなんだ!
一瞬で田中は悟ると思いっきり頷いた。

どこかで見たことのある女だと思っていたが、会社で見たことがあったのか。
宋史は偶然会えないかと思いながら、社長室を出るとビルの1階に誘致しているコンビニに向かった。



―――困ったわ。
はぁ。
琴音はコンビニに入りながら深いため息をついた。
コンビニに入ると栄養ドリンクを手に取ると籠の中に入れていく。
それも1つや2つではない。
5個6個と大量に入れて行く。

「そんなに仕事がきついのか?」

宋史はこんなに早く再開できるなんてと目を見開き、籠の中に大量に栄養ドリンクを入れていく琴音に話しかけた。
「そ、宋史君」
驚く琴音に宋史はクスリと笑う。
「どうしてここにいるの?あ、同じ会社で働いていたんだ。気が付かなかった」
ビルに入るには社員証が必要でそれがなければ、社員を同行してしか歩けないのがこの会社のルールだった。
合コンメンバーは玉の輿確定と麗奈が言っていたけれど、社長と言う発想はなく、私と同じレベルの男性ならば玉の輿ではないわねと琴音はリラックスして話す。
「あぁ。ここで働いている」
正確にはこの会社を“経営”しているとのだが。
働いている事には間違いない。

「悩み事か?聞かせてくれるかな?力になりたい」
「えっと、ありがとうございます。・・・でも、仕事の悩みではないんです」
「それでも琴音ちゃんが悩んでいたら聞きたい」
宋史は穏やかにふわりと笑みを浮かべて優しく言うと良かったら教えてくれるか?力になれるかもしれない」
「うーん。・・・そうですね。きっと力にはなれないけれど、知恵をお借りしてもいいですか?」
「勿論だ」
「今、お昼休みですか?」
「あぁ」
社長は社員と違って、昼休みなんてないが頷くと宋史と琴音は会社近くのイタリアンに移動する。

「実家が小さな会社を経営していて。今、うちの会社の5,6倍ある会社くみから圧力おどしをかけられているんです」
「それは困ったな」
宋史は田中から聞いていた内容であるが、初めて知ったように少し驚きながら困ったように頷く。
「私は実家を継ぐ気がないから、その会社に吸収されてうちの会社が無くなることは別にいいんですけど。圧倒的な会社なので、吸収されたらうちの社員くみいんは全員、給料カットの上で降格。どんな待遇を受けるか分からないという状況なんです」
「そうか」
「社員の皆さん、私が小さい時から本当に良くしてくれていたので悲しい辛い目には合ってほしくないんですよね」
悲し気に言う琴音の頭を宋史は撫ぜる。
「琴音ちゃんは優しいな」

「守ってあげるには、向こうの社長かしらと誓約結婚を・・・」
「駄目だっ」

間髪入れずに言葉を遮り否定をする宋史の破棄に琴音は少し畏縮したように肩を縮める。
「すまない。自己犠牲をするのは良くないと思ってな」
「ふふふ。宋史さんは優しいですね」
琴音はそう言うと、店員によりパスタが運ばれて来た。

「暗い話はここまで!宋史さん、昨日の合コンは楽しめましたか?左に座っていた留美が宋史さんの事をカッコいいって言ってましたよ」
琴音は明るく言うと、宋史はパスタを食べながら琴音を見る。
「留美ちゃんか。どの子だろう?僕は琴音ちゃん狙いで琴音ちゃんにしか興味がなくて、琴音ちゃんしか見ていなかったから、覚えていないな」
「えっもう」

琴音は抜けている所は多々あるが、露骨に口説かれると照れてしまう。
「なんだ?会社で会っていたことを昨日はすっかり忘れていて、申し訳ない。どこかであった笑顔の素敵な子だと思って口説く気満々だったんだ」
「そ、宋史さん!」
宋史の顔は整っており。
周囲のお客さんは勿論の事、聞いていた店員も少し頬を緩ませたり。赤くなったりする。

「昨日は電話番号も聞けなかった。教えてもらってもいいかな」
「はい」
「俺の事、生理的に受け入れられないとかそう言う事はあるかい」

「ないです!・・・宋史さんはイケメンさんなので、宋史さんを受け入れられない女性なんていないと思いますよ」
「それは嬉しいな。本当は直ぐに恋人になって欲しいんだけど、琴音ちゃんには認識してもらったばかり」
宋史はそう言うと琴音の電話番号を自分の携帯電話と、その頭脳に刻み込む。
「じゃあ、近々、告白させてもらうから恋人候補としてよろしく。全力で惚れてもらえるように頑張るよ」

「頑張らないでください!イケメン抗体ウイルスを持っていません」

あわわわっとなりながら琴音は言うと、パスタを頬張った。

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