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卒業パーティまであと1日
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昨日の提案に頭を悩ませるミシェルの元に、さらなる珍客が訪れた。
といっても本来なら訪れてもなんらおかしくない人物なのだが、その実、自らの意思で公爵邸を訪れるのは実に数年ぶりという御仁なので、やはり珍客と呼んでいいだろう。
「なんというか、お前とこうして話し合うのは久しぶりだな」
第三王子アスランはゆったりと足を組んで、己の婚約者であるミシェル・ローレンに微笑みかけた。
「俺からも改めて礼を言う。アリシアのために骨を折ってくれてありがとう」
「別に彼女のためというわけではありませんし、大したことはしていませんわ」
「そういうな。いや正直に言うとな、まさかお前がこんな寛大な女だとは思わなかったよ。お前は色々アリシアに嫌がらせをしていたし、アリシアを陥れることばかり考えていると思っていたからな。いや、俺の誤解だったな。謝罪する。――それで昨日アリシアの方からも話があったと思うが、お前さえ望むなら、俺はこのままお前と婚約を継続することもやぶさかではない。俺の正式な結婚相手はあくまでお前で、アリシアは愛妾ということになる。アリシアは平民出身だし、色々と風当たりも強いだろうから、お前には社交界で彼女の後ろ盾になって、導いてやってほしいんだ」
向かい合ってアスランの話を聞きながら、ミシェルは改めて彼の造形美に感嘆していた。
波打つ金髪にエメラルドグリーンの瞳。
丁寧に作られた彫像の様に端正な顔立ち。
ここまで造作の整った人間を、ミシェルは他に見たことがない。
国王も王妃もそこまでの美貌ではないのに、双方の良いところを上手く受け継いだのだろう。
12歳のとき初めて顔を合わせた瞬間恋に落ちた。
微笑みかけられると嬉しかった。
冷たくされると哀しかった。
アリシアのことを知った時は嫉妬に狂った。
大好きな大好きな王子さま。
「――そういうことで、どうだろうな」
アスランが問うた。
「明日まで考えさせてください」
ミシェルは答えた。
といっても本来なら訪れてもなんらおかしくない人物なのだが、その実、自らの意思で公爵邸を訪れるのは実に数年ぶりという御仁なので、やはり珍客と呼んでいいだろう。
「なんというか、お前とこうして話し合うのは久しぶりだな」
第三王子アスランはゆったりと足を組んで、己の婚約者であるミシェル・ローレンに微笑みかけた。
「俺からも改めて礼を言う。アリシアのために骨を折ってくれてありがとう」
「別に彼女のためというわけではありませんし、大したことはしていませんわ」
「そういうな。いや正直に言うとな、まさかお前がこんな寛大な女だとは思わなかったよ。お前は色々アリシアに嫌がらせをしていたし、アリシアを陥れることばかり考えていると思っていたからな。いや、俺の誤解だったな。謝罪する。――それで昨日アリシアの方からも話があったと思うが、お前さえ望むなら、俺はこのままお前と婚約を継続することもやぶさかではない。俺の正式な結婚相手はあくまでお前で、アリシアは愛妾ということになる。アリシアは平民出身だし、色々と風当たりも強いだろうから、お前には社交界で彼女の後ろ盾になって、導いてやってほしいんだ」
向かい合ってアスランの話を聞きながら、ミシェルは改めて彼の造形美に感嘆していた。
波打つ金髪にエメラルドグリーンの瞳。
丁寧に作られた彫像の様に端正な顔立ち。
ここまで造作の整った人間を、ミシェルは他に見たことがない。
国王も王妃もそこまでの美貌ではないのに、双方の良いところを上手く受け継いだのだろう。
12歳のとき初めて顔を合わせた瞬間恋に落ちた。
微笑みかけられると嬉しかった。
冷たくされると哀しかった。
アリシアのことを知った時は嫉妬に狂った。
大好きな大好きな王子さま。
「――そういうことで、どうだろうな」
アスランが問うた。
「明日まで考えさせてください」
ミシェルは答えた。
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