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第7話ゴブリン襲来編①
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店内のカウンターで支払いを終えたマリアが笑顔で商品を受け取り、大切そうに両手で抱える。
「時間があるならマリアの装備もメンテナンスするよ」
「嬉しいんだけど、この後クエストを1つ受けていて。それにもう予算もないし」
ハルトの申し出をマリアが残念そうに断る。
「そうか、じゃ次の機会に」
「うん。ハルトのこと、それにあの庭のこととかもっと色々聞きたいし。企業秘密とか言わないでよね」
マリアがカウンターに手をつき顔を近づける。
「ははは。広くていい庭だろ。秘密なんて無いよ。俺は20歳、この前師匠のとこから独立して店を開いた新米防具職人さ」
ハルトがわざとらしく笑いながら早口で答える。
「庭のことは今度ゆっくり話してもらうとして、ハルトって20歳なの? 若いとは思ってたけど、その年で凄腕の職人だなんて私とは大違いだね」
「いやいや、師匠には全然及ばないよ。まだまだ修行中さ。マリアと同じ駆け出しさ。だから一緒に頑張ろうぜ!」
マリアは嬉しそうに頷くと、扉の方へ歩き始めた。
扉の前で立ち止まったマリアが急に振り返る。
「マリア・バンフォード、16歳。 初級冒険者ランクC、剣士やってます! 絶対、上級冒険者になりますっ」
マリアの宣誓が店内に大きく響いた。
「おう。未来の上級冒険者さま、また来いよ」
マリアはニッコリ微笑むと、金髪ロングヘアーのポニーテールをなびかせ店をあとにした。
ハルトはカウンターの椅子に腰かけたまま、マリアが出ていった店の扉をしばらく眺めていた。
「ふっ。オープン初日からいい仕事できたな」
「『ふっ』じゃねぇよ! なに浸ってんだ」
「イテテテッ。耳を引っ張るなノ―ム」
ハルトの顔の横で大地の精霊が声を荒げた。全長15センチほどの体に、愛らしい風貌の彼女は、ハルトの顔の前に飛んできて腰に両手を当てる。
「それから私の名前はノ―ムじゃない。ノ―ムは大地をつかさどる精霊の総称だ。ちゃんと名前で呼べ、名前で!」
「エルフ語だと発音難しいし、お前の名前やたら長いじゃん」
「なんだとぉ。庭に大規模結界まで張らせるわ、ゴーレムまで作らせるわ、パワハラと強制労働で訴えるぞこの野郎ぉ」
ノ―ムがハルトの頬をひっかく。
「俺の怒りは頂点に達した。お前を庭の肥料にしてやる!」
「はっ。私がノロマに掴まるわけないだろっ」
ハルトとノ―ムが店内でし烈な追いかけっこを繰り広げる。
「コラ! 2人とも遊んでる場合じゃないわよっ」
声と同時に、店内で一陣の風が巻き起こった。
「おわっ。シルフ、帰ったのか」
小さな体に風をまとった精霊、シルフが呆れた表情でため息をつく。容姿は美しい少女ながら、ノ―ムと比較すると大人びている。
「聞いてくれよ。このバカ、戦闘用ブラを魔石まで着けてただ同然の値で売りやがった」
悔しそうにノ―ムが訴える。
「それ、大剣の剣士? 金髪の女の子?」
「ああ、マリアだ。見てたのか?」
「店から出ていくのをね……魔石を着けたのは正解かもしれないわ」
シルフは腕を組み、少し思案して答えた。
「時間があるならマリアの装備もメンテナンスするよ」
「嬉しいんだけど、この後クエストを1つ受けていて。それにもう予算もないし」
ハルトの申し出をマリアが残念そうに断る。
「そうか、じゃ次の機会に」
「うん。ハルトのこと、それにあの庭のこととかもっと色々聞きたいし。企業秘密とか言わないでよね」
マリアがカウンターに手をつき顔を近づける。
「ははは。広くていい庭だろ。秘密なんて無いよ。俺は20歳、この前師匠のとこから独立して店を開いた新米防具職人さ」
ハルトがわざとらしく笑いながら早口で答える。
「庭のことは今度ゆっくり話してもらうとして、ハルトって20歳なの? 若いとは思ってたけど、その年で凄腕の職人だなんて私とは大違いだね」
「いやいや、師匠には全然及ばないよ。まだまだ修行中さ。マリアと同じ駆け出しさ。だから一緒に頑張ろうぜ!」
マリアは嬉しそうに頷くと、扉の方へ歩き始めた。
扉の前で立ち止まったマリアが急に振り返る。
「マリア・バンフォード、16歳。 初級冒険者ランクC、剣士やってます! 絶対、上級冒険者になりますっ」
マリアの宣誓が店内に大きく響いた。
「おう。未来の上級冒険者さま、また来いよ」
マリアはニッコリ微笑むと、金髪ロングヘアーのポニーテールをなびかせ店をあとにした。
ハルトはカウンターの椅子に腰かけたまま、マリアが出ていった店の扉をしばらく眺めていた。
「ふっ。オープン初日からいい仕事できたな」
「『ふっ』じゃねぇよ! なに浸ってんだ」
「イテテテッ。耳を引っ張るなノ―ム」
ハルトの顔の横で大地の精霊が声を荒げた。全長15センチほどの体に、愛らしい風貌の彼女は、ハルトの顔の前に飛んできて腰に両手を当てる。
「それから私の名前はノ―ムじゃない。ノ―ムは大地をつかさどる精霊の総称だ。ちゃんと名前で呼べ、名前で!」
「エルフ語だと発音難しいし、お前の名前やたら長いじゃん」
「なんだとぉ。庭に大規模結界まで張らせるわ、ゴーレムまで作らせるわ、パワハラと強制労働で訴えるぞこの野郎ぉ」
ノ―ムがハルトの頬をひっかく。
「俺の怒りは頂点に達した。お前を庭の肥料にしてやる!」
「はっ。私がノロマに掴まるわけないだろっ」
ハルトとノ―ムが店内でし烈な追いかけっこを繰り広げる。
「コラ! 2人とも遊んでる場合じゃないわよっ」
声と同時に、店内で一陣の風が巻き起こった。
「おわっ。シルフ、帰ったのか」
小さな体に風をまとった精霊、シルフが呆れた表情でため息をつく。容姿は美しい少女ながら、ノ―ムと比較すると大人びている。
「聞いてくれよ。このバカ、戦闘用ブラを魔石まで着けてただ同然の値で売りやがった」
悔しそうにノ―ムが訴える。
「それ、大剣の剣士? 金髪の女の子?」
「ああ、マリアだ。見てたのか?」
「店から出ていくのをね……魔石を着けたのは正解かもしれないわ」
シルフは腕を組み、少し思案して答えた。
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