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第6話 姉と彩寧の対決
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あれ以来姉は感情の起伏が激しくなり、時折僕に対して見せていたような、どこか夢見るような表情になったかと思えば泣きそうなほど落胆した表情になる。しきりとスマホを気にする。それも僕に隠れてやり取りをする。お金にうるさくなり、ひどい倹約家になったが、その余ったお金がどうなったのかがはっきりしない。そして突然英語の勉強を始めた。
その姉を案じ僕は学食で彩寧に相談をした。
「うーん…… ホスト?」
僕のおごりで、一番高いメニューを注文する彩寧。熱々の鉄板の上で美味そうな音を立てているチーズハンバーグを切りながらの彩寧の発言に、僕は椅子からずり落ちそうになった。
「いや、夜はいつもずっと一緒にいるからそれはないよ」
その言葉に少し顔を曇らせる彩寧。
「そっ、仲がよろしい姉弟なことで」
「あっいやすまん、別に変な意味じゃなくて――」
「あたりまえでしょ。変な意味って何よっ、姉弟なんだからっ」
珍しく彩寧が少しキレた。
「あとは……」
彩寧はため息を吐いて真剣な顔で僕に言った。
「警察案件かしらね」
「なんだって!」
姉が何か妙なことに巻き込まれたというのか! 僕は血の気が引いた。
「まあ事件って事。よくあるのよ」
浮かない顔で熱々のチーズハンバーグを切って口に放り込む彩寧。美味そうだ。
「よっ、よくあるって!?」
「お姉さんに説明するにしても、ゆーちゃん経由じゃ要領を得ないでしょうし、私の方から直接お話してもいいけど。どうする?」
「うっ…… おっ、お願いします……」
そうして二日後、僕が段取りを組んで大学そばのカフェで三人は話をすることになった。初夏の日差しが眩しい午前の事だった。
「お姉さん。今スマホでやり取りしている相手は詐欺師です」
彩寧は開口一番真顔で言った。
「へっ?」
姉は素っ頓狂な声をあげる。
「いきなり何かと思えば。しかも詐欺だなんてどこからそんな荒唐無稽な話が出てくるの? 確かに今ネットでお知り合いになった人はいるけど、全然そんなんじゃないし、むしろいい人だよ」
姉は強張った笑顔で抗弁する。
押し問答がしばらく続いたが、姉はそのお友達とのやり取りをした画面を頑なに見せようとはしなかった。警察に見てもらおうと言っても、頑として首を縦には振らない。
彩寧は次第にしびれを切らしていった。
「じゃあお姉さま、ここで検証してみましょう。この手の詐欺にはいくつかの決まったパターンがあります。私の方でそのパターンを言いますから、それがいくつ当てはまるか数えてみて下さい」
「そっ、そんなの当てはまるわけないじゃないっ!」
「多分ほとんど当てはまると思いますよ」
彩寧の目は座っていて、言葉は少し怖かった。
「ひとつ、SNSのダイレクトメッセージが送られてきて知り合った」
「そっ、それくらい誰だってするでしょ」
「ひとつ、文面が片言の英語」
「英語なんてこの広い世界誰だって使ってるじゃないっ」
「ひとつ、イケメン」
「うっ…… ま、まあ確かにそれは否定できないけど」
姉がイケメン好きなのは頷ける。特にK-POP系が好きなのは僕でも知っている。
「ひとつ、メッセージ上で愛を告白された」
「ぐっ…… そっ、そういう愛の形だってあってもいいでしょっ!」
ということはつまり、姉は騙されてネット上で氏素性も判らない詐欺師に対し恋に堕ちたという事なのか。彩寧の横で黙って話を聞いていた僕はショックを受け青ざめていた。何より姉が恋に堕ちたという事に僕は手ひどいショックを受けていた。呆然とする一方でその恋心を利用された姉が不憫に思えた。とにかく悔しくてならなかった。膝の上に置いた拳に力が入る。
その姉を案じ僕は学食で彩寧に相談をした。
「うーん…… ホスト?」
僕のおごりで、一番高いメニューを注文する彩寧。熱々の鉄板の上で美味そうな音を立てているチーズハンバーグを切りながらの彩寧の発言に、僕は椅子からずり落ちそうになった。
「いや、夜はいつもずっと一緒にいるからそれはないよ」
その言葉に少し顔を曇らせる彩寧。
「そっ、仲がよろしい姉弟なことで」
「あっいやすまん、別に変な意味じゃなくて――」
「あたりまえでしょ。変な意味って何よっ、姉弟なんだからっ」
珍しく彩寧が少しキレた。
「あとは……」
彩寧はため息を吐いて真剣な顔で僕に言った。
「警察案件かしらね」
「なんだって!」
姉が何か妙なことに巻き込まれたというのか! 僕は血の気が引いた。
「まあ事件って事。よくあるのよ」
浮かない顔で熱々のチーズハンバーグを切って口に放り込む彩寧。美味そうだ。
「よっ、よくあるって!?」
「お姉さんに説明するにしても、ゆーちゃん経由じゃ要領を得ないでしょうし、私の方から直接お話してもいいけど。どうする?」
「うっ…… おっ、お願いします……」
そうして二日後、僕が段取りを組んで大学そばのカフェで三人は話をすることになった。初夏の日差しが眩しい午前の事だった。
「お姉さん。今スマホでやり取りしている相手は詐欺師です」
彩寧は開口一番真顔で言った。
「へっ?」
姉は素っ頓狂な声をあげる。
「いきなり何かと思えば。しかも詐欺だなんてどこからそんな荒唐無稽な話が出てくるの? 確かに今ネットでお知り合いになった人はいるけど、全然そんなんじゃないし、むしろいい人だよ」
姉は強張った笑顔で抗弁する。
押し問答がしばらく続いたが、姉はそのお友達とのやり取りをした画面を頑なに見せようとはしなかった。警察に見てもらおうと言っても、頑として首を縦には振らない。
彩寧は次第にしびれを切らしていった。
「じゃあお姉さま、ここで検証してみましょう。この手の詐欺にはいくつかの決まったパターンがあります。私の方でそのパターンを言いますから、それがいくつ当てはまるか数えてみて下さい」
「そっ、そんなの当てはまるわけないじゃないっ!」
「多分ほとんど当てはまると思いますよ」
彩寧の目は座っていて、言葉は少し怖かった。
「ひとつ、SNSのダイレクトメッセージが送られてきて知り合った」
「そっ、それくらい誰だってするでしょ」
「ひとつ、文面が片言の英語」
「英語なんてこの広い世界誰だって使ってるじゃないっ」
「ひとつ、イケメン」
「うっ…… ま、まあ確かにそれは否定できないけど」
姉がイケメン好きなのは頷ける。特にK-POP系が好きなのは僕でも知っている。
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