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嵯峨野 樹悠

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「伊織ちゃん。おはよ。早いね(笑)まだ約束の時間には早いよ?」

『おはよ。啓威ちゃんも早いじゃん(笑)伊織はね。いつも少し早く来るようにしてるんだ。待たせたりするのやだから』

「そっか。どこ行くか決めた?」

『あのね。水族館行きたい。』

「水族館か。おっけ。行こっか」

綺麗な魚を見るたび、伊織はキラキラした目をしていた。
それを俺は見て、やっぱりこっちの方がいいなって思った。

俺の視線に気がついたのか
『ん?』

「どした?」

『水族館つまんなかった?』

「いや?久々で色んな発見があるよ(笑)」

『良かった。今度はあっち行こ?』
そう言って、手を引っ張った。

館内は、それほど人も多くなくてゆっくり見れた。
平日だったからかな(苦笑)

「伊織ちゃん。イルカ好き?」

『うん』

「もう少ししたら、ショーが始まるんだって。」
さっき、ポスターが貼ってあったのを見て、好きだったら行ってみようって思ってた。
ちょうどよい時間になったようだ。

『ほんと?見たいっ。』

「(笑)じゃぁ、行こっか」


ショーは、観客も参加出来るものだった。
平日だし人も少なかったからか、参加する人が出てこなかった。
伊織ちゃんを見ると、行きたそうにしていた(苦笑)

「伊織ちゃん。行っておいでよ。」

『いいの?』

「行きたくて、うずうずしてるのが分かる(笑)」
すると、勢い良く手を挙げた。

「行ってらっしゃい(笑)」
そう言って、送り出した。
伊織ちゃんといると、楽しいし飽きないね。

『すっごい、可愛いかった~』

「(苦笑)キスされたね」

『突然されて、びっくりしたけど』

「(笑)まだ時間あるね~お土産買いに行こっか。」

『やっくんとたー君に買っていこう』
お土産屋さんに行くと、熱心に選んでいた。
俺も、こっそり買った。

『啓威ちゃん。連れてきてくれてありがと。』

「楽しかったね。」

『うん。伊織ね。啓威ちゃんにお話したいことがあるんだ。』

「えっ?」
伊織ちゃんを見ると、今まで笑顔だったのに目が真剣だった。

「分かった。話出来る静かな所行こっか。」

★★

「ここか」
紘は、伊織がアルバイトしている所へやって来た。
賑わってるわけではないのに、すごく雰囲気のいいカフェだった。

「自分の居場所を見つけたのかな。」
そんなことを思いながら、入った。

「いらっしゃいませ。空いてる席どうぞ」
若いけど、オーナーらしい人が迎えてくれた。

「初顔だね」

「たまたま通りかかって。雰囲気よさそうだったんで入ってみたんですよ」

「そうなんだ。ここはコーヒー美味いしね」

「そんなことないって言ったら、お客様には失礼ですけど(苦笑)細々とやらせてもらってます。気に入ってもらえるといいんですが」
そう言って、紘が注文したコーヒーを出した。

「ほぉ。美味いって思えるコーヒーに出会えた気がする」

「ありがとうございます」
お世辞抜きにうまかった。

「それと、今日はお休みだけど、可愛い娘もいるんだよ(笑)」

「俺の・・・」
匠彌が言いかけたのに

「俺の癒やしのウェイトレスさん」
常連のお客さんに先に言われてしまった(笑)

「そうなんですか。一度会ってみたいですね」

「この辺で働いてる方ですか?」

「普段は海外にいるんで、滅多に日本には帰って来ないんです。今回は少し長い滞在期間で、この辺を散策してたら、ここを見つけまして(笑)」

「そうなんですか~すごいっすね。海外で働いてるって」

「言葉が違うだけで、仕事することは日本と変わらないですよ」
彼が、匠彌君かな?
伊織から、一応どんな人がいるかは毎日のLINEをもらってたから、話をしてなんとなく分かった。

匠彌の方を見て、
「さっき、言いかけてたみたいですけど、あなたは今日いない娘の彼氏さん?」
違うと、分かっていながら聞いてみた。

「だといいんですけど(苦笑)違います。」

「伊織ちゃん。天然だもんね~振り回されてるよね(笑)」

「ちょっ・・・そんなこと言わなくてもorz」

「(笑)折角ここに来れたのに、居ないのは残念。滞在期間にもう一度来れたらその娘がいるといいね。」

「良かったら、何度でも来てください」

「ありがとう。ごちそうさま。美味しかったです。」
そう言って、紘はカフェを出た。
ほんと雰囲気もいいし、また来たくなるところだな。
伊織も良くしてもらってるみたい。
未成年だからなぁ、そう簡単に雇ってくれるとこなんてないけど、あいつは学生でもないからな(苦笑)
まぁ、安心した。
いつかは、バレるだろう俺のことも、伊織のことも、その時どうなるかは予測出来ないけれど、伊織にとっての居場所になればいいなと思う紘だった。
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